自動運転中における事故は
誰がどう責任を負うのでしょう?
交通事故で3人を死傷させたとして自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)の罪で起訴され「乗っていた車の運転支援システムが故障していたのが原因だ」と無罪を訴え続けていた運転者に対して、3月31日に横浜地裁は禁錮3年執行猶予5年(求刑禁錮3年)の判決を言い渡しました。
裁判長は「運転支援システムが搭載されていても、前方を注視して運転すべきだった」と指摘しました。
事故は2018年4月29日、神奈川県綾瀬市の東名高速上り線で発生しました。
渋滞中に自動車2台が衝突し、減速した後続車に追突して転倒したオートバイの男性を救助しようと複数のオートバイが停車したところへ、自動運転中の車が突っ込んでしまったとの状況です
この事故で、救助に当たっていた男性が死亡した他、2人が大怪我をしました。
検察側によると、車間距離などを計測して一定の間隔を保ちながら走行できる運転支援システムを搭載して機能させていました。しかし、前方に転倒したバイク等があったものの車は加速し、事故が起きたとのことです。
弁護側は『事故はシステムの故障が原因』として無罪を主張していました。
判決は「(被告の車が前方の車両を検知せず加速した理由は)システムの故障か機能の限界かは判然としない」と判断を下しませんでした。
一方で、事故直前に運転者が前方注視が困難なほど強い眠気に襲われていたと認定しました。運転中に眠気を覚えた場合は運転中止義務があるとし「中止義務に違反した被告の過失は相応に重い」と指摘したのです。
自分は、この事故の直前に起きた米国での同車種による同じ様な状況で起きた事故を思い出しました。今年の2月末、事故原因に関する調査レポートが発表されて、その内容に目を通したばかりだったからです。
米国での事故は東名の事故の一か月前、2018年3月にカリフォルニア州マウンテンビューで起きたものです。自動運転中にドライバーがスマホゲーム(!)をしていて事故に遭い、死亡したという状況でした。
ドライバーはアップル社のエンジニアだったはずです。自動運転機能を作動させた乗車(もう運転ではないですね、これは... )中に、スマートフォンを操作しながら高速道路を走行し、州道への出口に繫がる分岐点のコンクリート分離帯に時速70マイル強(約114km/h)で衝突、他の車2台も巻き込んだ大事故となりました。ドライバーは病院に搬送されましたが後に死亡し、遺族はメーカーに対して事故責任に関する訴訟を起こしています。
調査レポートによると『高速道路の走行レーンと出口ランプの間の舗装エリア(分岐点)に向けて、車が自ら左にハンドルを切った』ことが事故の原因であると発表しています。センサーなどが道路をきちんと認識できなかったかどうかは不明ですが、自動運転中に『勝手に』進行方向を変えようとしたようです。
一方メーカーは、自動運転に関して「あくまでドライバーの運転支援に使用されることを目的とした機能であり、ドライバーは(不測の事態などでは)常に運転に介入する準備をしている必要がある」と主張しました。つまり、自動運転作動中も、ドライバーは常に周囲の安全を確認し、いつでも自分が運転を代われるように準備していなければならないというのです。
自分が以前から気になっているのは『運転者は常に運転に介入する準備をしている必要がある』という表現です。
何か危険を察知したとして、それまで自動運転に頼っていた状況で、適切な回避行動をとれますか、ということですね。
前方だけではなく周囲の状況や、車の操作等も含めて適切に判断する反応時間や応答時間が必要となるのではないでしょうか。
自動運転機能のついた車は高価であり、比較的高齢の方の購入が多いのではないでしょうか。あと、近年はレンタカーやカーシェアの問題が重なります。リアクションに時間がかかりそうな方々ではあります。
時速100kmで走ると、0.1秒で約2.8m進むのですよ。自分自身、慣れた自分の車でも状況判断や運転操作に自信があるとは言えません。皆さんは「できる!」と自信をもって言えますか?
自分は、
業界団体の基準で表にある自動運転の『レベル3』に大きな壁があると思っています。緊急時に運転者って、車の緊急時って一瞬ですよ。一般の人間が対応できるわけがないと考えています
人が運転していて、いざという場面で機械に頼るならば有りかもしれませんが、その逆は今のままでは無理なのではないでしょうか。それこそ、全ての状況においてコントロール出来る線路のような道路であるとか、全ての車両にセンサーがあるとか...
空港の駐機場であるとか、大規模なイベント会場、農作地等は自動運転に適した環境だと思います。実際に行われていますよね。全車両を管理できますし、地面に印や発信機を設置して車両のセンサーとGPSでキャッチすれば、安全に運行できると思います。
事故のケースのような加速・減速やハンドル操作を担うシステムは『レベル2』に当たります。紹介した事故の車種もそうでした。
先月4月には改正道路交通法が施行されて、一定の条件下でシステムが運転する『レベル3』の公道での走行が認められましたね。居眠りや飲酒は許されませんが、走行中にスマートフォンを操作したり、カーナビでテレビを見たりできるようになったそうです。実用化は目前といわれています。
当たり前ですが『レベル3』の自動運転中に事故が起きた場合も、一般的な事故と同様に警察が捜査してドライバーの過失等を調べることになります。国の保安基準では自動運転中の様子を事後に検証しやすいように、走行時のデータを記録したり、ドライバーが居眠りなどをしていないかを監視したりする機能の搭載を義務付けているそうです。
でもその事後って、どういうことなのでしょう? 検知したのなら、そこで強制的に制動をかけるなどが本当の自動運転なんじゃないのかな?って思うわけです。末恐ろしいことが待っているような不安しかありません。
Lv.3をクリアできたとして、Lv.4はもうシステムが運転するわけですから、運転席に誰も座らないという方向に向かっているのは確かです。その場合の責任は⁇
「事故を起こしても自分の責任ではなく、システムのせいだからメーカーに責任がある」とはならないでしょう。メーカーとしてはリスクが高過ぎるのではないでしょうか。そういえば、国もメーカーも2〜3年前のように自動運転を大々的に報じていないように思えるのですが...
こういった事故があっても『全体の事故率を減らせるのなら良い』という考えもあります。本当なのでしょうか? COVID-19のスウェーデンみたいな対応にならないのでしょうか? こちらはまだ分かりませんがね。
東名高速道路の事故、一審で有罪とされた運転手(乗員か?)は控訴するでしょうか。
亡くなった男性の遺族(妻と娘)が、メーカーを相手取って訴訟を起こしたとも報道されました。
現実に法が対処できない状況にあるようです。
【凄いものだとは思います。これで時速100km/hオーバーはちょっと信じられません。YouTubeでは他にも自動運転の状態を投稿している方は多くいて「数年内に自動運転は当たり前になる」と言い切っている方もいますね。
最初は半信半疑で運転席で身構えていても、次第に慣れてしまって気が緩むような気もします 】
最後に...
お亡くなりになった方々のご冥福をお祈りいたします。
Posted at 2020/05/28 08:14:59 | |
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