「ミカエルの鼓動」

大学病院で、手術支援ロボット「ミカエル」を推進する心臓外科医・西條。そこへ、ドイツ帰りの天才医師・真木が現れ、西條の目の前で「ミカエル」を用いない手術を、とてつもない速さで完遂する。
あるとき、難病の少年の治療方針をめぐって、二人は対立。
「ミカエル」を用いた最先端医療か、従来の術式による開胸手術か。
そんな中、西條を慕っていた若手医師が、自らの命を絶った。
大学病院の闇を暴こうとする記者は、「ミカエルは人を救う天使じゃない。偽物だ」と西條に迫る。
天才心臓外科医の正義と葛藤を描く。


柚月さんの小説はどんな分野においても取材がしっかりしていて読み応えがあります。
本作も最先端の医療技術と難病の病態や治療法、病院経営の内幕などかなりリアルに深いところまで描かれており、少年と西條が心を通わせるさまも彼女らしい筆致。


ただねー、ミカエルに不具合の可能性が浮上した時点で即座に隠蔽され、充分な調査もなく全国的に使用が継続される？？
西條だけが名声を捨てて少年の命を守るなんてやや現実離れした設定には白けてしまいました。
医は仁術か算術かという古典的プロットは物語として成立させやすいんでしょうけどね。


西條が心臓外科の教授なのにやたらと胸ぐら掴んでしまうところは孤狼の血風味が抜けてないし（笑）