
八ヶ岳周辺にCX-60で家族旅行に行ってきました。平日からGWを跨いだ日程だった為、空いた道路、渋滞した道路と様々な場面で走ることができました。
世間での散々な言われようのCX-60の目指したかったと思われる点やイマイチだった点を自分なりにまとめて書いていこうと思います。以下、興味ある方には読んでもらえると幸いです。
まず初めに、旅行から帰って来て"目の疲れがほとんどないこと"に、驚きました。帰りは渋滞含めて300km超をぶっ通しで帰ってきたにも関わらず、です。(300km程度は余裕だ、と言われる方もいるかもしれませんが、1人や2人で移動するのと、家族で移動するのはまたストレスが違います)
そして、家族は「景色をいつもより楽しめた気がして快適な楽しい旅行だったし、よく寝れた!気づいたら自宅まで着いてた」だそうです。
私としてはファミリーカーに合格点をあげたいと思います。
CX-60での旅行での運転ではほとんど疲れを感じず(帰宅後すぐにこの文章をまとめていました)、シートや車格の大きさやトルクに余裕があることでの運転のしやすさから身体的な疲労も絶対的に少なかったのだと思いますが、それでもとにかく"目"が疲れなかったのが印象的でした。
目が疲れないすなわち頭がぶれない(左右の揺れが少ない)ことがCX-60の狙った特性にあると思いました。長距離運転で目が疲れない(=目を酷使しない)、そんなクルマがあるとわかったことが私的には嬉しい驚きと発見でした。
次に直進性が優れていると思う一方、同時にそれは独特なものだとも思いました。
人により直進性の良さの感じ方はいろいろあると思います。ドイツ車のようなセンターがビシッとして少しでも舵角を入れることを意識できる仕立てや、フランス車のようにフロントを中心に車体を前方に向かって引っ張ってくれる印象の仕立てなど…(ちなみに私は後者側が好きです)、CX-60はそのどちらとも異なり、"フロントが…"とか"ステアリングが…"とか意識せずに、車体全体がまっすぐ進もうと"視野がフォーカスされるような"直進性です。まるで前方に向かって吸い込まれていくような進み方、と言ったら大袈裟ですかね…。まぁ、"独特"ですね…(苦笑)
キャスター角を出したクルマのステアリング特性は明確にステアセンターがある作りをしている一方で、CX-60はステアリング操作時の舵角0の位置が(クルマが真っ直ぐ走る、すなわち)センタートレースできるというイメージです。
直進するのも曲がるのもステアリングで車体の軌跡を制御するというクルマ側の意思は、徹底し筋が通した(設計した)、と言えるかと思います。私的には(意図しない車両反応がない)澄み切ったステアリングフィーリングはこういうことなのかと理解して乗ってます。
帰ってきて頭を整理すると高速道路、ワインディングでも街中でも、操舵がほぼ一発で決まっていた気がしました。クルマ自体の慣らしも終わり(ODO 5700km)、自身でCX-60の特性を掴めたことで操作するイメージと実際のハンドルの舵角が揃っていたのだと思います。特に高速道路の曲がったエリアでは操舵をバシッと決めて安心して走れたと感じました。
マツダの説明ではリヤ側で直進性を出したといいますが、感覚的には駆動力をかけた状態で安定し真っ直ぐ進む、"2輪車のような"直進性の出し方だと思います。
(もしかすると直進性が悪いという指摘をする方は、無意識にステアリングを操作や無駄な力を入力している方かもしれません。そういう方はステアセンターが明確な方がいいクルマなんだと思います。私はどちらでもクルマ側の思想に合わせられるので気にならないです。)
次は、SKY-D3.3ℓの"燃費の良さ"です。これは誰からも批判的なことは聞かないですし、実際素晴らしいです。
参考に、882kmトータルで約21km/ℓでした。
高速道路100km\h区間で約25km/ℓ、
120km/hで約22km/ℓ、
中部横断道上りで約18km\ℓ、
下りで35km/ℓ、
八ヶ岳付近の市街地走行で20km/ℓ、
ワインディングが12km/ℓ
いや、本当にすごいですよ!
私のCX-60はMHVの走行中のエンジン停止は頻繁に使っており、それが特に違和感なく制御できてるのは素直にすごいと思います。
ちなみに100km/h巡航で約1490rpmです。
そして、余裕のあるエンジン特性はとてもいいと思います。トルクの押し出しが穏やかな出力特性で、当たり前ですが踏むと十分以上に速いです。
もちろん新東名120km/h区間は余裕でしたし(一応、ACCは180km/h設定できました)、ワインディングも十分以上の速さとドライバビリティが提供できてると思います。人によってはもう少し押し出しがあった方がいいのかもしれないですが、そういう方はドイツ車に行きましょう!
次にいろいろ言われてる車両のバウンス挙動(縦揺れ)についてです。
今回の高速道路主体での旅行では私はほぼ意識はしなかったです。しかし、ドラポジを合わせられてない方や根本的に縦揺れが合わない方はかなりキツイのではないかとも思います。
多くの指摘があるハーシュがきついのはその通りだと私も思う一方で、あれを対策するのはかなりやっかいだと思います。水野氏がRX350との比較(YouTube参照)で示したようにブッシュで前後方向に逃すとかなりの具合でハーシュネスが抑えられると思いますが、確実に"CX-60独特の直進性"が犠牲になりそうです。その犠牲となった直進性を補完する為にキャスターを立てたりすると、次はあのステアリング操作時の癖のない(澄み切った?)フィーリングも出ず、競合に対し埋没してしまうと思います。
個人的には、ハーシュのキツさはリヤ側に採用したアルミダイキャストのサスタワーが一因にある気がしてます。アルミサスタワーは音振性の遮断に優れてる反面、メインボディがスチールの場合、その入力を逃す設計に十分配慮する必要がありますが、60のディメンジョンではリヤサスの真上に後席があり(CX-5よりも後席にリヤタイヤが近い)、かつサスの作動軸も後席角度も揃っている設計の為、一際"ガツン"と感じやすいのだと思います。人によって許容できる量に差があると思いますし…。
ただこのハーシュネスの大きさはホイールベースの伸びるCX-80では間違いなく緩和されると思います。急いでない方は、ラインナップが揃ってからご自身に合う車種を検討するといいかもしれません。
フロントのサスタワーは車体構造上隔壁される為、アルミで作る利点がわかりやすいですが、SUV(や3 BOX車)の場合はリヤ側に隔壁がない為、ボディ全体の剛性を出す設計のクルマ(CX-60は剛性感はそこそこですので、すなわち同クラス車でいうとGLCやマカン)でないと効果的に使え切れないのかもしれません。今更不可能かもしれないですがリヤサスタワーもスチールに戻して溶接配置を工夫することでボディ側で音振入力を逃す(いなす)修正、もしくはダンパーロッドで入力方向の変更でも緩和させられるかもしれないですが、それは設計当初の狙いからズレていくのでしょう。
マツダのいう縦揺れには人間は適応しやすいという主張は理解できますが、(この主張の時点で切られた側の方を考えると)少し排他的な考えに感じました…。
それから運転支援関係(特にACCであるMRCCとCTS)は、及第点だと思います。ACCのみで使うのは合格点挙げられますが、ステアリング支援のCTSはスバルや最新版のトヨタ、レクサスには明確に差をつけられてます。(独車御三家勢は言うに及ばず)
私はメインのACCのみの稼働品質であれば十分満足です。
次はこのクルマの真骨頂、ハンドリングです。リヤサスは作動域を制限したイメージがあり硬めな印象ですが、逆にフロントはかなり柔らかめです。しかしながら微舵域からきちんと車体向きが変わり、左右の切り返しの反応も悪くないです。いや、SUVというエクスキューズがなくてもいい動きだと思います。
挙動がバウンス方向に収束する為か荷重移動を感じづらいですが、しなくてもしっかり曲がりますし、荷重移動させると操作系に荷重が乗ったフィードバックもあり、操作に対し素直な反応を示すいいクルマの実感が持てると思います。あくまで飛ばすのではなく、運転における車両反応を楽しむと非常に面白いです。(SUVなのに!)
クルマの特性としては相対的にリヤがしっかりしている為、しっかりアクセルを踏めリヤ駆動らしさを誰でも楽しめるセッティングになってると感じます。フロントが柔らかめなのは、このリヤ駆動感を出したかったのかな?と思います。
一方で、ステアリングフィールについてはいくつか不満点もありました。基本的には常にフィールが一定で安定したフィードバック(サスからの力学的な反力も感じられる)があり、剛性感もあります。反面、上り勾配ではハンドルから伝わるタイヤの設地性が薄く感じ、舵角をつけてタイヤを曲げている、と感じにくいところがあります。そしてフロントタイヤの外側で踏ん張っている印象が強く、コーナーや曲がり途中で遭遇するバンプや凹凸の処理は課題があります。フロントサスが柔らかい為か、特にコーナー外側のタイヤでギャップを踏むと車体姿勢が乱れやすく、車体の動きが落ち着かないです。重心高の高いSUVの妥協点の高さとしては素晴らしい出来と言えると思います。
しかしネガを差し引いても、どんな道でも操舵が一発で決まる(ステアリング操作に足し引きがない=修正舵がほぼない)ハンドリングが常に垣間見え、それこそがマツダがCX-60を始め第7世代商品群で表現したかった世界観なんだと私は思います。
デジタル設計手法(MBD)が日本の自動車業界で進んでいると言われているマツダだからこそ、完全新作のCX-60のこの完成度の高さ(私としては致命的な欠陥はないと思う)であると同時に、MBDナシではとても到達し得なかった世界だとも思います。
確かにリアルワールドでの合わせ込みが必要だったきらいも見られますが、素質込みで十分以上の出来だと私は思ってます。すでにCX-60の散々な言われように、肩を落とした方(私です)や悔しい思いをされた方(私です)もいるかもしれないですが、それを含めて楽しみたいと思います。(強がり😂)
まとめると、"マツダがハーシュネスを許容してまで、作ろうとした理想のクルマとはどういうものか"という池田直渡氏が書いたことの通り、マツダが示そうとしたラージ商品群の世界観(SUVで示さざるを得なかった会社側の思いも含め)を、CX-60を始め今後出てくるモデルに同意できるか、それらの特性に自身が適用(しようと)できるかという点が、今の世の中の散々な言われている傾向の強いCX-60の批評の根源にあるのだと思います。
"マツダだから""日本車だから"とか先入観抜きで、食わず嫌いをせずに、ぜひご自身で体感された方がいいと思います。クルマ好きとしては、こんなに興味深いクルマはないのではないでしょうか。(しかし試乗では利点がわかりづらい…)
きっとCX-60を試乗してわかった気になってる自称クルマ通はたくさんいますが、そういった方に合うクルマは他社にもたくさんありますので気にしないのが正解です。(低級メディア、ヒョウロンカも含む)
私は今後のコモディティ化が進むであろう世界の自動車マーケットへのアンチテーゼの一つとして、マツダのラージ群を応援していきたいと思います!
最後まで目を通してくださった方、ありがとうございました✨