「最後の祈り」

殺人犯と、娘を殺された父。 死刑執行を前に、 命懸けの対話が始まる。
娘を殺した男がすぐ目の前にいる。贖罪や反省の思いなど微塵も窺えないふてぶてしい態度で。
東京に住む保阪宗佑は、娘を暴漢に殺された。妊娠中だった娘を含む四人を惨殺し、死刑判決に「サンキュー」と高笑いした犯人。牧師である宗佑は、受刑者の精神的救済をする教誨師として犯人と対面できないかと模索する。今までは人を救うために祈ってきたのに、犯人を地獄へ突き落としたい。煩悶する宗佑と、罪の意識のかけらもない犯人。死刑執行の日が迫るなか、二人の対話が始まる。


これ以上ないってくらい重く苦しい設定。
「死刑囚に生きる希望を持たせたうえで、最後の教誨で娘が感じた以上の地獄に突き落とす一言を放つ」ことが唯一無二の生き甲斐となった主人公。
単純な復讐劇にはならないんだろうなと思いましたが、ラストの死刑囚の心情変化を本人に語らせずに表現する伏線回収はお見事でした。
主人公だけでなく、死刑に携わる拘置所職員の苦悩もリアルに表現されていていろんなことを考えさせられる傑作です。