今回は
『小説の舞台になった宿にとまる 』
というテーマで、
丹後半島を旅します。

地図にすると、こんな感じです。

和歌山から丹後半島は妙に遠く感じる。
だからなかなか行かなかった。
今回よくやく行けた。
せっかくですから、【舞鶴】にも寄りましょう。

『舞鶴 赤れんがパーク』

舞鶴も前から来たかった場所。

「艦これ」とかやってたら、もっと早く来てたんでしょうけどねー。

艦これやってないんですよ。
やってそうにみえるでしょう?
やってないんですよ。(笑
みんカラでもみなさま訪れてますからね。
私もこういう写真を撮りたかった。

「旅を主題に」写真を撮るなら、
こういう写真も撮りたくなる。

今回なぜか自撮り多し。
いや、だってこういう便利な台があったので、つい。

写真をはじめてはや丸4年。
創意やら工夫やら、いろいろしょーもないことを思いついては実行してみる今日この頃。
そういや、艦これといえばポスター一枚貼ってなかったんだけど。
ブームはもう過ぎ去ったの?
かわりといってはなんだが、今はコレらしい。

階段の踊り場にあった。
赤レンガ倉庫を離れ、遠巻きに護衛艦を見物します。
広島・呉みたいに間近では見られないんですね。
駐車場から先は海自管理区域なので、きびしく立ち入りを禁止されてて。

ヘリ搭載型護衛艦「ひゅうが」の姿がみえませんね。
仕事中のようです。
こういうのなんて言うんだろう?
就役中?運用中?実戦配備中?

そこからテクテク歩いて10分。
「海自カレー」を食べにお店に。
『レストラン 海望亭 』

店内のようす。
お店の名誉のために申しておきますが、他にもお客さんいるんですよ。

席からのながめ。
遠くに輸送艦らしき艦艇がみえる。
それと新日本海フェリーの乗り場。

われながら、つまらぬ写真だなと思ったら、あとでわかったことですが、すぐ目の前が
あの「岸壁の母」の場所だそうで、びっくり!
そうだったのか。ここか・・・。

さて、お目当ての海自カレーがきましたよ!
『掃海艇「のとじま」の
茄子と合挽肉のキーマカレー』

いままで食べたことのないカレーの味がした。
五老スカイタワーから。
天然の良港、舞鶴。

こうしてみても、リアスってますなー。
* * * * *
【丹後由良・鉄道風景写真】

関西圏でも有名なこの場所へやってきたんですが、
待てど暮らせど電車がこないので、

宿のチェックイン時刻もせまっているので、明日にします。
だってしょうがないじゃない。
来ないんだもの。
* * * * *
そこから車で1時間半。(道まちがえた)
京都府京丹後市。
『木津温泉 ゑびす屋』

小説では、「鄙びている」とあったがそうでもない。
なかなかしゃれている。

そう、この宿は松本清張が実際に二ヶ月逗留し、書き上げた小説、

『Dの複合』にじっさいに登場する宿なのです!

清張作品をわたしが熱心に読んでたのが、10代後半から20代前半。

ン十年たって、好きな作品にでてくる宿が実在することを知る。
まさか実在するなんて!
そりゃ、ファンとしては泊まりにきますよ!

チェックインもそこそこに、館内を探検です。
この宿は、新館と旧館に分かれていて、旧館の名前が「大正館」。
昭和9年の創業ながら、大正ロマンを色濃く残す宿だそうで、この扉のむこうは、

いきなりアールヌーボー調で、すごくおもしろい。

さて、お目当てのアレはどこだろうな。

「なんだここは!?」

(洗面所・・・?)

この宿は新館・旧館に分かれてるせいか、建物の造りがすこぶるカオス。
まさに迷路。
いまおれはどこにいるんだ状態で、おもわずニヤニヤがとまらん。

このうしろに、
あ、あった!ここだ。
『清張の書斎 』

松本清張が滞在期間中、実際にここで執筆した。
これ見たさに、はるばる和歌山からきたんだ。
背後の本棚に、
アレッ!こんなところに光文社カッパノベルス版があるやん!
(※私が持参したのは、新潮文庫)

このカッパノベルス版を父が持っていて、私がこの作品を読んだのもこのカッパノベルス。
この旅のまえに、父に「アレどこいったん?」ときいたら、「処分したから、もうない」と言われガックシ。いまあったら、レアだろうにな。なにせ、昭和40年代だから。
『Dの複合』(昭和40年)

さて、思い出深いカッパノベルスがここにあったことだし、この小説がどんな話か、ちょっと手短にお話しさせていただきます。
* * * * *
主人公は、伊瀬忠隆という売れない作家です。
…むかし私が抱いたイメージでは、「サザエさん」の「伊佐坂先生」みたいな作家先生をイメージしてたのですが、いま読み返してみると、アレですね。もっと若いというか、50代、いやひょっとしたら40代後半かもしれません。
その先生のところに、ある日雑誌編集者の浜中という若い男が訪ねてきます。
創刊したばかりの雑誌に、ぜひ先生の紀行文を載せたいとのこと。
そう、原稿の執筆依頼です。
お茶を持ってきた先生の奥さんが、しきりに先生に目くばせしています。
今月苦しいから、はやくOKしてと言ってるいるのです。
だけどそれだと、ダンディズムにかかわるので先生はわざと渋ってるふりをしますが、結局はOKします。ほかに仕事がないからです。
こうして、先生と浜中の取材旅行がはじまります。
ふたりがまず旅をしたのは、丹後半島。
「浦島伝説」
「羽衣伝説」
を追って。
(↓宿から車で15分にある網野神社。浦島伝説を由緒にもつ延喜式の古社。作中、伊瀬と浜中が立ち寄る。この一枚の写真のために私も参拝した)
先生は、せっかくきたんだし、
「有名な城崎温泉に泊まりたい」
というと、浜中は、
「ダメです。城崎温泉は俗化してるからダメです」
と却下されます。
鄙びた温泉宿のほうが雰囲気あっていいからといわれ、それでこの木津温泉にやってくるんです。
ディーゼルカーにゆられ駅に降り立つふたり。
(↑じっさいに宿の駐車場から、京丹後鉄道宮舞線・夕日ヶ浦木津温泉駅がみえます。右端に駅のホームがちょこっと見えてます)
タクシーに乗ろうとすると、宿は目の前だと知り、テクテク歩いて。
(↑二人が入った旧館の玄関。清張自身もここから入った。玄関の上が書斎という建物の構造的な位置関係に写真を撮ってみて気づく)
宿に泊まったその夜、裏の山でなにやら警察やら地元の青年団やらが松明もって山狩りしている光景が。どうやら殺人事件でもあったらしい。(小説の話ですよ)
(↑方向的には作中とたぶん合ってるはず)
浜中は、先生、紀行文にこの殺人事件の話を挿入してくださいよと言われる。
先生は紀行文に現実の事件いれたら変じゃないかと言いつつ、しぶしぶ承諾する。
その後、二人は明石から淡路島を抜け、紀淡海峡をへて和歌山・加太を旅する。
浦島・羽衣伝説を追って、京都や三保の松原、千葉の館山なんかにも行く。
…そんなある日、先生の自宅にファンだと名乗る和服美人が訪ねてくる。
当時は作家の自宅住所がわりと公開されていたからである。
美人なので思わず先生も自宅に招じ入れると、美人なのはいいがこの女性かなりヘンで、先生の次の取材旅行先をきくと、
「先生はやはりご存知なんですね!?」
などと訳の分からぬことをいう。
先生も、
(へんな女性だな)
と思いつつ応対するが、女は時刻表を貸してほしいという。当時各家庭に時刻表はあった。それでなにやらしきりに計算をはじめる女。やがて、「先生のこの前の取材旅行の鉄道キロ数を計算すると、ちょうど350kmです。で、今回の取材のキロ数が353.5kmです」というので、先生も、
(エッ?)
なんだそれ!?となる。
作中では計算狂とあるが、いまでいうサヴァン症候群の女性がストーリーをぶった切るようにしていきなり登場する。
…そんなある日、またしても浜中と取材旅行中、電車にのってると先生はふいにトイレにたつ。トイレの帰り、車内でふと地図を目にする。当時国鉄の営業路線図みたいな日本地図が車内にあった。
先生は、明石や加太や三保の松原とか行ったなと回顧しながら地図をながめていると、そこであることに気づいて、
(アッ!)
となる。あわてて座席に戻り、寝ている浜中を起こし、かれを詰問する。
「浜中君、きみはこのことを知っていたのかね!?」
本作品最大のミステリーがここからはじまる。
【清張作品の魅力】
それまでの小説とちがって画期的だったことが二つあります。
まずは、殺人動機の明瞭化です。
それまでの小説って、殺人の動機があいまいでした。(←江戸川乱歩のことでしょうか)
シャーロックホームズなんかもほとんど貴族のスキャンダルなんです。
殺人の動機は、地位や名誉、権力とカネ、そして情欲。欲はすなわち人の業であり、人がひとを殺めるのに足る理由がそこにあります。
清張はそこをつきつめて言及した結果、「松本清張サスペンス」のようなエログロのイメージがついてまわりましたが、本来純然たる人間の本質を描いてるだけなのです。
もうひとつは、推理小説に旅情を入れたことです。
それまでの殺人といえば、どこが舞台なのかはっきり描かれませんでした。
それを清張作品は、有名な「ゼロの焦点」の能登半島をはじめ、日本中の実在する地名をバンバン出しました。
その結果、当時高度成長期で国内旅行ブームがはじまり、国鉄が行ったキャンペーンや日本交通公社(現JTB)の誕生もあり、清張作品は一大旅行ブームの火付け役になりました。
【羽衣伝説の正体】
もう、ここまできたら全部書かせていただきますが。
この「Dの複合」に対する唯一の批判が、民俗学のうんちくを語るだけで羽衣伝説の正体になにも迫っていない、という批判があります。
でもこれはしょうがないことなんです。当時の民俗学の研究ではこれが限界でした。
作中、いい線までは言及されてるんです。
羽衣伝説は、ヨーロッパの白鳥伝説と同一であること。
伝説は世界各地にあり、シナ、インド、シベリアからスカンジナビア半島まで、おなじ伝説があるんです。
作中ではこれを、ユーラシア大陸を経て「口伝により伝播」したとありますが、これはまちがいなんです。
最近の研究では、同時多発的に発生したと考えられてます。
そんなことってあるんでしょうか?
じつはこたえを言いますと、白鳥伝説のある地域と太古の昔、製鉄が行われていた場所と一致するんです。
製鉄、ときいてもののけ姫のタタラ場を思い浮かべたひと、正解です。
昔の製鉄は、いまとちがい鉄鉱石と石炭ではなく、大量の木炭と砂鉄を必要としました。
でも、それと白鳥にどんな関係が?
白鳥などの渡り鳥は、体内の器官で地磁気を感知しナビゲーションするといわれています。
地中に大量に砂鉄があると、地磁気が狂います。
白鳥が飛来する所に砂鉄が豊富に存在し、製鉄が興り、人類は文明を発達させました。そのえいえいとした歴史を物語る口碑が、白鳥伝説となってながく残ったというわけなんです。
これが松本清張の時代にはわからなかった。
* * * * *
さて、もういい加減に私の旅に話をもどします。
書斎が見れてひと安心。お風呂に入りにいきましょう。
ここにはなんと、貸切風呂があるんです。
部屋にもどって着替え準備して、旧館に行こうとするともう道順がわからない。
「えーと、どっちだっけ?」

ほとんど迷宮、ラビリンス状態。

ウロウロしたあげく、やっとみつける。

松本清張も浸かったという、
『ごんすけの湯』
小説の作中でも伊瀬先生が風呂に入り、
「タイル張りながら、うすよごれて気持ちが悪い」
とあるが、いまはそんなことはなく、気持ちのいい温泉である。
温泉からあがると、夕飯の支度が整ってます。

まずは京都の地ビール、
プレミアムモルツでのどをうるおす。

なんか、こういう場所で独りで食ってますが。
ぜんぜん平気です。
さいきん物事がどうでもよくなってきた。
『お造り』
めちゃくちゃあまい。
『蒸し蟹』

松葉ガニ(ズワイガニ)です。ちなみに。
『焼き蟹』
Nikon AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED
写真もキレイに撮れてうれしい。
女中さんに焼いてもらいます。

甲羅酒も楽しめるようで、そうだ、お酒はなに頼もう。
「利き酒セット」があるそうで、なら頼むしかないわな!
5種類の酒で800円ときいて、めちゃ安いな!
と思ったら、おちょこで出てくるそうで、なんだおちょこかよと言ったら、女中さんがそこそこ量はありますよという。
じゃ、頼んでみよう。

で、利き酒の感想。
べつにふざけているわけでなく。
酒どころ京丹後の酒にハズレなし。
かにづくしフルコースも、いよいよ大詰め。

(※宿の予約のさいにかにづくしを頼んだわけではなく、なんの注文もせずにただ泊まったら自動的にフルコースだった)
かにすきに突入。

〆はモチのロンで、雑炊に。

これがうまい。

最後にデザート。
京丹後の夜は、こうして更けていきます。
明日は城崎温泉に泊まります。
ご期待ください。
Posted at 2020/02/23 19:04:20 | |
トラックバック(0) | 日記