
遅ればせながら、308ディーゼルに試乗する機会を得ました。今回もタイヤのインプレをメインにレポートする予定でしたが、後述しますがタイヤがスタッドレスでアレでしたので、車のインプレを中心にまとめてみます。ガソリンモデルとの違いは? ディーゼルエンジンのフィールは? 上手くお伝え出来るかどうか、、、
PEUGEOT 308 Allure BlueHDi プジョー308 アリュール ブルーHDi
簡単に車の説明です。5ドアハッチバック。FWD。1.6Lディーゼル可変ジオメトリーターボ 120馬力、トルク300Nmを1750回転で発生。プラットフォームはEMP2。ATはアイシンAW製 6速EAT6。サスはお馴染みのフロント/マクファーソンストラット リア/トーションビーム。車重は1340kg。私が調べたところ、ダンパーは内製では無く、KYB製(たぶん欧州生産) タイヤサイズ205/55R16(エナジーセイバープラスがOE装着の場合多し)
私的に一番好きな角度。 サイドを貫くコンベックスした2本のキャラクターラインがテールランプに食い込む様な凝った造形。 リアのライオンマークとプジョーロゴの間に明確なピークが有り、のペーっとなりそうなヒップラインに適度なテンションを与えている。 実はかなりハイデッキだが、テールランプ下に入る2本のラインが、間延びしそうな下半身を引き締めている、と感じる。
タイヤは年代モノのBS ST20 タイヤ館などの専売品。パターン、構造はMZ-03と同様とのこと。バリ山ですが、製造は2808となっており、、、今回はご厚意での試乗ですので多くは語りません。こう見ると最近の純正ホイールはスゴいですね。繊細なデザインもさることながら、2トーンになっていて、表面の切削された部分だけを綺麗にすれば、手の届きにくい奥のスポーク/リム部はダークに塗装されているので、忌々しいダストが目立たないオマケ付き。
「プジョー、戻ってきたって感じだね〜!」
今回は特に長文になりそうなので、ここで先に結論めいた事を書いてしまいます。プジョーが無事、以前自らが築いたポジションに復帰しました。
205迄遡らなくても、306、106、406sportなど、言葉変ですが、以前はプジョーに溢れていた、普通に運転の楽しい普通のクルマ達。
2017年の今、運転の楽しい実用車とは?という問いに、最も明確な答えを出せるのがこの308ディーゼルです。最高の実用エンジンと、体幹を鍛えたアスリートの様な無駄無くバランスの良いプラットフォーム。苦手なものは無理せず世界中から最適な部品を調達。
正直この先発展性のある技術は少ないですが、内燃機関時代の最後に登場した、20世紀の技術でつくれる実用車の最終形ともいうべき完成度。清水和夫さんがDSTで放った一言、「プジョー、戻ってきたって感じだね〜!」プジョーを愛する全ての人に万感の思いを込め、これを最高の賛辞として引用させて頂きました。
それではこの後、詳細のインプレをしていきます。よろしければ最後までお付き合い下さい。
今回の試乗は生憎の雨。基本的に雨の試乗はNGですね。ノイズ、低級音、乗り心地の悪さなど、七難隠す魔法の雨(笑)。それではスタートします。ごく低速時、ステアフィールに若干の違和感を感じるも気のせいか?程度。トルコンステップATはやはりスタートがスムーズですね。先ずは気になるエンジンの印象からいきますか。
拍子抜けするほど好印象なエンジン
回転フィール、発進直後は若干重い気が。やはりガソリンエンジンとは違いがあります。プジョーのEP/EBなどはデッドスムーズともいえるフリクション無い見事な回転だが、それに比べると、回転のビートを感じます。ただこのビート、息遣いともいえる有機的なフィールで全く嫌味無し。
ちょっと転がればジワーッとトルクの波が押し寄せて、もう細かいことは気にならない(笑) でも決して下品ではなくオトナの余裕的な感じ?。トルクの出方に唐突感無く潤沢に供給され、言い古された感あるが、大排気量ガソリンNA的な抱擁感。また、
アクセル操作に対するトルクの付きがとにかくリニア。自然なパワーデリバリーが気持ちいいですね!これを知った後では、今迄ナチュラルだと感じていた昨今のガソリンダウンサイジングターボが、化学調味料風味に思えます。
さて、身構えていた
ディーゼル特有のノイズ、振動ですが、全く気にならず。コレ誇張でもなんでも無く。拍子抜け。ただ、音としては快音では無い。前からプジョーのエンジン音はガソリンでも音色と呼べる様なものでは無かったので、こんなものです。
以前マツダの旧CX-5のディーゼルを試乗しましたが、それに比べると上質感、音の項目でプジョーに一日の長がある様に思います。あちらはトルク400Nm超ですので、爆発的な加速ですが、回転、音質など全体のフィールがラフで、乾燥気味なカサついた音が耳につきました。特にワインディングで鼻先の重さも気になりましたね。あ、余談でした。
総じてEB1.2Lガソリンターボに比べて、違いはあれどネガな部分殆ど無く、良い部分のみプラス!豊かなトルクと自然でリニアなフィール、多分燃費upも漏れ無く付いてくる優れモノです。欧州ではこれがデフォですからね。
実用エンジンと呼ぶには余りに表情豊かで好印象。ユーロCOTYも納得です。
EMP2の実力は?
さあ、好印象なエンジンに続いてシャシーの感触はどうでしょうか。以前試乗したガソリンエンジンのシエロは、車体の軽さを感じる様な軽快感が全体を支配していた印象でしたが、この1.6Lディーゼル搭載車は軽快さよりも重厚さを感じます。単体で乗っている分にはほぼ気になりませんが、比較すれば、ガソリン車より、フロントが重い感じもします。この辺りが、重厚感にも繋がっているかもしれません。もう一つ、先に述べた今回装着のスタッドレス、お察しの通り、柔軟性が失われている状態です。これもフィールに影響大だと思われます。
ガソリンとの比較はこの辺りにして、まず小径ステアリング、複数回の試乗のみの私ですが、完全に慣れました。というか、カラダが無理矢理機械に合わせる感じは無く、いろんな意味で理に適っています。メーターが隠れない範囲をキープしながら、チルト&テレスコ、シートを上下前後させ、しっくりくる位置を探します。シートバックの角度も含め、たっぷり調整幅があるので、よほどの特殊体型でない限り、無理ないドラポジがとれる筈です。これをいい加減にやると、どこかに無理がかかり、BADな評価になってしまいます。くどいですが、この作業を念入りにしてください。これが決まると、このシステムは高評価しかありません。
電動アシストでもかなりのフィールがあります。ノーマルモードでのアシスト量も適度で、唐突な変化も少ない。ステアリングレシオも、速すぎず遅すぎずナチュラルですね。ステア操作と実際の挙動がリニアで、良い意味で存在感を忘れますね。
こんな感じでメーターが見えるようにドラポジをセットできればしめたものです。ただ、メーター自体ちょっと小さいです。見づらい。反時計回りのタコメーターも含め、ひねくれ者のフランス人テイスト全開ですが、このコンセプトは理に適っている部分も多いですね。
以前のPF1/PF2系は、居住性を高めるためミニバン的なコンセプトを導入、特に上方向に車体を拡大しました。307からスタートしたこのトレンドは、多くのフォロワーを生み、B/Cセグの車高は一気に高くなりました。当然車高が高くなれば重心も上がり、コーナーではロール量も多くなります。それでもプジョーは、クラスをリードする操安性と以前からの売りであったニュートラルステア特性とフラットライドに拘った。
結果、それを意識するあまり、低速域や不整路ではアシが突っ張り、チョッピーなライドフィールになり果てました。また、リアサスをトレーリングアーム+板バネから、一般的なトーションビーム+コイルに変更、ボディ剛性を飛躍的に上げるも、それらを上手く消化できず、そのしわ寄せの多くが乗り心地を直撃。皆が猫足ではなくなったと嘆いたのは、この一連の顛末の結果だけを捉えた残酷な出来事でした。
ドイツ車のようになった、、、と当時言われていましたが、ドイツ車と同様のパッケージングなのに、最初からドイツ車+αを狙ったフランス人の強欲さ(笑)が、この後のプジョーの低迷に繋がっていきます。。。
いやー、突然近年のプジョー論的な話になってしまいましたが、何が言いたいのかというと、EMP2となり、前プラットフォーム時代の無理が解消された事で、プジョー本来の美点が引き立ってきたのです。郊外からワインディングへ向かうと、その良さが一層明確になります。
PF2(307/旧308)もシャシーの限界はそこそこ高かったのですが、重い上屋を無理矢理抑え込んでいる様な印象がありました。この新308は実際の重心とロールセンターが近い感覚で、コーナリング時も自分を中心に旋回している様な自然な挙動。理想主義的なフラットライド感は多少なりを潜め、ノーズが磁石に引き寄せられる様にインを向く不思議な感覚は薄らいだものの、
終始安定したニュートラル〜弱アンダーなステア特性で、素人が振り回す分には限界は遥か先です。
安定しすぎて面白くないかといえばさにあらず。トルクフルでピックアップの良いエンジンを存分に使いきれる運動性能。意図した様にクルマが動くってキモチイイですね(笑)。ワインディングを駆け上がるとクルマがグッと凝縮された様な感覚。
末端まで神経が行き届いてクルマの挙動がとても掴みやすく、運転にリズムが出てきます。試乗車で、雨の中で、スタッドレスですが、かなり攻めてしまいました(笑)。率直に言って、ファミリーカー、しかも一般グレードの挙動では無いですよ、コレは。気分は完全に上位のスポーツグレードですね。この感覚を人はスポーティと呼ぶのではないでしょうか!
いやはや、途中から頭の中真っ白になり、夢中でワインディングを往復してしまいました…少しクールダウンして各部を観察します。
今や無くてはならないパートナー
日系サプライヤーの2社は、今回もいい仕事をしています。まずアイシンAW製EAT6。プジョー用ATもこれが第3世代。市街地の所作は余裕でしょう。全く違和感無く黒子に徹しています。AL4はこれが一番苦手分野でしたね〜。郊外からワインディングにかけても、ディーゼルトルクの助けもあり、余程の使い手でない限りシフトアップは機械任せで十分。減速時ダウンシフトも上手に決めてくれますが、足りない時はパドルをちょこんと弾いてあげればOK。レスポンスもトルコンATとしては申し分ありません。
続いて、多分KYB製のダンパー。プジョーは元来自製ダンパーに拘り、独特のライドフィールもそれの成せる技という定評でした。ただしそれが成立していたのは、ユルい車体、横剛性の低いトレーリングアーム、軽い車重、低重心という、クルマ自体でもショックをいなし、サスに負担がかかりにくい好条件が重なった偶然の産物であったと考えます。現代のクルマに於いて、安全面の配慮から高剛性化とある程度の重量増は避けられません。流石にプジョーも自製では対応出来ないとだいぶ前から気付き、407の時代からKYBを採用しています。今回3シリーズ初登場となった訳ですが、そこは世界のカヤバ!
自製のネガである低速/低負荷時の跳ね返る様な挙動を抑え、自製の美点であるワインディング/高速域のフラット感も八割がた再現している様に感じます。特段トロける様な乗り心地だとか、猫足復活だとか騒ぐようなものではない。これも今試乗のキーワードでもある自然なフィール、ということに落ち着くのか。まぁ、他社のクルマに似たライドフィールになったという意見も確かに頷けますが。また余談ですが、スバル採用のKYBスタブレックス・ライドでしたっけ、あれも良いですね。アウトバックの試乗時、何が良かったかって、一番はサスでした。
トゥ・マッチなスポーツモード
プッシュ式スターターの横に鎮座するスポーツスイッチ。
実は1.2Lガソリンターボを試乗時、スポーツモードはさほど違和感なく受け止めました。例のスピーカーから出る疑似音も含めて。しかし今回の1.6Lディーゼルに関しては、良い印象は持ちませんでした。まずステアフィール。乱暴に言うと重くなるのですが、ノーマルモードで感じる豊かなフィールが消え失せます。つぎ擬似音。あれはやり過ぎですね。ドロドロ、マッチョなV8エンジンの様な音。これは正直興醒めです。
運動性能のまとめ 圧巻のバランス、素性の良さ
ここまで、ドライブフィールを中心に書いてみました。1.2ターボの時も感心したものですが、この1.6ディーゼルバージョンは完全に焦点が合った感じで、これがベストバイと断定できる快作です。全体を通して一貫しているのは無理なく自然体ということ。整合性のある設計からくる基本性能の高さによって、無理せず狙い通りの動きを実現している余裕を感じます。フォード・フォーカスの販売が終了した今、
動力性能、ダイナミクス性能、そして運転の気持ちよさという観点で評価した時、実用Cセグ車という域には収まらない、各メーカーB/Cセグのホットハッチ勢に肉薄する実力です。間違いなくセグメントトップに近い1台ではないでしょうか。長文になりましたので、使い勝手やコスト面、ライバルとの比較や今後の動向などは
その②でまとめることにいたします。
この続きをお読みになりたい奇特な方は以下へどうぞ
つまみ食いカー・インプレ PEUGEOT 308 Allure BlueHDi その② 内外装デザイン編
つまみ食いカー・インプレ PEUGEOT 308 Allure BlueHDi その③ 安全装備/経費編
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試乗 | 日記
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2017/02/13 11:25:03