
私が子供の頃に種を蒔いて
48年目になるモミジの盆栽を植え替えた。
画像は植え替え完了後の姿。
樹高65cm(鉢の上から)、左右90cm(葉の無い状態で)
盆栽は鉢の中の限られた用土に根を張って生きてるので、日々の水やりが欠かせないが、
さらに
数年に一度は「植え替え」が必要になる。
根が鉢の中で充満して、新たに伸びるスペースが無くなるのと、粒状の用土が崩壊して、水が通らなくなって来るからだ。
このモミジは根の張りも早く、既にパンパンの状態で、このままだと、
今年の
夏に水切れを起こす危険がある。
こうして水の通りが悪くなった鉢は、水の中に沈めてやると、ブクブクと中の空気が出て、水と入れ替わって、中心部まで水が入るのだけど、この大きさの鉢を毎日するのは厄介だ。
結局、根の張りよりも、用土の状態が植え替えの一つの目安になるとも言える。
植え替えて、用土を新しくした直後は、じょうろやホースの先のシャワーノズルで潅水しても、表面に水が溜まる事なく、す~と水が入り込む。
なお、ホースの先のシャワーノズルを一箇所に長く当てると、表土が飛ばされるので、手先を細かく動かすようにして、集中しないようにしなければならない。
このモミジは2年前の2021年3月に植え替えてる。
その記事は「関連情報URL」を参照して戴きたい。
今回、ブログに載せる為に多くの写真を撮ったが、見返してみると、2年前の画像とあまり変わりがないので、一部だけの掲載にする事にした。
植え替えの適期は春。
それは切った根の傷口の回復が早く、新しい根の出、つまり発根する為の「温度」が必要だから。
が、
地上部が動き出す前がいい。新芽が展開して葉が出る時期は、最も水分を必要とする時なので、新葉の頃に植え替えるのは良くない。
この冬、このモミジはずっと室内に入れていた。寒さが厳しく、細い枝が凍てて枯れる可能性もあるから。
しかし、近年の傾向として、寒い冬から急に暖かくなる。新芽が膨らんで来たので、もう待ったなしで植え替えを決行した。
まずは
鉢から抜く作業。
これが大変なんだ。内部で充満した根が鉢の底や周囲に貼り付けてる。用土もつぶれてカチカチになってる。
なんか、
年々大変に、辛くなってる感じ。
それは自分の体力の衰え?と、木自体が太り、重くなり、鉢の周囲とのスペースが無くなってる事にあると思う。
ともかく、
周囲をカマなどで掻きながら、鉢と根(用土)を分離して行く。
私は若い頃から「手骨管症候群」で、手首の骨の管の中の神経を圧迫して、力仕事が続くと、指先がジンジンと痺れるようになる。
手首が弱いので、腕力があっても、手先の力仕事は苦手なのだ。
それに、親の介護で親指の付け根を痛めてる事もある。両手共に。
そんなことで、鉢から抜くのに1時間以上かかってしまった。
底を見ても、根が充満してるのがわかる。
この根の塊状態なのを、レーキなどで掻いて、解して、切り詰めて行く。
根を切り詰めた後の正面側

↑
盆栽の価値、見どころの一つに「根張り」がある。
周囲に均等に根が張って見えるのを「八方根張り」と言う。それは見た目の安定感や迫力があるからだが、枝なんかが比較的簡単に操作して整える事が出来る一方で、根張りは一朝一夕には出来ないからこそ高く評価される。
しかも、このような富士の裾野のような広がりの座を持つのは
「究極の根張り」と言える。
苗の頃から計画的に横根を大事にして、でも表面に後から出る上根は切除する事で、下の座を広げて行く。
鉢である程度、長く作ってると、表面に見える横根を大事にし過ぎて、その下の土の中に眠ってる「座」を見逃してしまう人が多い。それを掻き出すのも植え替えで大事な作業なのだ。
裏面側
左側面側
右側面側

↑足元の傷はまだ塞がらない。ずっと昔にやけて枯れてしまい、その部分を切除したのだが。
底側

↑中央が凹んでる。ここは根が無く、幹の中心の底。底の根は極力詰めて切る。
全体像。こうして見ると、如何に根の部分を小さくしたか、わかる。
鉢は同じものを使う。洗って、底の穴に網をセットしておく。
底に5mm以上の大きな粒子のゴロを敷いて、その上に用土を中心部を高く盛って敷いておく。
その辺の画像は2年前のブログ(関連情報URL)を参考に。
鉢にセットした画像。中央に高く敷いた用土を押しつぶすように、左右に少し回転させながら据え付ける

↑向きや上下、傾きなどを見定めて、その位置を針金で固定する。
前述のとおり、1年もすれば根が張って、抜こうとしても抜けなくなるけど、植え替えた直後は動かないように固定しておかないと、伸びかけた新根が折れてしまうから。
切り詰めた根と、鉢との隙間は少ない。

↑底方向にはまだ十分に根が伸びる余地はある。
このモミジには、
もうこれ以上、太って欲しくはないのだが。
本当ならば、もう一回り大きな鉢に替えてもよさそうだけど、現状でも重くて、しかも周囲に枝が伸びてるので、腕を伸ばした状態で持ち上げる必要がある。
だから、これ以上、大きな鉢にはしたくないのだ。
鉢を腹に付けるようにして持てるならば、相当に重い盆栽でも持ち上げる事が出来るのだけど。
つくづく、もっと小さな盆栽なら良かったのにと思う。
このモミジも中品クラスだったんだけど、次第に大きくなってしまって、左右の葉張りは1mにもなる。
用土を入れて、箸で突き込む。後は手で鉢の側面を叩いて、振動で落ち着かせる。

用土は硬質赤玉土7、桐生砂1、日向土1、川砂1の割合に、竹炭を混ぜてある。
粒子は2mm~5mm。この間のフルイにかけてる。
盆栽の用土は粒子状のものだけで、1mm以下の粉は必ず捨てる。
表面に出た根は、刻んだ水苔で覆う。
この後、表面に細かい化粧土を敷いて終わり。
化粧土は赤玉土と富士砂を同量混ぜた1~2mmの粒子。
化粧土は不要という考え方もあるが、表面が荒い粒子のままだと、乾きが早く感じられて、水のやり過ぎになる。
赤玉土は濡れた状態と乾いた状態の色の差がハッキリしていて、乾き具合がわかりやすい。
けど、赤玉土は潰れやすいので、堅く黒い富士砂を混ぜて、見た目も落ち着く。
植え替え後はたっぷりと潅水し、底から濁った水が出なくなるまで。
その後、
HB-101の1000倍液を潅水してる。
植え替え後の根の張り出しが違うと感じられる。
植え替えを完了した全体の姿が一番最初のタイトル画像。
昨年10月、このモミジや山桜、アケビをネット検索で出てくる
「盆栽買い取り」の業者に写真で査定してもらった。
岳盆栽
モミジ 6万円
山桜 2万円
アケビ 1万円
バカにするな。それをいったい幾らで売るつもりだ。
盆栽業者というのは、客の木を安く買い叩いて、それを何倍にもして売って、
「ホームラン!」と喜ぶ実態をよく知ってるから、盆栽屋に売ることはしたくはない。
でも、同じくネット検索で上位に出てくる以下の買い取り業者の写真査定は
はニわ盆栽(は二わ株式会社)
モミジ 25万円
山桜 10万円
この差は何なんだ。実はハニワは同じ市内で、用土を買ったりしていた。
本格的な盆栽は置いてるように思わなかったけど、今はヤフオクにも多く出品してるみたい。
それでもまだ、この価格には納得出来ない。
それで、自ら、
ヤフオクにモミジを70万で出品したけど、4ヶ月近く経っても売れなかった。
山桜は20万で出品して一度落札されたものの連絡が付かない。
その落札者は「非常に良い」評価が17あったものの、落札直後から複数の「非常に悪い」評価が相次ぎ、他の取り引きでも連絡が付かなくなったようだ。
おそらくは、事故か病気で取り引き出来なくなったのでは。
アケビも10万で出品したけど、この盆栽はアケビとしては、ちょっと他に見られない、いい木だと思う。比較的、小型だし、売らなくてもいいのではと思えて来た。あるいは倍の価格にするか。
このモミジは今年の植え替えが必須で、その時期になったので、出品を取りやめて植え替えた。
植え替えると、当面は輸送出来ないので、しばらくは出品も無い。
どうして売却する気になったのか。
それは親の介護で、盆栽の管理が苦になって来た事と、経済的に苦しいから。
ただ、このモミジもいざ、売りに出すとなると、左中間の枝が枯れてるし、他にも懐枝の枯れが目立ち始め、この春も芽吹かない箇所が見られる。
木が古くなって、枝が細くなり、自然の新陳代謝で、弱いところが枯れてくるのかと思う。
木としての寿命はまだ十分にあるけど、自ら不要な部分を切り捨ててるというか。
盆栽は人間の価値観で、小さく都合のいい形に作ろうとしてるだけなので。
たとえ、
お金に余裕がある人でも、骨董品のような買い方は出来ない。
毎日の水やりの他、数年に一度の植え替えなどの手入れ、管理が不可欠で、それが出来る技術が必要になる。
愛好家の中には、ほとんど盆栽屋に木を預けてる人もいるので、そういう買い方をする人に期待するのだが。