「転の声」

「俺を転売してくれませんか」　伸び悩みに焦るミュージシャンがすがりついたのはカリスマ転売ヤーだった


クリープハイプの尾崎世界観さんによるミュージシャン心理小説。
ワタシはクリープハイプの音楽に興味は無いけど、この本はだいぶ面白かった。

ロックバンドのヴォーカルなんて自意識過剰で承認欲求の塊。
ファンのためにライブをやるんじゃなくて、エゴサを繰り返し、ライブチケットにプレミアがつくかつかないかに一喜一憂。「求む」が多いと躁になり「譲る」が多いと鬱になる。

ヤホオクでライブチケット取引が普通にできた頃はワタシも頻繁に売り買いしてましたが、定価より安く落とせたアーティストに対してなんとなく勝手な優越感を感じたり、プレミア価格で購入できたライブでは価格分有難がったりしてましたね。
声が出てないことを心配する呟きをウザく感じるのもミュージシャンあるあるなんだろうなあ。

本小説のラストは、人気アーティストの無観客配信ライブチケットをプレミア価格で購入し、そのライブには当然ながら行かないことが最もイケてるというムーヴが主流となるカオスな世界線なのですが、その中で主人公が出演した無観客ライブ会場でスマホをいじっていたマネージャーが声を出ていないことを心配する呟きの主だったというのがオチ。


ライブの価値を決めるのは誰なんだ。
観る側も演る側も皆、自分に自信がないんですよね。