
©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
ユーフォニアム担当の新1年生です。
好きな色はピンクと赤。赤い小さなリボンを身に着け、マウスピースや水筒はピンク色のものを使用しています。
西中出身。中学の時は吹奏楽部で3年間ユーフォニアムを担当していました。ちなみに西中はコンクール銀賞レベルの学校でした。
石原監督によると「あざとい子」と表現しています。が、無自覚であざといという訳ではなく、あざとさを演技していると思います。きちんと上下関係をわきまえた、基本的に真面目で素直な子だと思います。頭の回転が早く話の先を読みますが、自分にあまり自信が無く周りの目を気にする所があるように思います(気にするようになってしまった)。入学初期の久美子に似ている所があります。趣味が情報収集ですから、部内の人間関係など色々な事を知っています。”地獄耳”ですね。

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奏は中学の時、先輩が落選する代わりにコンクールメンバーに選ばれ、金賞を取ろうと使命感と責任を持って猛練習をして頑張りましたが、コンクールの結果は銀賞に終わり「こんな事だったら先輩が吹けば良い思い出になったのに」と周りから言われてしまいます。吹奏楽部なんて、皆が納得できるかどうかが重要で、努力や結果なんか何の意味も無いと自分自身に言い聞かせ、一歩引いて相手の顔色を見て振る舞うようになりました。全ては”自分を守る”為です。過去の自分の努力を全く認められず、擁護する仲間もいなかったのか、そうするしか無かったのかもしれません。根が真面目なだけに、歪んだ思考と行動をとるようになってしまったのだと思います。

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みどりが「奏ちゃんは甘え上手な飼い猫」と表現しています(猫舌ですし)。頭の回転が早く会話の先を読む。相手が何を要求しているのか察知し、先回りしてその答えを提示する。でもそれが歪んでいたりします。
奏は入学当初、久美子が「響け!ユーフォニアム」を吹いている様子をのぞき見ていました。自分と同じユーフォ担当の久美子と会ってシンパシーを感じ、久美子が先輩なら中学の時のようなひどい目には合わないだろうと思って入部しようと決めました。
でも、奏の無自覚に近い心の奥底では、”本当の意味で”久美子が救世主になってくれるかもしれないという期待もあったのではないか?と思うのです。
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サンフェスの時、チューバ担当の1年生・鈴木美玲ちゃんが周囲を遠ざけて自分の殻に閉じ籠もり、とうとう吹くことができなくなりました。頑張っているのに周りから評価されない と、かつての自分と重ねて美玲に寄り添います。(しかし久美子はそれを明確に否定しています。)

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サンフェス後に「美玲は間違っていない」の奏の言葉に、久美子は「美玲自身が変わりたかったんだ」と言っています。しかし奏は素直に受け入れることが出来ません。


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北宇治吹奏楽部でもコンクールメンバー選出の為のオーディションが行われる事になりました。過去の苦い経験から、あざとく媚びてでも周りから好かれようとする保身に入った奏は、メンバーから外れる為にわざと下手に吹く事を決めます。常に周りの視線を気にして自分というものが確立できず不安で仕方がないです。
奏は、本当は夏紀の事が好きなんだと思います。夏紀はユーフォっぽい子です。義理人情に厚く、自分の心ごと人に捧げてしまうような優しくてもろい所がある不器用さがあります。そして奏は不器用な人が好きです。

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奏は夏紀が一生懸命楽器の練習に励んでいるのを片隅から見ています。でも過去のトラウマから自己保身が優先してしまいます。夏紀の事が嫌いにならなければ、オーディションでわざとヘタに吹くような先輩に対してとても失礼な事をして夏紀にメンバーを譲って自分が落ちるような事をする事ができません。久美子(黄前相談所)とレストランでの会話で、久美子が「夏紀先輩は奏ちゃんの事を認めてるんだよ」と言いますが、「困ります」と奏が返事をします。夏紀に対して失礼な事をしようとしているにも関わらず、その夏紀から楽器が上手と認められ頼られるのは申し訳ないという思いから出た言葉だと思います。

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夏紀に対して大変失礼な事は十分承知の上でオーディションでの行動に出てしまいます。夏紀から「アンタの本音が聞きたい」と問われ、しばらく考えた後、「あなたが3年生だからですよ。ヘタな先輩は存在自体が罪です」と言い放ってしまいます。雨の中を立ち去った後呆然と歩いていたのは、夏紀に対する申し訳ない気持ちも入っていたと思います。自己保身の事もあり、どうして良いか分からなくなってしまったんだと思います。


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久美子に対しても「人畜無害ですって顔してるくせに人の心にズカズカ踏み込んでくる」「みんなそのボケっとした顔に騙されてつい本音を言っちゃう」と、奏は攻撃的な言葉を吐きます。でも奏の心のどこかで久美子と夏紀に助けを求めているようにも思えるんです。二人に奏は甘えたい思いがあるとも言えると思います。
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久美子はあすか先輩の”処世術で動く人間に相手は本音を見せない”という言葉を思い出し、このままでは奏を救えないと気付き、思いの丈をぶつけで説得します。

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かつて久美子自身も中学時に先輩を差し置いてコンクールメンバーに選ばれ、結果先輩が卒業するまでずっと無視され続けたトラウマがありましたが、去年の北宇治のオーディションで夏紀に救われた経験があります。深い傷を負った奏を癒せるのは久美子しかいません。奏の過去に何かあった事を察知した久美子は自身が何とかすべきだと考え、夏紀に「私に行かせてください」と奏の後を追いかけます。

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「努力しても必ずしも実るとは限らない。むしろそうでない事の方が多い。でも、やるしか無い。それは無駄では無いと信じてる。」…病気で吹くことを諦めざるを得なくなった加部ちゃんの事をはじめ、これまで経験してきた先輩としての久美子が伝えられる事を、思いっきり奏にぶつけます。「奏ちゃんを救いたい」。

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人間の欲求にはマズローの欲求5段階説(レベル1:生理的欲求、レベル2:安全の欲求、レベル3:所属と愛の欲求、レベル4:承認の欲求、レベル5:自己実現の欲求)というのがあります。低次の欲求が満たされれば高次の欲求へ到達するという理論です。
高校生で吹奏楽部に所属しているなら、大体第1~3段階は満たしています。親元で生活しているので、衣食住の心配はまずありません。吹奏楽部に所属し、楽器と演奏の事だけに集中して活動できる期間です。その中で自分が認められたい(承認の欲求)、もっと上手くなりたい(自己実現の欲求)という欲求は自然な事です。

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奏自身が頑張りを評価されずそこに囚われてしまっていました。「頑張るって何ですか?」「上手くなってどうするんですか?」と久美子に問います。久美子は「奏ちゃんは頑張ってきたんでしょう?だからあんなに上手なのでしょう?」と伝えます。久美子によってはじめて奏の頑張りが認められ、承認欲求が満たされました。これまで取り憑かれていたものから開放され、奏は救われました。雨の中のシーンでしたが、雲の合間から”希望の光”が差し込んで来て、奏が救われた事を印象づけています。そして「頑張って上手くなって全国で金を取りたい」という次のステップに情熱を持って進める状態になったと思います。

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次のシーンでは、奏ちゃんがイタリアンホワイトの花が咲く横を登校するシーンがあります。イタリアンホワイトの花言葉は「情熱」。奏ちゃんに情熱が湧き、演奏がもっと上手くなるように練習に励む姿、いいですね。


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久美子役の黒沢ともよさんが「高校生の時期は、生活の心配をしないで純粋に楽器に打ち込めるっていいですね。」と語っていたことがありました。
映像の原則では、特別な意図が無い限り基本的に右側が強者・左側が弱者になります。久美子が奏と対する時、奏が久美子に噛み付く場面では奏が右側に、久美子が左側に位置しますが、久美子が追いかけ説得する時は久美子が常に右側、奏が対して左側に位置します。また左から右に向く場合は逆行や上昇志向の意図を持ち、心の弱さ・悩みを露呈する奏と先輩として助言する久美子、そして救われ前向きになる奏という演出になっています。

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滝先生が来る前の北宇治は府大会銅賞(=参加賞)という「楽しければ良い」的な部でした(でも、上手く吹けなければ楽しくないと思うのですが…)。ここまで酷くは無かったものの、奏出身の西中は銀賞で満足できるような、そこそこ練習はするけれども「楽しければ良い」という、その程度の部活だったと思います。そこに真面目な奏が猛練習しても吹奏楽部全体としては「銀」レベルであり、不幸な環境に奏はいた事になります。しかし北宇治は”本気で全国を目指して”います。そこが奏に伝われば、あざとくして偽る必要も無くなり、純粋に楽器に専念することが出来ると思います。来年は久美子の良い参謀として部長を支えてあげて欲しいと思います(新入部員が集まった時に、久美子が椅子ごと倒れそうになったのを奏が支えましたね)。

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キャラクターデザインの池田晶子さんによると、奏ちゃんのデザインは何度かやり直したそうです。闇を抱えて入部してくる状況や劇中の発言内容を考慮し、視聴者に嫌われないように気を使ったそうです。奏の背が低い設定は萌ポイントだと思います(石原監督が以前そのような話をしていたことがありました)。

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私見ですが、髪型や目の色などが”マドンナ”と呼ばれていた卒業した香織先輩に似てる気がします。香織先輩は部員全体から慕われ頼りにされていたので、そこのあたりを見てデザインを寄せて、イメージで奏ができるだけ嫌われないように考慮したのかもしれませんね。勿論、香織は久美子から見て先輩なので凛とした感じですが、奏は後輩なのでそこの違いはちゃんとキャラクターデザインに出ていると思います。
アフレコでも雨宮天さんが、奏が嫌われないように気を使ったと語っていますし、奏の発言内容も「奏の言い分も理解できる」と視聴者に思ってもらえるようになっていますね。奏ちゃんにはこれからの北宇治吹部を支えてもらわないといけませんし、嫌われキャラになってしまったら困りますね。

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最後に、奏ちゃんの姓名判断をしてみます。上手く合致していれば、制作陣ヤバいって事になりますね。(ちなみにけいおん!の時は、姓名判断とキャラの性格がかなり一致していて驚いたことがあります。)
「信じた人とはトコトンつきあいますが裏切られると憎悪が強くなります。 趣味や特技への傾倒度が大きく収集癖があります。頼まれると嫌とは言えず滅私奉公型で報われるもの少なくグチが多くなります。 自分の特技や才能を仕事に生かせば順調に成功します。他人との協調性に富み共用事業が得意ですが少々ぜいたくで浪費家となります。偏屈やもしくは強情者が多く、冷たくて生意気な感じがします。これは周囲との同化力が乏しいからです。自己の信念を押し通そうとして大失敗することもあります。しかし人との和を心がけ、善悪を見極めて進めば、意志が強いため初志貫徹して大成する吉運です。就職は官庁、官吏、教師がよいでしょう。健康面では、心臓系の病気、例えば狭心症、弁膜症、心臓肥大などと腰部の病気に気をつけて下さい。」
どうでしょう?何か…あってる気がします。ヤバくないですか?

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今の所の私の解釈メモです。
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