以前に触れたオーストラリアの森林火災ですが、更に拡大しており長引く恐れがあるとのことです。
最悪の事態を招いているようです。
南東部の一部の地域で雨が降っていますが、依然として広い範囲で火の勢いは収まっていません。現地では3月にかけて気温が高く乾燥した状態が予想され、火災がさらに長引くおそれがあることから、警戒が続いています。
各地でも火災が相次いでいて、去年7月からこれまでに日本の面積の半分近くにあたる17万平方キロメートル以上の森林や農地が消失するなど、広範囲にわたって被害が確認されています。
また、これまでに28人が死亡し、住宅2900棟以上が全焼していて、現地の保険協会によりますと損害額は日本円で1000億円にのぼると推定されています。
被害が深刻なニューサウスウェールズ州では、海岸沿いの一部の地域で先月17日から雨が降っていますが、ビクトリア州や南オーストラリア州では新たな火災が発生するなど、依然として広い範囲で火の勢いは収まっていません。
こうした事態を受けて、日本の自衛隊が国際緊急援助隊として現地入りしているほか、アメリカの消防隊が消火活動に加わるなど各国による支援が本格化しています。
森林火災による被害は、前回触れたコアラや他にもカンガルーなどのオーストラリア固有の野生動物にも及んでいます。
シドニー大学の研究者によると、哺乳類5億以上のほか鳥類やは虫類も含めて推定で10億以上もの動物が犠牲になっているとみられ、生態系への深刻な影響が懸念されています。また、ひどい火傷を負ったり、生息地を失ったりした動物の保護も課題になっています。
絶滅のおそれがあるオグロイワワラビーの餌となる植物が焼失して不足しているおそれがあるとして、州政府がヘリコプターでニンジンやサツマイモを空から投下する作戦に乗り出しています。
また、動物保護団体が獣医師を乗せた車両で火災があった地域に行き、怪我をした動物に応急手当てをしたうえで、治療施設などに搬送する活動を始めています。保護された動物の多くは足などに火傷を負っているほか、脱水症状を起こしたり煙を吸って弱ったりしているということです。
動物保護団体では「火災があった地域は何も残っておらず、動物が苦しんでいて本当に悲しい状況です」とコメントしています。
この他、火災で母親を失ったカンガルーやワラビーといった有袋類の赤ちゃんのために、母親のお腹の袋を模した布袋を作るボランティア活動なども行われていて、固有の動物を守ろうという取り組みが市民の間でも広がっているとのことです。
オーストラリアでは森林火災は珍しくなく、とりわけ、今回深刻な被害が出ている南東部のニューサウスウェールズ州では10月から翌年の3月にかけて広い範囲で乾燥しやすく、森林火災が発生する危険性が高まります。
これほどまでに火災が拡大している最大の理由は異常気象にあるとされていますが、この説には賛同できないとされる方も多いですよね。
オーストラリアの気象当局が今月9日に公表した報告書によりますと、去年は観測史上最も暑くて乾燥した1年になったことは確かです。去年1年間の平均気温は平年より1.5度高い23.3度と過去最高を記録したうえ、平均降水量は277.6ミリと平年よりも40%も下回って過去最少となりました。
森林火災が激しさを増した去年12月は、オーストラリアの広い範囲が熱波に見舞われ、各観測地点の1日の最高気温の平均が2日連続で更新されて41.9度に達する記録的暑さとなりました。
報告書ではこうした気候の主な要因として、インド洋の東西で海水温が大きく異なる「ダイポールモード現象」をあげています。赤道沿いで西風が弱まるとインド洋の西側に向かって温かい海水が流れる一方、オーストラリアに近い東側では海水温が下がりインド洋の東と西で温度差が生じます。海水温が下がるとそこに下降気流が起き、乾燥した空気がオーストラリアに流れ込みます。雨雲が発生しにくいことで降水量が少なくなるうえ、気温も通常より高くなります。
報告書ではこの「ダイポールモード現象」に気候変動が影響を与えていると指摘していて、地球の温暖化が進むにつれてダイポールモード現象の発生も増えるとみられるとしています。これは知らない事象でした、勉強は続けなければなりませんね。
あと気になっていることなのですが...
森林火災による被害の拡大に歯止めがかからない中、市民の間ではモリソン首相や政府に対する不満や批判の声が上がっているようです。
中でも、モリソン首相をめぐっては深刻な被害が出ているにもかかわらず、ハワイで休暇を過ごしていたことが明るみになった他、石炭産業を擁護するなど気候変動対策に消極的な姿勢だとして、批判が集中しています。
今月、森林火災の被災地を視察した際には、被災者から政府の支援は不十分だと激しい罵声を浴びせられたり、握手を拒否されたりする場面もありました。
また、シドニーでは今週学生団体の呼びかけで市民数百人が集まり、政府の対応に抗議する集会も開かれました。集会に参加した消防士の男性は「これまでにない森林火災で恐ろしいです。政府や企業に対して、化石燃料を燃やすのをやめるよう強く要求します」と話していました。また、27歳の女性は「オーストラリアは、石炭による温室効果ガスの排出削減など気候変動対策を十分に行っていないので、首相は対策を強化すべきだ」と話していました。
市民の間で高まる批判を反映して、最新の世論調査ではモリソン首相の政治手腕について「満足」と答えた人は、前の月よりも8ポイント下がって37%となった一方「不満」と回答した人は11ポイント上がって59%に達しています。
モリソン政権は、復興を支援する新たな政府機関の設置や動物保護の支援など火災への対応策を相次いで打ち出しているものの、事態が収拾する見通しは立っていない様子です。
上に立つ者の行動としては致命的だと思いますがね。求心力というものが離れてしまうでしょう、この行動では...
災害が専門で森林火災にも詳しいシドニー大学のデイル・ドメニー・ハウズ教授は「現在直面している全国的な森林火災の危機は前例がない。非常に大規模で広範囲かつ長期にわたる火災が発生している」として、オーストラリア史上最悪の森林火災が起きているとの見解を示しています。
そのうえで「気候変動と森林火災が広がる条件の間には、明らかなつながりがある。地球規模の気候変動の問題に根本的に対処しないと、森林火災のリスクに対応できなくなるだろう」と指摘し、気候変動対策に取り組まなければ、今後も同じ規模の森林火災に見舞われる危険性があると警鐘を鳴らしています。
一方で、国土が広いオーストラリアでは、消防隊員の多くを地元の住民たちがボランティアで担っていますが、森林火災の拡大に歯止めがかからない中、現在の体制では対応できなくなっているとも指摘しています。
教授は「これまでの森林火災は規模も小さく容易に対応できた。今回は同時多発的に火災が起きていて、ボランティアの消防隊が各地を移動して助け合うことが難しくなっている。これまでの消防の仕組みが機能しなくなっており、見直す必要がある」として、ボランティアに依存してきた消防体制を見直し、より専門的な技能を備え、森林火災に常に対応できるプロの消防士を育成する必要があると訴えています。
一市民である自分には現状、祈ることと寄付することしかできませんが、自分にできることとして、ここに記しておきます。既に幾つかの寄付サイトは立ち上がっていますが、WWFに関わる者として、ご理解とご協力していただけたら幸いです。
Posted at 2020/02/12 07:24:23 | |
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