2016年07月08日
僕が参加させて頂いている、WRX STI VAB という車のグループでの雑談の話しで、凄く興味深い、オイルの話しがありました。
そのオイル関連で、凄く詳しく方に、直接、水温と油温の関係や、ブレーキフルードの交換時期などを、質問させて頂いたところ、大変丁寧に、わかりやすく、説明して頂けて、これは、みんなにも、是非読んで頂けたらと思い、その方の、承諾のもと、ブログにさせていただきました。
長い文章になりますが、大変為になる事しか書かれていないので、最後までご覧になって頂けたら幸いです。
以下
以前レースをやってた時にオイルメーカーがスポンサーに付いてくれてたので、
オイルにとって最も過酷だと言われる空冷ポルシェ用レーシングオイルを中心に開発ドライバーやってました。
開発と言っても私自身がオイルを作る訳じゃなく、送られて来たオイルを入れてレース参戦し、
レース後に抜いたオイルを送り返し、レポートを提出し次戦用オイルのリクエストを送ってました。
もっとトルク感が欲しいとか、もっと上を軽く回せないかとか…
で、私はVABにも前車のGRBにも水温計、油温計を着けてないので詳細なデータは持ってませんが、
一般的に水温が100度を超えた程度であれば油温は110度から120度の範囲内だと思います。
絶対的に水温より油温の方が高く、水温より油温の方が低い車は見た事も聞いた事もありません。
で、ここからは一般にはあまり語られてない話ですが、
私の場合はデータ収集の為1戦ごとにオイルを交換してましたが、
もしそのオイルを一般のレースユーザーが使うなら、メーカーが指定する交換サイクルは10,000キロです。
オイルにとって最も過酷だとされる空冷ポルシェでレースしても10,000キロです。
私がレースをやってたのは15年以上前ですが、
その時点でもオイルはその程度のタフネスさを持っていたのです。
石油化学の分野の技術革新のスピードは凄まじく早いので、
15年後の今の技術なら20,000キロ持たせる事も可能だと思います。
ただ、いたずらにドレンサイクルを延ばしても清浄性の方に問題が出ますから、
(オイルにスラッジ等の汚れを取り込んで、一定期間でオイル交換する事でエンジン内を清浄に保ちます。)
恐らくドレンサイクルは10,000キロのままで抵抗を少なくするとか、
熱安定性を良くするとかの方向に進化してると思いますが…
よく、3,000キロでオイルを換えないとエンジンが壊れるなどと言われてたりしますが、
そんなのは30年以上前の基準で、そんなヘナチョコなオイルは今時売ってないと思います(笑)
VABの純正オイルの指定ドレンサイクルも10,000キロか12カ月ですよ。
ただ、オイルって儲かるので、3,000キロで換えなきゃエンジンが壊れるなどという与太話を敢えて否定せず、
業界の大部分が与太話に乗っかっちゃってるだけです(笑)
なので130度まで油温を上げてなければ、そのまま普通に使ってても全然問題ありませんよ。
ついでに一つ付け加えると、皆さんの使ってるオイルは無駄に高品質で勿体ないなという印象です。
私の場合、ある道で全日本ラリーのSSと大差ないペースで走らせてたりしますが、
(車の戦闘力は全日本ラリー車に負けますが、コース習熟度は圧倒的に高いので結果的に大差ないです。)
それでもスバル純正カストロールを半年ごとに交換してるだけです。
7,000~8,000キロごとの交換ですが、これは早めの交換を心掛けてる訳じゃなく、
ただ単に半年ごとに点検パックで入庫させるので、ついでにその時に交換して貰ってるだけです。
ちなみに今はカストロールを使ってますが、GRBの時はずっとスバル純正オイルでした。
GRBの時は外付け部品でリミッターカットしてたのでECUはノーマルでしたが、
VABではECUを書き換えてリミッターカットしてるので保障が効かない可能性もあるので、
念の為オイルのグレードを1ランク上げました(笑)
続く
ブレーキフルードに関するご質問。
で、ブレーキフルードですが、レースをやってた頃から今現在まで、
私の戦いは、言い換えればブレーキとの戦いでもあるので、
ブレーキの話をさせるなら私が適任だと思います(笑)
私の使い方でテストコースを走らせると必ずエアを噛むので、
1回走行させると1回エア抜きをする必要があります。
月に3回走りに行ったら3回エア抜きしてるという事です。
但し、あくまでもブレーキシステム内からエアを排除するのが目的なので、
ブレーキフルードを全量交換してる訳じゃありません。
私はエンドレスのRF-650という500cc缶のフルードを使ってますが、1缶で2回程度エア抜きできます。
エアが噛むかどうかはブレーキシステムがどの程度の温度に晒されるかによりますが、
要するにブレーキを踏んで発熱してる時間と、加速体制にあって冷却してる時間との兼ね合いですので、
どんなにブレーキングがハードでも、その後の加速時間が長く充分に冷却できるならあまり問題になりません。
つまり関東では富士がブレーキにとっては一番楽で、筑波2000の方が厳しいですし、
筑波1000や本庄などのミニサーキットは更に厳しいです。
究極的には中低速中心のテクニカルな峠がブレーキにとって一番厳しいです。
そんな所を走らせてる私の場合は1回のエア抜きで使う量は少ないですけど、
2ヶ月もあれば全量が入れ替わってる事になりますが、
普通の使い方をしてる人の場合はそうはいかないでしょう。
で、本題に入りますが、まず大前提としてブレーキフルードは沸騰しません。
私が使ってるRF-650のドライ沸点は323度ですが、走行中にそこまで温度は上がりません。
キャリパーの塗装が熱で変色する、所謂コゲンボになるのは200度程度ですが、
その温度が維持されるとキャリパーの素材そのものにもダメージがありますし、
シールやダストブーツ等ゴム素材の部品にはもっと深刻なダメージがあります。
私のキャリパーは綺麗なもんですが、なぜ沸点が323度のフルードが、
200度にすら達しない使い方でエア噛みするんでしょうか?
例えばガラスのポットで水を沸かせてみると分かりますが、
沸点の100度より全然低い60度くらいからポットの表面に気泡が現れます。
これは水蒸気も含まれますが、水の中に溶け込んだ空気が気泡となって現れたものです。
空気中で液体を扱う限り、液体の中に空気が溶け込みます。
水しか吸ってない筈の魚が、水の中から酸素を取り出し呼吸できるのも、
水の中に溶け込んだ酸素を鰓で取り出せるからです。
もし空気が溶け込んでない水の中に魚を入れたら即座に窒息死します。
で、フルードの沸点に達しなくてもキャリパー内に気泡が発生する訳ですが、
フルードの蒸気は温度が下がればまた液体に戻っていきます。
しかし空気は短時間でまたフルードに溶け込む事はできません。
ブレーキにエアを噛ませた後、暫く放置するとある程度ペダルタッチが戻ってきます。
これが蒸気になったフルードが温度が下がって液体に戻った状態で、
それでも残るフワフワ感の正体は空気な訳です。
で、フルード内にどれだけ空気を溶存してるか、
それがどのような形で表れるかがフルードの性能を決定づけてるので、
超高沸点を謳ってる癖にてんで駄目なフルードがあったり、
沸点はたいした事ないのに結構イケちゃうフルードがある訳です。
なので缶に書いてある沸点は目安程度にしかなりません。
いや、目安にすらならないか…
そしてフルードの使い勝手を決定づけるもう一つの要素に吸湿性があります。
吸湿性に関してはドライ沸点とほぼリンクしてるように思います。
つまり、沸点が高ければ高い程、吸湿性も高いという事です。
吸湿してしまうとフルードの蒸気と空気という要素だけじゃなく、
そこに水蒸気という要素も加わるので事態がより複雑になります。
フルードは可能な限り吸湿してない状態で使いたいもので、
例えば私が使ってるRF-650ならどんなに引っ張っても半年が限度だと思います。
可能であれば2ヶ月以内に交換したいところです。
なので私は不必要に高性能なフルードはお勧めしません。
問題ないなら可能な限り沸点の低いフルードの方が良いと思います。
なんか読み返してみたら肝心な事を書いてなかったので追記します。
例えばエンドレスならS-Fourというセカンドグレードのフルードがあります。
ワコーズならSP-4がこれに当たるでしょうか。
これらのフルードでしたらライフそのものは1年くらいでも問題ありません。
ゴールデンクルーザーDOT4などでしたら2年引っ張っても問題ないと思います。
私のような使い方であれば封を切ったフルードを取っておいたとしても、
長くとも数週間後に使いきってしまいますので問題ありませんが、
普通の使い方であれば最小限のフルード量でエア抜きして残りを取っておいても、
次に使う時には微妙な感じになっちゃいますよね。
ですので、封を切ったフルードは全部使い切る感じになると思いますので、
エアを噛んだなら適宜全量交換すればいいと思いますし、
エアが噛んでないなら1年ごとに全量交換すれば問題ないと思います。
但し、エンドレスのRF-650やワコーズのSP-Rなどレーシング過ぎるフルードの場合はこの限りではありません。
この手のレーシングなフルードは吸湿性がハンパないので、
取り込んだ水分によってキャリパーやマスターの中の部品を錆びさせるリスクがあります。
なので、どんなに引っ張っても半年が限度と考えた方がいいでしょう。
上記から考えても、不必要に高性能なフルードを使うのは、
無駄なだけじゃなく不必要なリスクを抱え込む原因にもなります。
スバル純正DOT3で問題ないならスバル純正DOT3を使い続けるのが一番良いですし、
それで問題があるなら、
(たまたま一回くらいエアを噛んだくらい問題とは認識してません。
床まで踏んでもABSが作動しないくらいベカベカになって、
走行を続ける事が困難になっちゃうのが問題だと思います。)
ゴールデンクルーザーDOT4や、中身が一緒なホンダ純正DOT4に換えてみて、
それでもABSが作動しなくなるくらいベカベカになるならエンドレスS-FourやワコーズSP-4に換えてみる。
というスタンスで宜しいかと思います。
くれぐれもブレーキフルードに関しては、大は小を兼ねません。
無駄に高性能なフルードは、単に無駄なだけじゃなくリスクもあります。
自分の用途に合った物を選ぶ事が肝要です。
以上
これに、関して私に質問されても、困りますが、わかる範囲でお答えできればと思いますが、私は素人なので、的確なお答えできないと思いますが、ご理解下さい(^^;;
Posted at 2016/07/08 12:42:49 | |
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