
R30の前期型(GT・RS系)には3種類のテールランプが存在すると言われています。その違いは見た目でも分かる程で、リアビューの雰囲気までも変えてしまうと言っても過言ではありません。よっぽどの不具合やリコール等で部品が変更になったのなら正当な理由ですが、どう見ても色合いのみの変更にしか思えないんです。前期型の間にいったい何が起こったのでしょうか?
部品番号も変更されているので、日産の社内でも明らかに別物として認識されている事が分かります。
3種類存在する部品番号は以下の通りです。
タイプ①:26554-14S00(8108-8110)
タイプ②:B6554-14S00(8110-8112)
タイプ③:B6554-14S05(8112-8308)
注:全て右側
しかも度重なる変更が全て昭和56年内って言うのが驚きです。変更しまくったお陰でタイプ①とタイプ②はそれぞれ僅か2ヶ月間しか採用されていません。以上から昭和56年10月にデビューしたRSにはタイプ①が装着された車体は存在せず、昭和56年12月以降に製造された前期型は全てタイプ③が装着されている事になります。また、タイプ②のB6554-14S00は後対応部品番号がB6554-14S05となりますので、後にタイプ③と部品統合されているようです。
R30の販売が開始されたのは昭和56年8月18日ですので、採用期間だけで見るとタイプ①が最短となります。でも製造は先代の販売中から開始されていたと思われますので製造期間として最短なのはタイプ②である事が推測されます。
手持ちの前期型テールランプを引っ張り出してみると、色が違う3種類が出て来ました。
これは通称「ブラックテール」と呼ばれている物です。本当に真っ黒でドーナツ周囲のイチマツ模様も殆ど見えません。最初期にのみ採用されていたと言われています。
裏側には何かの数字が印字されています。最初の数字がハッキリと読み取れませんが、8.12.5と書かれているように見えます。製造年月日が分かりませんが、これはタイプ①なのでしょうか?
こちらはブラックテールに比べるとやや紫がかっているのが分かります。ドーナツ周囲の濃い縁取りとイチマツ模様が確認できます。勝手に「紫テール」と命名しました。
裏側の印字は56.9.5とあります。昭和56年9月5日の製造を意味すると仮定した場合、タイプ①に当てはまります。じゃあこれってブラックテールなんですか??
それ以前にタイプ①が本当にブラックテールなのかどうかも分かりませんし、製造年月日と採用ー廃止の期間が合致するかも微妙なところですよね。
2つを並べてみます。左側がブラックテール、右側が紫テールです。コーヒーゼリーとぶどうゼリーくらいの色の違いがあり、こうして比べてみると一目瞭然ですよね。各部をよーく観察してみても、ブラックテールが日焼けで紫テールになったとは考え難いんですよねー。
この2つのテールランプは前期型ハッチバックの解体車から外した物です。左右で裏側の印字や色合いが違う物が装着されていていた事から、どちらか一方を交換している可能性が濃厚です。今となってはその車体の製造時期も不明ですので、どちらが製造時から装着されていたテールランプなのかも分かりません。
そして現存数としては最多と思われるタイプ③です。昭和57年7月製造の ことぶき号にはこのテールランプが装着されています。ドーナツ周囲の濃い縁取りやイチマツ模様がよりクッキリ目立ち、イチマツ模様の角に色の濃い部分が中途半端に存在するのが特徴的です。中に水でも入ってるんじゃないかと思いますよね。
このテールランプには60.7.31とありますので昭和60年7月31日の製造とすると、後期型になっても製造され続けた物である事が分かります。R30のバン以外の部品はいつ頃まで製造されていたのでしょうか?
参考までに、ことぶき号の助手席側
運転席側です。タイプ③ですよね。
裏側の印字を確認すると、助手席側が57.7.12で運転席側が59.9.20とありました。運転席側はトラックにぶつけられて板金していますので、その際に交換されています。両方ともタイプ③なので左右で色合いに違いはありません。
また、ドーナツ部分に変更は入っていないようで、IKI 4277 JAPANの浮き文字は全て共通です。リフレクター部分も同じようですね。
そしてドーナツの中央部分に裏側から取り付けられているアルミ製のプレートですが、60.7.31と印字のある物だけがそれを固定するネジに緩み防止かコーキングのような処理が施されています。これも改良点なのかもしれませんね。
それにしても、あのイチマツ模様部分の色が違う原因は何なのでしょうか?前期型のテールランプは非分解式ですので、裏側のネジを外しても2枚におろせません。
因みに、前期型のパーキングランプはそれ専用の豆電球が光りますので外側のみ電球の差し込み口が2箇所あります。それでもストップランプやスモールランプ点灯時には綺麗に丸く光るように、オフセットした分を考慮して電球を斜めに取り付けてダブル球の光源を中心に配置しています。意外に凝ってますよね。
また、前期型テールランプのメッキ線はステンレス板をプレスして作られています。後期型のようにプラスチックをメッキした物とは異なりますのでメッキ錆びが発生しにくい構造です。
スタッドボルトの固定方法もしっかりしています。後期型のようにローレット加工をしたボルトを打ち込んであるような製法と違ってスッポ抜ける事もありません。
そしてテールランプの裏側に取り付けられているトリムを固定するステーなんですが、ブラックテールだけが肉厚なんです(写真右側)。厚さにして倍近くあります。頑丈過ぎるって事で途中から薄くされたのでしょうか?それとも厚いのはハッチバック専用品なんて事は??そうなってくると紫テールが交換された側って事に???
仮説の上に仮説を立てているので訳が分からなくなってきました。
少し脱線しましたが、イチマツ模様の裏側を確認する為に周囲のゴムをめくってみます。
ブラックテールです。表面から見るとあんなに黒いのに、素材としては濃い紫色のようです。
紫テールです。ブラックテールに比べると色が明るいですね。
タイプ③です。あれ?シルバー塗装されていますよ!
何と、タイプ③は裏側がシルバー塗装されていました。これによって紫テールよりも更に明るい紫色になってイチマツ模様がよりクッキリ見える訳ですね。そして角の部分は素材に厚みがある場所の色が濃く見えていると想像できます。そしてこの空間には外部から水が浸入しますので裏側はかなり汚れています。
しかし、何故に途中から裏側がシルバー塗装されたのでしょうか?ブラックテールと紫テールが別々に存在すると仮定して、勝手にストーリーを考えてみました。
精悍なブラックテールでR30シリーズをスタート
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多彩な車体色の中で、ブラックテールだと黒過ぎて似合わない色がある事が判明
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少し色を薄くしてどんな車体色にでも溶け込むように変更(紫テールの誕生)
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色を薄くした事でパッキンの隙間から裏側に入った水滴や汚れが表からも見えるようになってしまった
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裏側をシルバー塗装する事で汚れが透けて見える問題を解決(タイプ③の誕生)
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特に不具合の報告は無いので前期型のテールランプは完成
全くもって勝手な解釈ですが、こうなると紫テールを装着された車体だけが機能的に貧乏クジを引いている事になりますよね。あくまでも紫テールが本当に存在した場合の話しですが。
変更に変更を重ねて最終的には裏側をシルバー塗装して安定供給となった前期型テールランプは昭和58年8月のマイナーチェンジをもって廃止されました。各部の作り込みの良さから、製品的にはかなりコストが掛かっている事が分かったものの変更点の核心に迄は迫れませんでした。またタイプ②はどんな造りなのでしょうか?そしてブラックテールはどのタイプに属するのでしょうか?謎は深まるばかりです。
何故こうなったのか今や誰にも分からない・・・。何故か3種類も存在する、謎がいっぱいの前期型テールランプでした。