
少し前、スポーツハッチ、ホットハッチと言えば、1.6L自然吸気エンジンというのが相場でしたね。所謂テンロクNAですね。プジョー106S16という名車もございましたし、スイフトスポーツも素晴らしかった。トゥインゴRSもありましたね。何れもMTとの組み合わせが前提でした。しかし、身近なところに伏兵がおりました。そして、その良さに気付くのが遅すぎたかも。。。という訳で、今回と次回の2回に渡って、その伏兵2台<揃ってテンロクNA、しかもステップAT>のインプレです。ちょろっとタイヤのインプレも織り交ぜてみます。先ず今回はこちら。
VW POLO(9N) 1.6 SPORTLINE フォルクスワーゲン・ポロ(9N) 1.6 スポーツライン
まずはざっとこのクルマのスペックから。9N型ポロに追加されたグレードで、自然吸気1.6リッターDOHCにたぶんアイシンAW製の6ATを組み合わせます。105ps/5600rpm、15.1kg・m/4500rpmという、数字上は1.6NAとしては標準的なパワーユニット。車重が1180kg。純正サスペンションがちょっと奢っていて、ザックス製ダンパー(GTI用と同じ?)+ローダウンされた強化スプリングのコンビ。新車時にはファイアストーンのファイアホーク700というタイヤがOE装着されていました。サイズは195/55R15 85Vです。
マイレッジは62000キロ程 シフトインジケーターが死んでいます。。。
この車両、実は10年以上我が家にある、家人(母)の愛車でございます。私、過去何度も乗っているんですよ。しかし今迄は、今回程好印象を抱いたことが無かった。不幸な出来事ですね(笑) 新車時の印象は、「アシ、硬いなぁ~、タイヤ良くないなぁ~」といった感じで、おばさんの買い物車としてはちょっと、、、と感じました。しかし、案外運転好きの母は最初から物凄く気に入っていたのですが。シートもスポーツシートが標準ですが、当時私には合わず、腰がすぐ痛くなりました。(余談ですが、VWのシートは今でも一番ベーシックなものが好みです。トレンドラインなどに付いているヤツ) イタリア製のファイアストーンも、うるさい、カタイ、粗いフィールの三重苦で、今思えば、クルマの良さをかなりスポイルしていたと感じます。
殆どヘタリも無く新車時の張りを保っているスポーツシート 私には合いませんでしたが、つくりのしっかりした立派なもの
次にしっかり乗ったのは、タイヤを履き替えた時。しかし私にタイヤの選択権は無く、父の○○の一つ覚え(オヤジ、ごめん)で、エナジーセイバー+に。。。セイバー嫌いの私はそれだけでネガティブなイメージ満載で、高評価抱かず。(実際、履き替えてしばらくは、セイバーの悪癖ばかり目が付き、良いものではありませんでした)
現装着タイヤは2013年製のエナジーセイバー+ 製造国はスペイン 溝残量は約5ミリ
そして今回になる訳ですが、一人で存分に乗ってみると、アレ~どうして、驚くほどいいクルマだったんです(笑) スタートからしっくりなじむトルコンAT。実に滑らかです。そして電動油圧パワステ。このクルマのそれは、操舵力、反力が軽めに設えてあります。軽いのですが節度感あり、下品にならない程度に十分なフィードバックがあります。とてもリニアな反応で、スッと切り込んでも、素直にハナがインを向きます。意図したように動くクルマって、実はなかなか少ないんですよね。
セイバー+も、撓んだり戻ったりという無駄な挙動が幾分鳴りを潜め、忠実な黒子に徹している感じ。207にOE装着のセイバーも、年を重ねるにつれ落ち着いたフィールになっていった気がします。しかしこれほどエイジングが必要なタイヤって、、、まあ、ライフがとっても長いタイヤですので、経年変化を楽しめということでしょうか。前々から好印象の横方向のグリップ、少し荷重を乗せて曲がることを意識すれば望外に粘り強く路面を捉えます。ただ、やはり直進安定性は良くないタイヤですよね。路面の凹凸を上手くやり過ごせないというか、一発で収まらず、おつりが多いです。ダメダメなファイアストーンでも、直進性はもう少し良かった気が。ノイズはそれほど気になりませんでした。
サス良し、AT良し、エンジン良し
さあ、ここからはキーボードを打つ指もノッてきます。純正のザックスダンパー+ローダウンスプリング、いい仕事をします。さすがに62000キロですので馴染み過ぎというか、ちょっとヘタリが出ていそうな感もありますが、初期のカタさの角も取れ、コーナーでも適度なロール姿勢を保ち、グッと縮んで堪えながら戻り側が早すぎない絶妙なダンピングです。フリクション感少なくスムーズな足の動きのせいか、その足を支えるボディ剛性の高さが一層感じられます。内装、インパネからは多少カタカタ低級音はしていますが、ボディからの異音は少なくヤレ感薄い。このあたりはさすがVWですね。
ワーゲンらしいシンプルなインパネ周り ステアリングの太さも適度
デキる足回りに気を良くし、郊外路からワインディングを目指してペースアップしていきます。アイシンの6ATですが、オートモードのままでも、6000回転までしっかりシフトアップせず回してくれます。シフトショックもほぼ無し。かといってズルズルでもない。制御が巧みで今回マニュアルモードは使いませんでした。
次、エンジンですね、コレもスムーズですね。磨かれた天然水の様な澄み渡った回転フィールでビートはあまり感じません。6万キロを経て、回りたがりのエンジンに育っていました(^ ^) シュンシュンと、自動シフトアップの6000迄、苦しい素ぶりは一切見せず軽々回しきります。切れ味抜群。一昔前のVTECエンジンは例外としても、実用ユニットでこれだけ回ればお見事。但し、所詮は105馬力のエンジン。正直、特に下は力感薄いです。マックスパワー発生が5600回転はいいとして、ピークトルクが4500回転ですから、結構高回転型です。上が伸びるので、ついつい回したくなりますが、ATも6段あり細かく刻んでいるので、6000まで引っ張っても、思ったより速度は乗っていない。安心して楽しめます。
という訳でこのクルマ、完全にシャシーファスターですね。連続するコーナーでも、昨今流行りの、フロントは過度にアジリティを高めてグイグイ曲がらせ、リアがどーんと座って破綻させないという味付けではなく、素直にハナは入っていくが、基本線は弱アンダーで驚きはない。その範疇の中で、前後の挙動を上手くバランスさせている。渋い大人なセッティングですね~。あ、ブレーキもコントロール性良く、ストッピングパワーも十分でした。ネガティブな面も少しありまして、旋回中に路面のアンジュレーションに遭遇するとそれなりに姿勢が乱れます。ストロークを使い切ってしまうというか懐が浅いというのか。大きな問題ではありませんが、プジョーに乗っているとこの辺り、執拗に路面捉えてフラットに保ちながら、上手くやり過ごしますからね。
味わい深く清々しい印象も伴う、いいクルマでした。一見フツーのクルマで、しかもATですが、運転を存分に楽しむことができました。よく回るNAはやはり気持ち良い。手に余らない感じも実に良い。今回なんで改めて乗ったのかと言えば、このクルマ、惜しまれつつも、退役することになったからでした。パワートレイン系は絶好調ですが、電装系や塗装など、修理箇所多岐にわたり、修理せず乗り換えることに決めたようです。いやー、惜しいですね!もう少し早く良さに気付いていたら、コレを譲り受けていたかもです。タイヤはPS3あたりを履かせると良さげな感じ。あーっ、勿体無い。
このポロスポーツラインの余韻も残る中、もう1台のテンロクNA+AT車に乗り、え、なんでー!?と、感嘆、困惑した話は次回
その②と致します。
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試乗 | 日記
Posted at
2017/07/07 23:37:43