2016年11月21日
今から20年以上前、私は電車で酔っぱらいから助けてもらったことがあります。
私は、高校一年生で通学のため初めて一人で東京の電車に乗り始めました。
初めて乗った日から3ヶ月、毎日のように痴漢にあい、学校に相談したら先生が一緒に乗ってくれるようになって、被害に遭わなくなったけど、
家族に、もう乗るなと言われて、通学は送迎になり、二度と電車には乗らなくなりました。
それから何年かたって、友達の家に遊びに行った帰り、タクシーがひろえなくて、最寄り駅まで行くとタクシー乗り場は長蛇の列…
その駅から私の家まではたった2駅、久しぶりに電車に乗ってみようと思って、電車に乗ってしまいました。
電車は座る席は9割うまっていましたが立っている人は一人もいないくらい空いていました。
私は、ドア付近の手すりがある角に立ちました。
ドアが閉まる直前にその50代くらいの酔っぱらいは乗り込んできました。
手に火のついた煙草をもったままです。
そして、私がつかまっている手すりの少し上をつかみ、私に顔を近づけて(今でいう壁ドン状態)
私の顔に煙を吹きかけました。
怖いと思いました。
誰も助けてくれるはずない、だって私が痴漢にあってるとき、今まで助けてくれた人なんて一人もいなかったんだから!って下を向いて涙がこぼれそうになった時
「ここは禁煙だろ!」って声が聞こえて、顔をあげると、酔っぱらいの煙草を持つ手をつかんでいる、30代前後の男の人が見えました。
酔っぱらいは、その人のネクタイの上をつかみ、その人も酔っぱらいの同じところをつかみ、電車が揺れるなか、二人はつかみあったままにらみ合いを続けました。
「ケンカするなら降りてしろよ!」と文句を言う声
や
「いや、あっちが悪いんだよ!」と座っていた乗客達の声が聞こえてきました。
そしてひとつめの駅についた時、酔っぱらいはその人を離して降りて行きました。
私は…かたまったままで、ずっとかたまったままで、その人を見る事もできなくて…
そんな間に直ぐに私が降りる駅に到着しました。
その人が降りて、同じ駅で降りるんだ!!と思いながら私も降りました。
ホームでネクタイを直すその人に…
「ありがとうございました!」と頭を下げて、私は走りさってしまいました。
それが本当に精一杯だったんです。
家に泣きながら走って帰って、家族に話すと、何故?連絡先を聞かなかったの!と言われて、呆然としてるなか、母に手を引かれて、駅に向かって走りました。
母はお礼がしたくて必死でさがしていたんです。
私はもう受け止めきれなくて、ただ泣いていました。
その頃、援助交際なんて言葉が流行りだして、街を歩いていると、いつも持ち掛けられていた私は、痴漢や他の思い出も重なって、大人を軽蔑して憎んでいました。制服を着た子供と同じくらいの年であろう私をそんな目でみる大人に殺意を持っていました。
よく母に「何かあったら大人に助けてもらいなさい」と言われて育ちましたが、
その頃の私は、心のなかでいつも「違うよ、大人は私を傷つけることはあっても守る気なんてこれっぽっちもないんだよ」と思っていました。
…殺意を持っていたのに、電車で怯えて何もできなかった自分が情けなくて惨めで、
そして何より、私を助けてくれたのに守れなくてごめんなさい!
一緒に戦えなくてごめんなさい!
文句を言う乗客に「違います!この人は助けてくれたんです!」って、言うことすら出来なくてごめんなさい!
って、気持ちが溢れて胸が張り裂けそうだったんです。
ずっと探していましたが、見つからないまま何年かたち、ドラマ「電車男」か放映され初めました。
毎日、電車男の幸せを願いました。電車男が幸せになった最終回を見届けて、あの人にもエルメスみたいな素敵な人が現れますようにと願いました。
結婚して子供も授かって、数年たった子供が小学生のとき、学校で流行っていた進撃の巨人
子供がハマっていたのを偶然みました。
進撃の巨人には、主人公のエレンが、ミカサという女の子を鬼畜(東洋人が高く売れるからと少女ミカサと母親を狙って家に襲いにきた)のような男達から救い出すシーンがあるのですが、ミカサはその男達に目の前で両親を殺されてしまいます。怯えるだけで何もできないミカサ…エレンはその男達を殺して救おうとしてくれる。
ミカサはその時覚醒して強くなり、エレンの傍でずっとずっとエレンを守る女の子になる。
命と心を救ってくれた人に、命と心を捧げ続ける。
涙が止まらなかった。
ただただ、ミカサを強くしてくれてありがとう、エレンに恩返しさせてくれてありがとう…って、
男性の作者なのに、そういうものを憎んでくれてありがとう…って
私は、あの頃より絶対に強くなっている。
今なら一緒に戦うし、絶対にその恩人を守ってみせる。
でも、その強さが本当に私にあるなら、それはその人がくれたものです。
私はあの日からずっと、あの人を守れるように、子供や若者を守れるように強くなりたい!
って、思い続けてきたんだから。
受けた恩は、誰かに返せばいいと言われたことがある。
でも、この世の中は不公平で、人に与えてばかりで損ばかりしている人に出会ったりする。そんな時いつも、せめてこの人が与えてきたものと同じ分だけ今、この人に返してくれたら…と願わずにはいられない。
だから私は、この恩を絶対にその人に返したいし、返さなくてはいけないんです。
三日前にアルバムの整理をして、年をとったことを実感する。
死ぬまで、この感謝は伝えられないの?
死ぬまで、恩返しは出来ないの?
なにか見つける方法って、ないのかな…
Posted at 2016/11/21 06:50:29 | |
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