日頃多くの写真を撮り,発表しているが,作品については極力解説をしないように心掛けてきた.
それは
①写真は作品それ自体が語るもので,著者解説が必要なのは未だ作品に力がないから.
②写真はそれを見る人によって意味付けられるべきで,作者の解説はその邪魔になる.
という考えによる
この事は今もその通りだと感じているが,一方で言わなければ判って貰えない部分があることも事実.
今回は2016年シカゴの街撮りを題材に,写真を撮る時に私が考えている事の一部を書き綴ってみたい.
まあ,偶には良いのでは?
1.街路樹の影
光有るところ必ず影有り.
特に逆光の場合に出来る影は自分が好きな写題.
この写真では,雨から一夜明けてしっとりと濡れたアスファルトの質感を出したいと思った.
遠景に人影を入れたが,少し小さ過ぎて判りにくい.
ファインダーに写るものを全てコントロールできないのがストリートフォトの難しさ.
2.バス停付近
先ず目に付いたのは,様々な貼り紙で汚されたポールと標識.
この猥雑さは或る種の「都会っぽさ」を感じさせる.
ところが撮ってみると何とも収まりが悪い.
5枚ほど撮って気付いた原因は,垂直・水平の狂いだった.
対側の舗道が坂になっているため,二つのポールが異なった傾きを示す.
建物のエッジもパースにより平行にはならない.
現場での対応を諦め,折から歩いてきた小柄な女性を配置し撮影終了.
後処理で収まりの良い角度を見つけ漸く完成.
3.赤いソール
最近のマイブーム・「歩きながら撮影」の一枚.
氷結時の滑り止め用線条が入ったコンクリート舗装を歩く女性.
赤いソールがワンポイントとなっているが,これは全くの偶然.
やっぱり白黒よりカラー情報を保持した写真が好きだなぁ.
この写真でもう一つ特徴的なのは,何とも儚い光と影.
これは向かって右手のビル窓からの反射光によるもの.
よく見ればハローのようなリングも写っている.
4.白い自転車と花
ダウンタウンの舗道に唐突に置かれた自転車.
白くペイントされ,花が飾り付けられている.
どうも追悼目的で置かれているらしい.交通事故?
アングルファインダーによる低視点広角写真を敢えてトリムせず街角感を強調.
歩行者のアウト・オブ・デイトなミラーサングラスがアクセント.
5.NUTCRACKER
望遠レンズによる圧縮効果は謂わば定番の表現法だが,
この場合はバナーや看板に比して視点が低すぎて苦労した.
仕方なく腕を上に伸ばして撮影.
踏み台が欲しかった.
6.ストーンフロア
撮影中駆け込んだショッピングモールのトイレ.
そのアプローチを戻る時の一枚.
磨き上げられた大理石の床とそれに映り込むネオン・店内照明.
大理石のパターンも面白い.
7.ストーンミラー
街中の撮影では良い被写体に出会っても,撮影が間に合わないことが屡々ある.
そのうちのいくつかは今でも夢に見るほど.
今回のこの一枚は間に合った希有な例.
この瞬間の少し前から漠然とした予感があり,咄嗟に大理石への映り込みを撮る事ができた.
やったー!
(脚フェチ?実はそうかも)
8.ガラスの街
都市には多くのガラスが使われている.
それに映り込む風景は,虚実が入り交じった世界.
何処までが虚で何処からが実かが判りにくい場合,一部に実部分を写し込んでおくと理解しやすくなる(今回は左手部分).
ただ,ぜーんぶ虚にしてトリップ感を出すのも有り.
9.アフタヌーン・ウオーク
私の主題の一つ,「影もの」の一枚.
ポイントはもちろん標識から長く伸びる影.
そしてモノトーンの中に浮かび上がる標識の赤.
男性の大股の歩みもアメリカっぽい.
歩道橋上の高所に視点を置く事で,影の長さを強調出来た.
10.ウオーター・タワー
シカゴの名所.1871年のシカゴ大火で焼け残った唯一の公共建築物.
実は2012年にも同じコンセプトで撮ったが,
ブレ・ボケ・傾きで使えなかった.
今回,アングルファインダーとレリースを持ち込み,4年越しのリベンジ.
お行儀の良い写真が撮れた.
でも,写真としてどちらが良いかは考え方次第かな.
11.タクシー待ち
この時期のシカゴで一番伝えたいもの
それはキラキラと輝く街の雰囲気.
逆光のヘッドライトに浮かび上がる美しい女性とクリスマスイルミネーションで
伝えられたかな?
12.バス停
バスを待つ人,ノースミシガンアヴェニューの夕方のラッシュ.
普通の街の情景だが,
この写真で本当に撮りたかったものは舗道の色.
街路灯からの黄金色のグラディエーションに広告パネルの青が少し混じる.
なんの変哲もない舗道の色だけを撮る,
そんな写真も有って良いだろう.
13.信号待ち
街を特徴付けるもの,それは「移動」ではないだろうか.
街では常に人々が移動している.
それを捉える事が出来れば,その街の雰囲気を伝えられるのではないか?
そんな想いで撮り続けているのが一連の「脚シリーズ」
舗道の店側に立ち,信号待ちの人々の脚を撮る.
カラフルな紙袋,大股で通り過ぎる歩行者の残像.
舗道を踏みしめた革靴だけがくっきりと像を結ぶ.
街撮りの醍醐味を感じる瞬間.
14.インターコンチネンタルのツリー
1DX MarkIIに換えてから画質の向上を実感している.
見慣れたインターコンチのツリーでも燦めきが増した.
床の反射も従来より鮮やか.
改めてツールの重要性を再確認.
以上,つれづれなるまま,主観に満ち満ちた写真録でした.
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Posted at
2016/12/08 21:19:24