2021年01月18日
大切な人をなくしました。
本がとても大好きな人で、日本にある本は全て読んでいるのでは?と思うくらいに、本のことは、聞けばなんでもこたえてくれて、ご自宅の書庫には難しい本や珍しい本がびっしり入っていました。
本には全て特注の印鑑を押す方で、そこを訪ねて、その方のしるし入りの本を読み、本について一緒に語り合うのが大好きでした。
私は22歳から毎年そこを訪ねていて、
最後に訪れたのは、2019年11月、この日は会えなかったけど、、、
その方は、2019年から、体調を崩していたらしい。
一軒家に一人暮らしで、何かあっても誰にも迷惑がかからないようにと、永代供養の手続きをされ、しっかり片付けられ、あんなにたくさんあった本棚も一台になって、
82歳の男性の一人暮らしとは思えないほど整理整頓されていたと、たくさんの人からききました。
1月12日に知らせをうけて、悲しすぎる出来事を受け止めるのに精一杯でした。
その後、その方が最後まで捨てずに残した本棚一台分の本は、いったい何の本だったのだろうと考えていました。
何度かお会いしたことがある、その方の妹さんと連絡がとれて、一緒に泣いたあと、いろんな話をきいて、
私は胸がはりさけそうになりました。
その方の、離婚した妻と暮していた娘が、ご主人をつれて40年ぶりに現れ、通帳からお金を全額ひきだし、お葬式の2日後に、本や家具やいろんなものを処分しだして、不動産屋さんに査定まで依頼していた話を聞いたからです。
あんまりにも直ぐにいろいろ処分しだすから、せめて百箇日まではそのままにしてくれないかとお願いしたの、と。
とても大切に宝物のようにしていた本はどうなったのですか?と私が聞くと、
全部処分されたみたいなの、形見に一冊でも欲しかったと大声で泣きながら話してくれました。
そして私もですと、二人で号泣しました。
あまりにも酷い。
人間はこんなに人の痛みに鈍感になれるものだろうか?実の兄妹もいるというのに。四十九日すら終わっていないのに。
ご自宅で、遺品をみながら、みんなで思い出話をしたり、お線香すらあげられないなんて。
お年寄りの兄妹たちは、相続する子供を探してもらって、遠方から40年ぶりにくる子供たちが、その方の家に滞在できるように、何時間もかけて掃除をしたそうです。
兄妹たちは、人が来れるように片付けた
娘さんたちは、売却するために片付けた
あんまりです。
私は、本の行方を追いました。年末年始をはさんで、今ならまだ動いてないかもしれない!きっと全て買い戻せる!
あの方が死期を感じながらも、20台はあった本棚を一台にして、最後まで捨てられなかった本、私が絶対に買い戻してみせる!
だけど、頑張りましたが、本は、古紙リサイクルセンターに持ち込み、投げ捨てるように捨てられ、既に潰されていたことがわかりました。
写真でその施設を調べて震えました。
あの方を愛しているなら、それは絶対にできない、あまりにも酷すぎて、胸までつぶされたように苦しくなりました。
また、通帳から引き出されたお金で、リサイクル業者に10万円を支払ったと聞かされたそうで、、、、
その方は贅沢もしないで貯めていたお金を、遺したかった自分の宝を捨てるために使われたことになってしまう。
あまりにも、あまりにも酷い話だと思いました。
そして、美しい庭。
その方は庭をとても大切にしていました。
自分で手入れされ、こだわりで色んな場所から取り寄せた大きな石がたくさんありました。
兄妹に庭をみせながら、俺には庭しかないから、と話していたそうです。
でも、その石の撤去作業の見積もりも、お葬式の2日後にしていたそうで、どうかそれも百箇日までは動かさないでとお願いしたそうです。
相続人が他にもいる場合、家族であっても勝手に遺品を処分することは、法律的にも許されていない。
あり得ないことだと怒りに震えました。
憎みました、、、だけど、その娘の幸せを、その方は絶対に願っているのです。
知らせをうけた2日後、その方が机の中に残していた、破いたノートに書かれた、たくさんの気持ちの走り書きを何枚もみせられ、後悔に苦しむ事になりました。
私に、ずっと、とても会いたがっていた。
そして、立派でとても強くみえていたその方も、寂しい、とても寂しい老人であったのだときづいた。
去年、私は何度も何度も挫けそうなくらいに辛い思いをしていて、その方に、何度も何度も会いたい!会いにいこう!と思った。
だけど、その方に会うときは、自分が強いときでなくてはいけないと思ってやめた。
なんて馬鹿なんだろう。同じ時期に弱っていて、
私が素直に、悲しいとか、辛いとか、寂しいとか言うことで、私達は寄り添い抱きしめあうことができたはずなのに。
そうしたら、二人とも元気になって、また一緒に哲学について語りあったりして、幸せな時間が過ごせただろうに。
私なら体調の変化にだって、絶対にきづけた。
何度も訪ねて、最後の願いもきっとかなえてあげられた。
宝物の本はふさわしい場所に、そして遺したかった人達に渡しにいけた。
孤独に死なせてしまったことを悔やみ、泣いてばかりいる私に、おばさま達が、
逝くときはみんな、どんな幸せな人だって一人で逝くしかないんだよ、だから泣かないでと言ってくれた。
ペットロスから立ち直ってから、いろんなものを亡くして、私もいずれ逝くんだ、会えるんだと、死を受け入れられるようになっていましたが、
やはり死はとても苦しいのです。
本がなくなってしまった今、その方の宝は庭だけになりました。
なんとしても、その庭だけは守れるようにしなくては。
そう思ったら少しだけ元気になれました。
Posted at 2021/01/18 19:27:14 | |
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