Grande Violaのブログ一覧

長年の愛人関係のもつれか。男性経営者が死体で発見。逃げた女の行方は? 「埼玉県内の事務所で、会社を経営する男性の遺体が発見されました。男性と内縁関係にあった女が姿を消しており、警察は事情を知っているとみて、女の行方を追っています――」過去も家族も全て捨て、逃げ出した女。出会い系で知り合った男の手引きで顔を変え、新しい名前を手に入れた女は、温泉旅館で働き始めるが……。


花房観音さんらしいエロスと業、哀愁に溢れた作品。

プロローグで感じていたちょっとした違和感が最終章で見事に回収され、哀しいんだけど「なるほどね・・・」スッと落ち着きます。

「うかれ女島」しかりでこういった女性の陰の心情を描くのが上手い作家さんですね。

清子は、暴風雨により、孤島に流れついた。夫との酔狂な世界一周クルーズの最中のこと。その後、日本の若者、謎めいた中国人が漂着する。三十一人、その全てが男だ。救出の見込みは依然なく、夫・隆も喪った。だが、たったひとりの女には違いない。求められ争われ、清子は女王の悦びに震える──。東京島と名づけられた小宇宙に産み落とされた、新たな創世記。谷崎潤一郎賞受賞作。


随分前に買ったまま積ん読になってた文庫。

ドロドロしたエロ話かなと思ったら、実はかなり文学的。
だんだんと皆が狂っていくところや全員が卑劣なところが実にリアリスティック。
しかも主人公の清子が40過ぎのデブって設定がイイ！（・・・当方別にデブ専ではありませんよｗ）

もう18年くらい前の作品なんですけど桐野夏生さんらしいキレと情念が感じられて読み応えあり。
あと読み終えてから知ったんですが、終戦当時の実話（アナタハン島事件）が元ネタだったんですね。ついでに映画「The Saga Of Anatahan」(1953年)をアマプラで見ました。

「東京島」の映画版（2010年）は酷評されてるからWOWOWかアマプラでまた無料になるまで見ないでいいかな。確かに木村多江と窪塚洋介は原作のイメージから乖離しているよなあ。

過去、生徒間の事件を解決したことからメディアに取り上げられ、「鉄腕先生」と呼ばれ、コメンテーターとしても活躍する教師・湯川。彼はある日、自分が女性徒とホテルで密会したという週刊誌報道が流れていることを知る。さらに、「ディープフェイク（ＡＩによる画像合成技術）」で精巧につくられた、湯川が生徒に暴力を振るっている動画もネット上に拡散。出勤停止、テレビ番組の降板、さらに妻子が家を出ていく中、ネット上では湯川に対する大炎上が巻き起こる。果たして、湯川を陥れようとしているのは誰なのか。そんななか、湯川の働く学校ではさらなる事件が起きー。


メディアで人気の中学教師が妬みや恨みによるネット炎上被害にあい、精神的に追い詰められていく様子がリアルにありそうで怖い内容。
周囲の誰ひとりとして信用できなくなっていくところなんて胸キューです。

「正義は勝つ！」というオチは若干鼻白むところもありますけども、ラストの「クリックしたんすかしなかったんすか」という読み手にモヤモヤさせたあとのネタバラシ（エピローグ）はこれもまあ有り得る話かもなあと納得しました。


「東京ホロウアウト」以来の福田和代作品でしたが、即物派にはわかりやすくてイイ！