
私には、ふるい記憶がある。
子供のころ、うちにあった古いカメラの記憶だ。
あれはどこにいったのだろう。
これには多少の説明がいる。
うちは私が物心ついたころから引越しが多く、
そのたび自然にモノが散逸するので、
むかしの物がいまもあるとは限らないのだ。
車で20分のところにすむ父をたずねたときに、きいてみた。
「あのカメラはいまはもうないのだろうか」
すると、父はつとめて無表情で、
「うしろ」
と言って、私の背後を顎でしゃくった。
マッハのスピードでふりかえると、仏壇のとなりのサイドボードのガラス越しにおさないころの記憶のなかのカメラがそこにしっかり鎮座していた。
『
Canon FT QL』(1966年)

※実家の風景ではありません。
(撮影協力・(株)モデナ)
このときの私の驚愕と興奮は、じっさいに同じ目に遭った者しかわからないだろう。
屋根裏部屋で宝の地図をみつけたような、そんなドラマティックな出来事が自分の身の上に降りかかったことに、なによりおどろいた。
ついでながらおどろいたのが、父がキャノン派だったことだ。
うちにあったカメラはニコンにちがいないと、なぜか勝手に思い込んでいたからである。
「なぜ、ニコンではないのか」
なかばなじるようにきくと、父は、
(´・ω・`)「ニコンは高くて買えんかった」
むろん、現在は両社に価格差は存在しない。
当時ならではの逸話である。
当時父は兵庫・尼崎に住み、勤め先もそこだった。
職場の先輩ががんを患い、闘病を経て奇跡的に快癒し、リハビリがてら京都へ寺社などの撮影旅行に行くのに父が付き添った。
手ぶらではつまらぬと思い、給料はたいて買ったのがこのカメラである。
「本当はF1.2というレンズがほしかった」
コーヒーを沸かしながら父は往時を述懐する。
これには私は苦笑せざるをえない。
父子そろって、時代をこえて同じことを言っているからである。
なるほど、血はあらそえない。
ボディのほか、レンズが3本。
50mmf1.8。
右が、28mmf3.5。
左が、200mmf4.5。
すべて単焦点レンズである。
ひょっとして、当時は望遠ズームがなかったのか。
残念なことに、このカメラとレンズ、保存状態が最悪を通り越して酷烈でして、このような昭和めかしいカメラケースのなかで半世紀眠っていたものだから、すごいカビと青サビがでている。

ケース内もカビだらけで、カビはなんとかしたけれども、
おどろくべきは、カメラは今もなお動くのである。
巻き上げレバーをおこし、シャッターをきれば、
「パシャン」
と、軽快な音をたててミラー動作するのだ。
これにはあざやかな感動をおぼえずにはいられない。
国産カメラのみごとさよ。
半世紀の眠りから叩き起こされても、このメカトロニクスは基本的な動作を忠実におこなうことをちゃんと忘れていないのだ。
これぞメイドインジャパンであろう。
(かんじんの写真は?)
撮れるのか?当然の疑問である。
さっそくフィルムを調達し、いやはや売ってるもんなんですねえ。
ウラ蓋をあけるとさすがにフィルムケース内は新品同様、きれいなものである。
フィルムを装てんする。

じつは、今回うまれてはじめてフィルムを装てんした。正直、ネットの知識に頼らざるをえなかった。いや、ホント、「どうやってフィルム入れるんだっけ?」と悩んだ。
昭和の人間なのに、いやはやお恥ずかしい。
もっかい、こちらの写真で、
グンカン部分をアップ。
シャッター・ダイヤルしか回すものがない、このシンプルさに身もだえする。
さて、ここからはいよいよ上のカメラで撮った写真をごらんいただきたい。爆笑必至です。もうね、「昭和かッ!」っていうくらい、いかにもふるめかしいフィルムフォトが撮れました。ええ、撮れたらなんでもいいんです。大いに笑ってやってください。
一年にわたって撮りためたものを(たいして撮ってないですが)、順に。
まずは、去年2016年の10月から。
おお、写ってるw

(撮影地・四季の郷公園)
レンズは、焦点距離の使い勝手から、今回はぜんぶ50mmf1.8で。
ところがこのレンズ、
絞りが壊れている!
すべての写真がf1.8固定になってしまい、
コスモスがこのように
カリッカリにw
なんですか、この全体に漂う昭和くささ。
タイムスリップ・カメラですか。
シャッター速度を1/1000秒にすると、
なんとシャッター幕が閉じきれずにうつりこんでしまう。

よって、1/500秒で撮ります。
【秋】
秋の根来寺。
紅葉を撮る。
【春】2017年
梅。
桜。
桜といえば、やはり根来寺の大門。
満開の桜をバックに。

なんか、古っ!
ああっ、おれのアルファロメオが!
まるで「昭和のクルマ」に!
奈良・宇陀の
「又兵衛桜」にいったとき。

平成に撮った写真にみえん。
わりといい感じ?
昭和40年代でも通用するな。
石垣なんぞ入れるとなおのこと。
そうそう、ちなみにフィルムの感度はASA400。
(適当に買ったので)
ISOじゃないんだな、ISOじゃ。
ああ、現代なのになにか懐かしい。

今回はこんな感じです。
こんどはレンズをかえて撮りますね。
いつかまた。
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【おまけ】
実家に寄ったついでに、父が飼ってる犬を撮ってきました。
※ここからは現代のカメラ、デジタル一眼レフです。
(撮影日:2017年8月15日)
「
ナナ (メス 6歳半)」
父の知り合いの自動車修理工場で捨てられていたのを父が引き取った。
父は私とおなじで犬はもともと大の苦手であったが、それでも飼ってるうちにまんざらでもないようで、オモチャ(咬むヤツ?)を買ったり予防接種などやったりして、
「かかるわー。人間(この場合の人間とは父自身をさすらしい)よりもお金かかるわー」
と言うが、ほんとうにまんざらでもない様子なのである。
犬を飼いだして父がなによりおどろいたのは、犬が「いびき」をかいて「寝言」をいうことだった。
それだけだとたいしたおどろきではないが、それが母(父の倅の私Ricoからみて、の意)のいびきと寝言にソックリだったから、父はびっくりして夜中にとび起きて犬の顔をまじまじとのぞきこんだという。
「お母さんの生まれ変わりかもしれん」
なかば本気とも冗談ともつかぬ顔で言うものだから、私も、
(あるいはそうかもしれん)
と、思うようになっている。
ところで、みなさん。
何の雑種だかわかります?
柴犬となにかなんですが、
てっきりシェパードかと思ったらちがうんですね。
犬好きなひとならわかるのだろうか?
こたえは、ビーグル犬だそうです。
ビーグル犬っていったら、スヌーピーですよね。
耳が垂れてないけど、そうなの?

というわけで、めずらしくラストを犬の写真で飾ったりして。
まことにめずらしい。
ありがとうございました。
またお会いしましょう。
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Posted at
2017/10/26 21:04:35