京都アニメーションにおける火災におきまして、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げるとともに、お怪我をされた方ならびに関係者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。
私が京アニ作品を本格的に意識したのは「けいおん!」が初めてです。それまでは「犬夜叉」が好きだったりしたのですが、キャラクターの可愛さや作画がとても良い話数があるなぁと思っていたのが、実は京アニ担当回(下請けをしていました)だったことは後から知りました。
アニメーション制作はその工程を分業化している業界なのだそうですが、京アニはアニメーション制作における全ての工程を自社で行っている画期的な会社です。すべての工程を一社で請け負うと、工程ごとの各種スキルやノウハウが必要になってきますが、作り出すものを良くするために工程・セクションを超えた意見交換が可能になり、工程管理が容易になって、より良いものが制作できるという特徴があります。私も以前、星を投影するプラネタリウムという機械や映像を投影するプロジェクターを製作する会社で仕事をしていたことがあるのですが、そこも営業・製品開発・設計・製造・据付調整・保守サービス・ソフトウエアというすべての工程を一社で請け負う会社で、1つのプロジェクトが立ち上がると年単位でスケジュールが組まれ、みんなで1つのものを作り上げるという体制を取っていました。京アニ作品の1つである、アニメ「響け!ユーフォニアム」のスタッフコメンタリで「1つのものをみんなで作り上げる体制が吹奏楽に似ている。指揮者がいて、各パートがそれに合わせて音を奏でて1つになる。アニメ制作も同じで監督がいて、スタッフがいて、作画も音楽もアフレコも、みんなで作り上げる」と語っていました。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
「けいおん!」に出会うまで、アニメは特に深く考えず何となく見ていました。しかし「けいおん!」を初めて見た時、その作画・演出技法・音楽に衝撃を受けました。キャラクターが可愛いというのもありましたが、微妙な視線の動き、手や足の仕草、歩き方から感情を表現したりする事から始まり、季節が移るごとに空の色や雲の形が変わり、春には桜が咲き、花びらが舞って葉桜に変化する。そして草木が青々と生い茂り、冬の制服から夏服へ変わる。蝉の声が聞こえて灼熱の太陽に照らされる街になり、明るく鋭い色使いになります。やがて夏服から冬服へ変わり、ひつじ雲が流れ赤とんぼが飛び交い、吐く息は白くなり寒々しい川の色へ。日の傾きが低く薄暗くなり冬になる―――。背景は美しく、どの場面を切り取っても壁紙に出来るクオリティがあります。部屋の片隅に置かれた花瓶の花にも花言葉という意味を通じてキャラクターの心情を表現します。教室の時計はきちんと時を刻み、使っている筆記道具はキャラクターそれぞれの個性を表します。すいかの食べ残し1つにも性格を表現し、高校生である彼女らの機微を追う…時間・天候・距離・明暗・寒暖・動物・植物・気象・天体・昆虫、等など表現されている。こんなにすごいアニメがあるのかと感激すると同時に、こんなに素晴らしい”仕掛け”があるならば、それを読み解かない訳にはいかないと、アニメの新しい見方を発見させてもらい、楽しみを増やしてくれるきっかけになりました。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

©かきふらい・芳文社/桜高軽音部

©かきふらい・芳文社/桜高軽音部
”聖地巡礼”という言葉を知ったのもこの頃でした。劇中に登場する場面が実際に存在する―――、当初はなかなかそれに参加する勇気がありませんでしたが、「響け!ユーフォニアム」にハマった現在では、何の躊躇も無く聖地巡礼するようになりました。何気ないベンチ、公園のブランコ、街の景色…劇中に登場するそれそのままで不思議な感覚であり、その場に居る快感へ変わっていきました。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
キャラクターの、画面の動きと心情・意図を読み解き、そして実際に舞台を巡る。アニメに対する新しい楽しみ方を京アニと作品に教えてもらい、とても感謝しています。
「響け!ユーフォニアム」のスタッフコメンタリや書籍を通してスタッフによる制作秘話を聞いていると、スタッフ一人ひとりの士気の高さが伺えます。より良い作品にする、どうすれば観ている人に喜んで貰えるのか、それを第一に考え、手間をかけて画面1つ1つを仕上げて行きます。雨の日のシーンの窓には水滴が流れます。コンクール演奏シーンの引き画でも小さなキャラクター一人ひとりが止め画でなく動いて楽器を演奏しています。山の中の夏の朝には霞の中に太陽の日が昇り光が差していく。空気感や温度感・湿度感を大事にした画面作りにこだわります。勿論納期があり限られた時間の中で最善を尽くす。そのスタッフの姿勢をいつも尊敬していました。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
今回、チームワークの中でみんなが一丸となって作品制作にあたっている中、大勢のスタッフが亡くなったり大怪我をされたりしてしまいました。また無事であった方々も心理的な影響が出てしまったと思います。クリエイティブな仕事ですから心理状態が平穏でないとなかなか難しいと思います。
しかし私は、スタッフの皆さんが、京アニが再起する事を信じて待ちます。これだけ素晴らしい作品を世の中に送り出して、多くの人を幸せにしてきました。私もその恩恵を受けた一人であります。ですので、微力ながら何か恩返しがしたいと思っています。京アニ直営店のショップで、クリエイターの方々の魂がこもったグッズを買ったりダウンロード商品を買うことで直接お金を渡すようにすることで、少しでも力になれたらと思います。また、応援の意味を込めて、京アニの素晴らしさを、作品の素晴らしさを伝えていけたらと思っています。そしてこれまで通り「響け!ユーフォニアム」の魅力を記事にしていきたいと思います。また、状況が整えば、聖地巡礼したりイベントに参加したりしていきたいと思っています。
こんな事くらいしか出来ませんが、私からの応援メッセージに代えさせて頂きます。
京アニのスタッフと関係者の皆様の体と心が1日も早く回復し、平穏な日が戻ることを心から祈っております。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
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京都アニメーション | 日記
Posted at
2019/07/21 15:25:45