「生殖記」

とある家電メーカー総務部勤務の尚成は、同僚と二個体で新宿の量販店に来ています。
体組成計を買うため――ではなく、寿命を効率よく消費するために。
この本は、そんなヒトのオス個体に宿る◯◯目線の、おそらく誰も読んだことのない文字列の集積です。


異性愛になじめず、かといって自ら行動することはなく、ただただ平穏無事に時間を消費することだけを考えて生きてきた主人公を通じて、彼のち〇こが人間とは何かを解説していく作品。
・・・って、なんだソレ！　朝井リョウ天才かよ笑


すべての生物の生殖器には宿主とは別人格？の意識があるという設定がまずぶっとんでいる。

「共同体や種の拡大・発展・成長に寄与することがヒトとして生きることの最大の意義である。」という古来から脈々と続く人間社会の大前提的なものを押し付けられていることに対するそこはかとない違和感が「しっくり」解説されます。

同性婚を法制化することで多様性を社会が受け入れる、わあ素晴らしい・・・っつうのも、よく考えたら異性愛個体の集団が上から許可を与えてるようなもんだふざけんな、という視点も大いに新鮮。

小説の体ではありますが、これはちょっとした哲学書ですね。


「正欲」ももう一度読みたくなりました。