
三重県・名張市にある
赤目四十八滝
(あかめ しじゅうはちたき)
を再訪しました。
和歌山市を朝5時に出立。
奈良・吉野で夜明けをむかえる。
吉野川のほとり。
川面を水鳥の群れがゆく。
車を降り、しずかにシャッターをきる。
7時45分。予定よりはやく到着。
夏・お盆からかぞえてちょうど3ヶ月ぶりの赤目。
秋の訪れを、首をながくして待ちわびていた。

ここ赤目が、名だたる紅葉の名所だからである。
8時すぎに入り口にゆくと、左手にみえるチケット販売窓口がまだ閉まっている。
入れないじゃないか。

写真を撮ってると、ちょうど窓口のおばちゃんが小走りで出勤してくる。
「早(は)よ、あけて~」
「ゴメンナサイ、ちょっとまってー」
正面にみえるサンショウウオセンターは開いておらず、右側の通路をぬけて滝川に入ってゆく。
入ってまもなく、最初の赤目五瀑があらわれる。
【1】『
不 動 滝 』

赤くなーい。
なんで?
紅葉見ごろときいて、すっ飛んできたのに。
ここはまだ入り口だから?
紅葉らしい紅葉は、この奥にある?
8時30分キッカリに「不動滝」を離れる。
なぜなら、入場時間がそのようにさだめられてるからだ。
ではなぜ不動滝からかというと、サンショウウオセンターが入り口なでのはなく、不動滝までが入り口のあつかいなのだ。
まったくの謎ルールである。
マラソンで5キロ先がスタート地点といってるようなものだ。
腕時計で時間を見計らう。
誰が見てるわけでもない。
改札があるわけでもない。
ただ決められたルールに従うだけ。
ただし、謎はなぞのまま残る。
あれこれ考えているうちに、2番目の滝につく。
【2】『
千 手 滝 』
いつみても美しい滝である。

きれいなんだけど、おりょりょ。
ここも赤くなーい。
つらつら考えたんですけど、モミジで真っ赤っかというのは、お寺や公園などは人工的に植えられたからであって、
このように自然の渓流では、天然にモミジが密生してるわけがないので、つまり紅葉は局所的である、と。
つまりはそういうことなのかな。

おまけに、山中では日光が遮られるために、モミジが赤くならずに黄色に変色しやすいときいている。
「思ってた紅葉とちがう」と感じた理由は、そこらあたりか。
※あるいは数日後くらいに紅葉MAXだったかも。
とにかくも、写真をやりだすとこんな感じで最近妙なことに気づきはじめる。いままでは、紅葉のなんたるかなんて、考えもしなかったから。
布引滝までたどりつく。
ここまでの道のりはわりとたやすいのだ。
【3】『
布 引 滝 』
気温2℃。
寒さで手がかじかんでいたい。
痛いから、ついついカメラの「手ぶれ補正」をONにし忘れて、三脚からはずすととたんにこんなブレブレの写真を撮る。

ここを上がって、滝の上部に出る。
カメラの操作性を優先してうすい手袋を用意したが、これはまちがいで、やっぱ操作性を犠牲にしてでも厚手のにすりゃよかった。
布引滝を上からみると、こんな感じ。
もはや滝というよりも、ウオータースライダーである。
おびただしい濡れ落葉が岩場にまとわりついて、えもいわれぬ情景を生みだした。
どんどん先へ進もう!
まだ道のりはながい。
途中、こんな険しい道もある。
トレッキングというより、
気分はアドベンチャーである。

ちびっこたちはよろこびそう。
私は身の危険しか感じませんでしたが。
ある場所をとおりすぎて、ふと何かに気づく。
「ここ、夏にきたときコケたとこだ」
ふりかえって写真におさめる。
ありありと思い出した。。
そうここは前回見事に転倒して、大事なカメラを傷モノにした痛恨の場所だ。

あとで考えると、コケるもなにも靴がくたびれてて古かった。裏底がズルズルで、そりゃすべるわな、と思った。
たいへん反省し、今回のためにシューズを新調した。

これで濡れた岩場もスベらない。
そうそう、新調といえば、カメラリュックも買ったんすよ。
「 f.64 BACKPACK 」

とうとうリュックです。
①スリングからリュックへ。
これは大きいですね。スリングは右肩が擦って痛いし、それで車の運転でシートベルトなんかしたら、もう。
はじめは提げたまま空中でカメラを出し入れできるのが魅力でスリングだったんですが、いまはもうレンズ交換も地面においてやるのでリュックでいいです。
②おねだんお手頃価格。
8千円でした。非常に買いやすいお値段です。
③容量10リッター。
シグマの中望遠をボディにつけたまましまえるのがうれしいですね。

一気室タイプのシンプルな構造も気に入りました。
さて、先を急ぎます。
『
やがて、陽のあたる場所へ』

※PLフィルター使用。やはり持っておいて正解ですねー。
赤目でいちばん紅葉だったところ。

これがピークですわ。
急流で落ち葉を拾う。
だいぶ日が上がってきた。
なんだろう。夏場きたときよりゴールがとおく感じる。
こんなにあるいているのに目的地にたどりつかない。
ようやく今回最大の目玉、4番目の荷担滝(にないたき)に到着する。
が、このときすで10時をまわっている。
陽があがってなんと真逆光に。なんてこった。
【4】『
荷 担 滝 』

フィルター越しでもまぶして。
こんなんじゃなかったのに。
思い描いてのは。
どうりでみな自分を追い越して先へ先へ行くと思った。
時間勝負なんだ。
こればかりはしかたがない。
落胆のまま200メートル先のゴールをめざす。
『雛壇滝』
小粒ながらも魅力的な滝がつづき、目を楽しませてくれる。
『琴滝』
やっとゴールです。
【5】『
琵 琶 滝 』

ずいぶん時間がかかってしまった。
夏より遅いペースだ。
いや、夏場のあれは早すぎたんだ。これくらいでちょうどいい。
さて、ここから引き返します。
写真にはうつってませんが、この日は一眼レフのカメラに三脚のひとがたいへん多かった。シーズンですからね。
こういうとき、人が撮ってるとうしろから見るクセが自分にはある。
私はまだ初心者、というよりへたなので人から学ぶべきことは多い。
人が撮ってるということは、そこはきっといいところにちがいない。構図は盗むものです。
帰りをあるいていると、滝の淵でせまい遊歩道から三脚立てて撮ってるオッチャンがいる。
通りすがりに習慣のようにふりむいて、顔をもどしてまた二度見した。
「そこ、いいですね!」
「!?」
いきなり話しかけられてオッチャンもびっくりしたもよう。
「ちょっとうしろで撮らせてもらいますよ」
おもむろにリュックをおろし、三脚をひらいた。
私にはこういう変にものおじしないところがある。
オッチャンは静かな声で、
「人が通るから気をつけて」
「了解ッス」
これを機にモニターをのぞかせてもらうと、おどろくべきことにオッチャンは紅葉を入れて滝をとっていない。
滝のみの切り取りなのだ。
(ここを切り取るのか!)
軽い衝撃をうける。やはり他人の行動には注意と敬意を払うべき。
いよいよシグマのおでましだ。重いレンズをリュックにかついだまま、いつ出番がくるのか内心ヒヤヒヤしてた。
なるほど、これは勉強になるなあと内心ニヤリとする。
『秋の赤目四十八滝』

SIGMA APO 70-200 F
2.8 EX DG OS HSM
こういう場合はやはり、明るいレンズが役に立つ。
ほんのわずか先を進むと、自分がいま荷担滝まで戻ってきたことに気づく。
なんだ。
いま撮ってたのは、荷担滝だったのか。
行きと帰りじゃ風景がちがってみえるから、自分がどのあたりまでもどったのか錯覚をおこしやすい。
びっくりしたことに、荷担滝の前ではカメラと三脚が行列をつくっていた。
行きには見なかった光景だ。
なにごとかと思って見上げると、太陽の位置がうまい具合に上方の紅葉を照らし、朝には存在しなかった玄妙な光景を造りあげていた。
『
荷 担 滝(リベンジ)』
ふー、よかった。撮れた。
荷担滝と紅葉が撮りたかったんだ。
それにしても紅葉って、いや写真全般にいえることだけど、光の加減ひとつでこうも印象がかわるもんだね。むずかしいもんだね。
さいごに、年齢がいっしょということで前回妙にシンパシーを感じてしまったアイツに挨拶して帰ろう。
「よう、兄弟」

兄弟じゃないわな。同級生?いやちがう。
こうして、秋の赤目をあとにします。
このときすでに時刻はお昼の1時ちかく。
腹がへってしょうがない。
お昼はこれも夏と同じお店に再訪します。
「中国料理 敦煌」

おなじ店とはまことに芸のない話ですが、どうしてももういっかい来たかったんです。
まずは『酢豚』から。

酢豚といえば、くだらない話ですがウチの母は昔酢豚を鶏のから揚げでつくってました。その息子は長じて大人になったときエラい恥をかくことになります。
(羊羹がヒツジでないのと同様に、酢豚と言い条、ニッポン全国どこでも鶏肉なんだろうと子供ながらに思い込んでました)
つづいてたのんだのが、
『小龍包(ショーロンポー)』

小龍包というと、コレを思い出さずにはいられない。
「美味しんぼ」第12巻より

またおまえは美味しんぼネタか、と言われそうですが、どうも印象が強烈すぎて、ぜひとも申し上げずにはおれません。
餃子のあんとちがって、小龍包の中身はアツアツのスープなのが本物の小龍包だ、というお話。
このお店のはどうやら漫画とおなじ。
アツアツのスープでしたよ。

じっさい、うまかった。
これで580円だったら、酒の肴なんかにもいいかもと、もうすこしでビール頼むところだった。あぶなかった。
これだけじゃまだ終わりませんよ。
『坦々麺』

スープをひとくち飲んだだけで咳き込んだ。
むせる。
この辛さがたまらないのだ。
これが食べたくて、夏にきたときは暑いからやめにして、秋にきたら絶対たべようと、じつに3ヶ月ごしの坦々麺である。うまい。ごまの風味が香る。
帰路につく。
奈良・吉野川の南岸。
下市(しもいち)の湧き水のそばの喫茶店。
コーヒーとともにバームクーヘンのとなりにあるのは、柿。

なんで柿なんだろうとぼんやりかんがえて、そうかここは奈良だったなとややあって思い出す。
車でドライブしてると、こういう時差ボケにも似た感覚の誤差を時折あじわう。

常連さんがはけたあと店のおばちゃんはヒマだったらしく、最近の旅行の話をしだす。どちらが接客業かわかりゃしない。おばちゃんは友達とこのまえ一泊二日の弾丸で広島・宮島の厳島神社だけをおまいりし、本当にそれだけで帰ってきたという。なかなかキレのある話である。
お勘定のさいに、厨房にいるおばちゃんに、先刻からコーヒーをのみながら気になっていたことをきいた。
「さっきから天ぷらを揚げるにおいがするんやケド」
するとおばちゃん、悪びれもせずに、
「晩御飯つくってたんよ」
そんなんアリかよ、と思いつつ、私の鋭敏な嗅覚は意外なポテンシャルを秘めていた。
「もしかして、れんこんの天ぷら?」
「そう。れんこん」
「オウ、イェー」
無駄な才能である。
* * * * * *
今回の紅葉はこんなとこですかな。

みなさまの紅葉だより、楽しみに読ませていただいてます。
ではまたお会いしましょう。
ありがとうございました。