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木手のブログ一覧

2015年12月21日 イイね!

対抗4POTキャリパのピストンの外し方

対抗4POTキャリパのピストンの外し方オーバーホール・換装に向けて整備を進めている456GT後期型標準のブレンボのブレーキキャリパですが、対抗4ポットのキャリパからピストンを外す方法について工場長さんから説明を受け、その方法が非常に勉強になったので別枠で記事にすることにしました。

456GT後期型標準ブレンボ / ブレーキキャリパ分解



とても合理的な手順でひょっとして企業秘密なのではと思いましたが、聞いてみると「キャリパのピストンを分解する場合はどの整備工場もこれと似た方法で分解しているはずですよ」とのことで、特に門外不出の秘密というわけでもなさそうです。念のため、工場長さんの許可を得ています。

キーパーツはタイトル画像の道具(治具)です。バイス(万力)のようにアーム内に挟みつけるようにして固定する機能のほか、逆にアーム部分が外に広がりアーム両脇にあるものを押さえつけることもできます。4POTキャリパの場合はこの治具を2つ使用します。


例として、画像の下側・左側のピストンを取り外すことを考えます。

(1) まず1つ目の治具を上側のピストン両方に当てるようにして固定します。





(2) 2つ目の治具を,、下側・右側のピストンを押さえつけるようにキャリパの外側から挟むように固定します。1つ目の治具は写真には映っていませんが、上側のピストンは2つとも固定された状態です。





(3) これで、下側・左側のピストンのみ動く状態になりました。ここに、油圧がくるライン(矢印部)から圧縮空気を入れれば、ピストンが勢いよく出てきます。注意点として、この写真の状態だと発射されたピストンが治具に激突して破損する可能性があります。





(4) 取り出すピストンの手前に厚手の布切れ・ウェスを入れておくことで、ピストンを一切傷つけずに取り出すことが可能です。他のピストンもこの4つの手順をアレンジし順次取り外します。





(補足) 片側キャリパであれば下の写真のような専用のブレーキ整備用の道具を使用できますが、対抗4POT以上のキャリパだと上記(1)~(4)のような工夫が必要になるとのことでした。





ブレーキキャリパのポットのピストンを取り外す上で絶対にやってはいけないこと、それはマイナスドライバなどで一方向からこじるようにピストンを取り外そうとすることです。



上下は共に説明用のイメージ画像ですが、取り外す前はこのように無事なピストンでも、



一方向から無理にこじって外そうとすると、このようにピストンの一部分が破損してしまう可能性があります。工場長さんの話では、このようなブレーキポッドのピストンの一部の欠損は、脱着時に無理にこじってピストンを外そうとした結果、欠けた可能性が高いという説明を受けました。

確かにこれはブレーキパッドをピストンの”面”で押すという機能を考えれば容易に導ける理屈であり、ピストン上面の一部分に応力が集中してヘタってしまうことは確かにありえないと思います(もし局所的にヘタるならあっという間に対抗ポットのピストン破損によりブレーキが使い物にならなくなる)。


自動車の整備の中でもブレーキキャリパのオーバーホールはあまり機会のないレアな整備と思われますが、整備士の工夫・技術が露骨に結果に現れる好例だと思いました。
Posted at 2015/12/21 00:23:12 | コメント(0) | 自動車技術 | クルマ
2015年12月02日 イイね!

「二律背反」を乗り越えてこそ・・

「二律背反」を乗り越えてこそ・・アフターファイブでドイツ人のエンジニアの方と食事をする機会があったので、このブログでも取り上げた渦中のVW不正問題について色々本音を探ってみました。

あくまでそのドイツ人エンジニアの個人的な見解という前置きはありますが、結構フランクな意見を聞くことができましたのでメモも兼ねて残すことにしました。


(1) 懸案のディフィートデバイスのような機能の搭載は、程度の大小はあれどの自動車メーカもやっていること。VWはそのような仕様の車をあまりにも売りすぎたからバレた。

⇒ これは以前の記事に書いた(1)と重なる部分がありますが、マツダを含めコンプライアンス遵守をうたう日本企業はそんなことはないと個人的に信じています。特にマツダは未だ北米市場でSKYACTIV-Dエンジン搭載の自動車を販売開始していないことがその証左とも言えます。

(2) 欧州では、エミッション性能を確認する適切な方法は試験台での一連のテスト手順と定義付けている。北米の排ガス規制の理念である「試験台だけでなく、ユーザが日常で使用する条件においてもエミッション性能に適合せよ」というのは、まず「日常での使用」がどのような条件なのかを明確に定義付けすべき。

⇒ これはいかにもドイツのエンジニアらしい発想だなと思います。発言の趣旨そのものは、同じく前の記事の(2)と重なります。確かにEPAの理念・概念は理解できますが、「日常での使用」条件を明確に定義付けした上で、それを試験台でのテストにて再現するのは非常に難しいことが予想されます。

(3) エミッション規制とエンジンの各性能は二律背反(トレードオフ)の関係にある。北米の規制は厳しすぎて、規制を厳密に守ると性能が低下しユーザに不利益がある、もしくは商品性の低い製品しか出せない。

⇒ いや、それを言ったら技術者として敗北だろ、と思わず心の中でつぶやいてしまいましたが、ドイツ人としてVWを擁護する発言なんだろうなと受け止めました。いまから5~6年ほど前、心無いアメリカ人の謀略で難しい立場に立っていたトヨタを自分が擁護していたとしたら、このエンジニアが感じているのと似たような気持ちだったのかもしれません。これも以前の記事の(7)と重なります。

⇒ 下の関連記事のかつてのロードスター開発主査の貴島孝雄氏の言葉を思い出し、「相反するトレードオフをバランスを取ってうまく両立させるのがエンジニアのミッションであり、あなたならそれがきっとできますよ(You can do it ! )」とそのエンジニアをさりげなく持ち上げておきました。もちろん、言うのは簡単な非常に甘い理想論であり、現実はそんなに簡単ではなく往々にして問題山積なことは重々承知しています。


同席してた日本人にそのエンジニアが「今回のVW不正問題をどう思っているか?」と聞いてきたので、自分は「驚いたし、とてもがっかりしている(I was surprised and feel very disappointed)」と言い、同席してた別の方が「恥じるべきことだ(It's shameful)」と言ったあと、そのドイツ人が苦虫を噛み潰したような何とも言えない複雑な表情を浮かべていたのが印象的でした。

VW不正問題が明るみになって間もなく、そのエンジニアの方が在籍するドイツ国内の会社でそのスキャンダルを議題にした一大ディスカッションが行われたそうです。世界有数の技術立国の内部に大きな一石を投じたのは間違いなく、引き続き動向を注視して行きたいと思います。
Posted at 2015/12/02 00:26:21 | コメント(0) | 自動車技術 | クルマ
2015年09月29日 イイね!

エシックス・テスト:もし判断に迷ったら

エシックス・テスト:もし判断に迷ったらフォルクスワーゲンの不正問題の捜査が進むにつれ企業倫理の問題の側面が強くなってきたと感じる折、本棚にあった1冊の本が目に留まり、改めてもう一度読み返してみました。

名古屋大学出版会の「誇り高い技術者になろう-工学倫理ノススメ」です。写真のものは第1版ですが、2012年に第2版が販売されています。

この本の中で、世界的な半導体メーカであるテキサスインスツルメンツが、社員へ行動規範・倫理綱領を啓蒙・普及させるのに使用しているTIエシックスカードの中身が紹介されています。

テキサスインスツルメンツの社員は全員、社員バッジと共に常にこのカードの携行を義務づけられています。カードの中身はサイトでも簡単に見ることができます

多分、ちゃんとした会社であれば類似の倫理規定があるはずです。


もし判断に迷ったら

「それ」は法律に触れないだろうか。
「それ」は TI (テキサスインスツルメンツ)の価値基準にあっているだろうか。
「それ」をすると良くないと感じないだろうか。
「それ」が新聞に載ったらどう映るだろうか。
「それ」が正しくないと分かっているのにやっていないだろうか。

不明な点がありましたら、納得のゆくまで上司またはエシックス・コンタクトに確かめてください。


ちなみに、本家の英語版はThe TI Ethics Quick Testとしてサイトに掲載されています。同じ内容ですがこちらのほうがシンプルな問いかけです。


The TI Ethics Quick Test;

Is the action legal ?

Does it comply with our values ?

If you do it, will you feel bad ?

How will it look in the newspaper ?

If you know it's wrong, don't do it !

If you're not sure, ask.

Keep asking until you get an answer.


これを読んで恐ろしいなと思ったのが、フォルクスワーゲンほどの一流企業であれば当然このような倫理指針が存在し従業員は遵守を求められるはずですが、今回の不正において一連の不祥事を防止する抑止力にならず、機能しなかったように見える点です。

トヨタに追い付け追い越せの一心で、CSRやコンプライアンスが吹き飛んでしまうほどの禁断の果実を味わってしまったのかもしれません。引き続き動向を注視していきたいと思います。

関連記事:
VW「違法のおそれ 4年前に社内で指摘」
独メディア“部品メーカー(BOSCH)が2007年に警告”
VW前会長への捜査開始 独検察当局
VW不正 2005年~06年に決定か
Posted at 2015/09/29 00:20:29 | コメント(0) | 自動車技術 | クルマ
2015年09月26日 イイね!

VW不正問題 技術的メモ書き

VW不正問題 技術的メモ書き今回のフォルクスワーゲンの不正問題について、自社内の有識者の方に意見を聞くことができましたので、メモも兼ねて残すことにしました。

(1) 排ガス規制試験以外の走行シーンで、走行機能確保のためシーンに応じた適正な燃調マッピング等に設定するのは自動車業界では常識。今回の報道を見るとフォルクスワーゲンが当局と戦わずに速やかに不正を認めたように見えるのでかなり意外。

⇒ 関連記事 「焦点:独VWの不正告白、当局と繰り広げた長期攻防の舞台裏」

(2) 日本、欧州ではモード試験以外でのエミッションの挙動に対して特に関与しない。試験にパスすればOKという考え方。北米はそうではなく、試験外でも環境性能の遵守を求めている。違反が発覚した場合は今回のように厳しい制裁を科される。これも常識

⇒ 関連記事1 「日本ではVWディーゼル車は“無罪”? ~複雑化する技術と規制が生んだ産業史上最大のスキャンダル~」

⇒ 関連記事2 「欧州では「ごまかす」必要すらない、排ガス検査のための小細工は合法」

(3) 北米では当局自身が様々なコンディションのユーザの車を実際に調査する「サーベイランス」を行うので、不正は遅かれ早かれ絶対にバレる。これまた常識。(今回はNPOの委託でウエストバージニア大学が行った調査が発端)

⇒ 関連記事 フォルクスワーゲン不正 発覚のきっかけ

(4) フォルクスワーゲン以外にも、実車調査すると怪しい挙動を示すメーカは存在する。メーカ公称値の燃費、エミッション性能とのかい離が激しい。ただし燃費については行き過ぎるとユーザにバレる。

⇒ 関連記事 独BMW、ディーゼルNOx基準値超の報道に「不正な操作はない」と発表

⇒ 記事内の、私たちは各国の法的要件を遵守し、それぞれのマーケットで必要とされる全ての試験基準を満たしている、という声明と(1)は、日本、欧州の地域では(2)に照らして矛盾しないことがわかります。

(5) 急加速時はクリーンディーゼルでも黒煙を吐く。これに限らず、エンジン保護が目的であれば規制値から(一時的に)外れても、北米でも規定で例外として認められている。

(6) ガソリンエンジンは三元触媒&フィードバック制御で環境性能を比較的容易にクリアできる。一方ディーゼルのエミッション制御はフィードバックが原理的に難しく、フィードフォワードなのでロバスト設計が難しいのかもしれない(外乱が出力に直接現れてしまうため)。

(7) 燃費・環境性能を遵守するほどドライバにとって違和感を感じる気持ち悪い制御を行うことになる。スプリット式のハイブリッド車はその典型だが、日本市場はそれを「良し」としているため人気が出ている。伝統的に乗り味や走行性能、ドライビングプレジャーを市場から求められる欧州メーカは極力そのような制御を避けたい意向があると思われる。

⇒ 関連記事 2015年上半期の車名別販売ランキング、乗用車は「アクア」、軽自動車は「N-BOX」がトップ

(8) 制御切り替えのトリガとして、もしかしたら温度があるかもしれない。北米試験FTP-75の試験時の雰囲気温度は中央値の華氏77℃でスタートするため。

(9) 結論として、(1)~(3)の事柄から、フォルクスワーゲンが意図的に不正を行っていたのかは現時点では判断が難しく、今後の経緯を見守るしかない。
Posted at 2015/09/26 11:06:14 | コメント(2) | 自動車技術 | 日記
2015年04月15日 イイね!

未来はすぐそこに・その1

未来はすぐそこに・その1運転手と対話する車と言えば、古くはナイトライダーのキット、90年代~00年代だとサイバーフォーミュラのサイバーシステムを思い浮かべますが(歳がバレるな・・)、このような対話システムが車に搭載されるのも遠い未来ではないかもしれません。

自動車技術2015年3月号に掲載されている、NTTドコモ 内田渉氏寄稿の「対話型車両エージェントの開発」という記事を読みました。iPhoneのSiriやドコモのしゃべってコンシェルなどの対話プログラムを車搭載に最適化したシステム開発を行っている技術者の方のようです。

上記スマホ搭載の対話システムと異なる部分として、

・ドライバーの煩わしさ軽減のため、常に対話システムがONの状態であること
・必要に応じてシステム側から話しかける「システム主導対話」になっていること

が車載にあたり最適化した点とのこと。このほかにも車両内通信のCANから拾った情報をネタに会話することもできるそうです。「アクセルワークがラフですね」とか「ブレーキが遅すぎます」とか「君は、退化したようだな」などと、運転にケチを付ける車がすぐそこまで来ていると感じました。

もっともこの車載システムも突っ込みどころ満載で、最大の問題点がユーザの音声情報の認識、対話、発生する音声合成の各処理のほぼすべてを外部サーバに丸投げしている点。それだけ音声認識・解析が負荷の高い処理だとは思いますが、スタンドアロンでは成立しないシステムとは困ったものです。電波の届かないエリアでは「天の声が聞こえないので寝ます」などと神妙な言い訳をする車がすぐそこまで来ているとも感じました。

しかしながら、これまた実用化がもう数年後に迫っている自動運転車にこういった対話システムは個人的にはぜひ欲しいと思っています。自動運転の電車等と比べると車は非常にパーソナルな存在であり、無言で運転というのは非常に不気味だからです。黙って走る棺桶よりはウザくても喋る棺桶であってほしいです。

最後に、内田氏のようにSFで描かれていた世界を現実にする仕事に携われるのは夢があっていいなと記事を読んで思いました。自分もがんばろう。
Posted at 2015/04/15 23:19:36 | コメント(0) | トラックバック(0) | 自動車技術 | クルマ

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