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2020年08月22日 イイね!

北宇治高校吹奏楽部 ソロパート争いについて再考する(麗奈視点)

北宇治高校吹奏楽部 ソロパート争いについて再考する(麗奈視点)
先日、「北宇治高校吹奏楽部 ソロパート争いについて再考する(香織視点)」 と題して、3年生香織先輩と1年生麗奈のソロパート争いについて、香織先輩視点で考え直してみました。
今回は同じ出来事を”麗奈視点”で展開してみることにします。

※北宇治高校吹奏楽部 ソロパート争いについて再考する(香織視点)
https://minkara.carview.co.jp/userid/2700448/blog/44267028/


トランペットソロパートを争う2人の、
簡単なプロフィールをおさらいしておきます。

1年生 高坂 麗奈(こうさか れいな)
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   

  誕生日:5月15日 おうし座
   身長:158cm
  血液型:O型
 好きな色:青・白
   趣味:映画鑑賞
好きなもの:パスタ、柑橘系のジュース
嫌いなもの:納豆


3年生 中世古 香織(なかせこ かおり)
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   

  誕生日:9月3日 おとめ座
   身長:166cm
  血液型:A型
 好きな色:白
   趣味:お菓子作り・あすかとカフェ巡り
   特技:茶道と華道を年少から習っている
好きなもの:スイーツ・お芋
嫌いなもの:虫・人混み



麗奈の人となりを簡単に記しておきます。
(いずれ麗奈の事は詳しく纏めるつもりです)


麗奈は主人公・久美子と同級です。
黒髪ロングに大きな瞳を持ちスタイルも良く、進学クラスに在籍し成績も優秀で香織やあすかと並ぶ美人です。

香織先輩のような誰にでも好かれるような柔らかい雰囲気とは逆で、周囲に流されるような事はせず、自分に厳しく、自身のルールを守るというストイックな性格をしています。そういう事で気軽には近寄りがたい雰囲気を出しています。

しかし、気を許した相手にだけは、年齢相応の本当の自分を見せたりします。麗奈が顧問の滝先生の事を「ライクじゃないよ、ラブ」と久美子に告白した時も、「麗奈って、かわいいな~」と冷やかされたりしています。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   


「響け!ユーフォニアム」という物語において、麗奈と久美子の絆はとても重要な要素を含んでいます。麗奈は主人公に匹敵するレベルの位置付けで、元々原作者の構想段階で麗奈を主役と考えていた時期もあったくらいです。久美子と麗奈は物語の両輪であると言っても過言では無いです。


麗奈の父はプロのトランぺッターです。自宅に防音室があるような環境で、幼少期から父親の演奏指導の下で育った事もあって、極めて高い演奏技術を有しています。

麗奈自身のストイックな性格も相まって、「特別になりたい」と一切の妥協を許さない姿勢で取り組んできています。コンクールで他人に負ける事があっても、それを他人のせいにしたりせず、「自分の努力が足りなかった」と、更に練習に打ち込みます。

麗奈は、周りの人間から孤立してでも「特別になりたい」と強く思い、自分に厳しく日々鍛錬を繰り返しています。

~~~

そんな1年生の麗奈が、パートリーダーでもある3年生の香織先輩とソロパートを争う事になります。

香織先輩は去年、部員の大量退部事件でゴタゴタしていた吹奏楽部内の問題を収めるべく走り回った功労者でもあり、その事は部員達皆が知っています。
特にパート直属の後輩である2年生・吉川優子は香織先輩のそういう姿勢に惚れ、全面的に支持しています。


前顧問は産休になり、新顧問・滝昇(たき のぼる)先生が就任します。
これまで学年順でソロパートを決めていた北宇治吹奏楽部ですが、
今年から実力主義の方針に変わり、オーディションを実施しコンクールメンバーを決定する事になりました。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   


揉め事が無いように自分より他人を優先させてきた香織先輩は、3年生最後のコンクールで「自分が吹きたいフレーズを思いっきり吹きたい、自分の為にソロをやりたい」と思っていました。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   



オーディションが実施され、麗奈がソロパートを担当する事に決定されました。
しかし審査が密室で行われた為、部員達の間でオーディションの結果に疑念が生じる事態となっていました。
部の雰囲気が悪くなり、メンバーの集中力も落ちて練習に身が入らない状態が続きました。

顧問の滝先生にも決定打が無く時は過ぎていましたが、副顧問の美知恵先生の「良い音は良いと言わざるを得ない、音楽は嘘をつかない」という助言を得て、再度、公開形式でオーディションを行い、部員全員でソロを決定する という事を思いつきます。


麗奈と香織先輩のソロパート争いは、単純に個人vs個人の演奏技術比べという要素を超え、部内のバックグラウンドを含んだ、まさに麗奈vs部員全員 と言ってもいい構図になっていました。

ただ、演奏技術は麗奈の方がはるかに上手だという事を、香織先輩や優子は分かっていました。それに加え、今年の北宇治は”全国大会出場”という目標に向かって、全員が真剣に取り組んでいたという状況もありました。

それらを複合的に理解した上ですが、麗奈は先輩である優子から「それでもソロパートを香織先輩に譲って欲しい」と頭を下げられてしまいます。
※優子は香織先輩の事となると、理性を超えて盲目的になってしまう所があります。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   


麗奈は優子先輩から、香織先輩が自身を犠牲にしてでも部を守ろうとした事や、優子自身が香織先輩を慕っている理由を打ち明けられ、麗奈自身の「特別になりたい」と孤高を貫いてきた意思に揺らぎが生じます。



再オーディションの直前、麗奈は親友の久美子と話をします。
麗奈は優子の言葉で、迷いが生じていました。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   

しかし、久美子から
「麗奈は特別になるんでしょ 麗奈は誰とも違う 人に流されちゃダメだよ」
と訴えられます。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   

麗奈 「でも今 私が勝ったら悪者になる
久美子「いいよ その時は私も悪者になるから
久美子「ソロは麗奈が吹くべきだって言う 言ってやる!!
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   


ここからの麗奈と久美子のやり取りが、
二人の絆がより強く結びついて行く事に繋がっています。

麗奈 「そばにいてくれる?
久美子「うん
麗奈 「裏切らない?
久美子「もしも裏切ったら 殺していい
麗奈 「本気で殺すよ
久美子「麗奈ならしかねないもん それが分かった上で言ってる
久美子「だってこれは 愛の告白だから

このシーンは、大吉山で麗奈が久美子へ”愛の告白”(=生き方において、お互いを高めあう、真の友になる)をした事を受けての、久美子から麗奈への”愛の告白”(=返事)であると思います。

麗奈は”久美子の本気”を確認します。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   


久美子の本気を受けて自信を取り戻した麗奈は、迷いが晴れ、
自身の道を突き進む事を決心します。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   



いよいよ再オーディションが始まります。

麗奈は自分が持つ全ての力を演奏に込めます。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   

ホールの後ろまで突き抜ける音色は、
部員達を認めさせるのに十分過ぎるものでした。

良い音は、良いと言わざるを得ない―ー
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   


両者の演奏後、ソロパート決定の投票が行われます。

香織先輩には優子と晴香の2票が入りました。
麗奈には、誓った久美子と、同じく行動を共にする葉月の2票が入ります。

同点となりました。

滝先生は香織先輩に「あなたがソロを吹きますか?」と優しく問いかけます。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   


麗奈は、「あぁ…先輩がソロになるんだ」と諦めかけます。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   

しかし、香織は
「吹かないです 吹けないです ソロは高坂さんが吹くべきだと思います」
と、晴れやかな顔で麗奈に視線をおくります。

この瞬間、香織先輩から麗奈へ全てを託されました。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   


滝先生「高坂さん。中世古さんではなく、あなたがソロを吹く。いいですか?」
麗奈 「ハイっ!」

香織先輩から麗奈へ託された想いと優子の想いを噛みしめ、更なる鍛錬を積む事を麗奈は改めて決意します。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   



この再オーディション後、麗奈の音色が大きく変わります。

これまでのストイックな「特別になりたい」という突き進むような破壊力ある音に、香織のトランペットに対する想いや先輩の託す想いと、香織の”他人を思い遣るやさしさ”が音色に加わります。
(麗奈の演奏を担当した”中の人”の表現力を称えてください)

~~~

その後、関西大会を経て全国大会へ進んだ北宇治高校吹奏楽部ですが、銅賞におわってしまいました。

この時、麗奈は香織先輩に謝罪します。当初の”全国大会出場”という目標は達成したものの、再オーディションの時に託された想いの全てを自身が出し切れていなかったという思いから出た謝罪であったと思います。ストイックな麗奈らしい姿勢と思います。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   

香織先輩は、
「高坂さんが謝ることじゃない これが私たちの実力だったんだよ」
と返します。

その様子を横で見ていた優子は 「高坂、来年 金賞取るよ」 と、
このままでは終われない、共に戦おう!と決意します。

ここから新たな物語がスタートします。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   

~~~

再オーディションを経て新しく成長した麗奈の音色の変化を是非、本編で聴き比べて確認して頂きたいと思います。



※当ブログで引用している画像・その他データの権利は 武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会 に帰属します。
Posted at 2020/08/22 16:53:45 | コメント(3) | Sound! Euph. ~調査・考察 | 音楽/映画/テレビ
2020年08月09日 イイね!

北宇治高校吹奏楽部 ソロパート争いについて再考する(香織視点)

北宇治高校吹奏楽部 ソロパート争いについて再考する(香織視点)
これまで部の為に頑張ってきた3年生の香織先輩、”特別になる”と妥協を許さないストイックな新1年生の麗奈、この二人がソロパート争いをする話があります。


この場面、何度観ても、なかなかしっくりした理解が得られません。
過去にも記事にしたことがありましたが、改めて考え直してみたいと思います。


今回、トランペットソロパートを争う2人の、
簡単なプロフィールを紹介しておきます。

3年生 中世古 香織(なかせこ かおり)
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   

  誕生日:9月3日 おとめ座
   身長:166cm
  血液型:A型
 好きな色:白
   趣味:お菓子作り・あすかとカフェ巡り
   特技:茶道と華道を年少から習っている
好きなもの:スイーツ・お芋
嫌いなもの:虫・人混み


1年生 高坂 麗奈(こうさか れいな)
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   

  誕生日:5月15日 おうし座
   身長:158cm
  血液型:O型
 好きな色:青・白
   趣味:映画鑑賞
好きなもの:パスタ、柑橘系のジュース
嫌いなもの:納豆



今回は、香織に主軸を置きます。


香織は”古風”な子で、とても努力家です。
その美貌から”マドンナ”と周囲から呼ばれていますが、全く飾りません。
吹奏楽部の過去の苦い経験を乗り越えてきた強さがあります。
”トランペットが好き”という、真っ直ぐな気持ちを持っています。
ちなみに香織のトランペットは、祖母から譲り受けたものです。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   


天才的で飛び抜けたあすかとは違い、コツコツと努力を積み重ねてきたタイプです。トランペットに対する愛情が人一倍あり、凛とした雰囲気を持つ芯の強い女の子です。



これまで学年順でソロパートを決めていた北宇治吹奏楽部ですが、
今年から実力主義の方針に変わりました。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   


香織は去年の大量退部事件を経験し、揉め事が無いように振る舞い、自分より他人を優先させてきました。
しかし3年生になりコンクールは今年が最後。
「自分が吹きたいフレーズを思いっきり吹きたい、自分の為にソロをやりたい」と思いました。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   


しかしオーディションを実施した結果、ソロは新1年生の麗奈が担当する事になってしまいました。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   


オーディションが終わりソロは吹けないと決まった後も、香織はソロパートの練習を続けていました。

オーディションの結果に不満があるわけではありません。ましては同情して欲しいわけでもありません。ただただ、自分に納得できていませんでした。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   


一方、審査が密室で行われた為、部員達の間でオーディションの結果に疑念が生じる事態となっていました。
部の雰囲気が悪くなり、メンバーの集中力も落ちて練習に身が入らない状態が続きました。

顧問の滝先生にも決定打が無く時は過ぎていましたが、副顧問の美知恵先生の「良い音は良いと言わざるを得ない、音楽は嘘をつかない」という助言を得て、公開オーディションを行う事を思いつきます。


再びオーディションのチャンスが到来しました。
「もう一度やらせてください」と手を上げる香織の姿がありました。
今度こそベストを尽くすという固い決意が表情に出ています。
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 ©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   


公開オーディションが行われる事になり、部の雰囲気は改善されました。
再オーディションに向けて、香織は必死に練習を重ねます。
「出来る事は全てやり尽くす!」


オーディション前、控えている香織の元に晴香が寄り添います。

晴香「納得できるといいね」
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   

続けてこう聞きます
晴香「どうして あすかなの? どうしてそんなに こだわるのかなって」


香織があすかに拘る理由って、何でしょう?
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   


あすかは香織にとって特別な存在です。
「見透かされてるような気がするんだよね 私が思ってること 何でも」と香織は言います。

「だから あすかを驚かせたい あすかが思ってる私の一歩先を 本当の自分が行きたい」と答えます。


あすかへの憧れや拘り・想いが、香織自身の原動力になっています。


しかし、あすかは常に厚い仮面を被り心を開かず、本心を見せようとしません。
しかも切れ者です。一筋縄ではいかないでしょう。攻略はかなり難しそうです。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   


そんな難敵のあすかを驚かせ、一歩先を行くというのは、なかなか骨が折れる面倒くさい事です。

でもそれをすることで、全てを超越しているあすかと同等になれ、自身もステップアップ出来る。そして憧れのあすかにもっと近づき、超えたい…そう香織は思ったのかもしれません。

3年間一緒に苦楽を共にしてきた”戦友”として、香織のあすかに対する気持ちを理解した晴香は、香織を励まします。

晴香「面倒くさいね」
香織「フフ、面倒くさいね 本当に」
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   



いよいよ再オーディションが始まります。

これまで積み重ねた香織の音色は、十分コンクールで戦えるレベルでした。
しかし麗奈の、ホールの後ろまで突き抜けるような圧倒的な演奏をその場にいた全員が目の当たりにします。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   

香織には優子と晴香が拍手(投票)をします。

優子は、たとえ麗奈が上手いと分かっていようとも、これまで自分達の為に犠牲になってくれた香織を応援しました。”他人の為に行動する”という事は、敬愛する香織が教えてくれた事だから…。


麗奈には久美子と葉月が拍手(投票)します。

同票となり、滝先生はやさしく香織に問いかけます。
「あなたがソロを吹きますか?」
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   

香織「吹かないです 吹けないです」

良い音は、良いと言わざるを得ない―ー
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   


全てを出し尽くし、やりきった香織に後悔はありませんでした。
晴れやかな顔で麗奈に視線をおくる香織がいました。



香織にとっての”ステップアップ”

それは、”承認欲求”から”自己実現”レベルへの昇華とも言えると思います。
「誰がソロとか、どうでもいい」とあすかは言います(本当は別の意味です)。
香織にとっても、ソロに選ばれる事に拘る必要なんて無いのです。
だって、香織は「トランペットが上手じゃなく、好き」なのだから。

自分の出来る事はすべてやり尽くしました。しかし麗奈の方が数段上手でした。
全国行きを狙う北宇治のソロは「上手い人が吹くべき」。

香織はオーディションを通じて、次世代の麗奈に託しました。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   



「でもねぇ、やっぱり北宇治吹部に尽力した香織先輩に最後は吹かせてあげたかったなぁ~」…そう思ったりもします。

サントラに収録されている「香織先輩ソロVer.三日月の舞」。本編では出てこない幻の一曲です。
おそらくスタッフのそんな気持ちがこのバージョン収録をさせたんだと思います。
そう思って聴くと、じーんとします。


※「響け!ユーフォニアム」公式吹奏楽コンサート ~北宇治高校吹奏楽部 第4回定期演奏会~(関東公演)にて、香織先輩の楽器を担当した洗足音楽大学フレッシュマン・ウインド・オーケストラの富岡愛彩実さんがソロを担当する三日月の舞が披露されました。素晴らしい音色で感動しました!

※当ブログで引用している画像・その他データの権利は 武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会 に帰属します。

Posted at 2020/08/09 23:21:37 | コメント(2) | Sound! Euph. ~調査・考察 | 音楽/映画/テレビ
2020年05月24日 イイね!

『響け!ユーフォニアム』職員室の前に掛けてある”書”が意味する、人との関係と出会い

『響け!ユーフォニアム』職員室の前に掛けてある”書”が意味する、人との関係と出会い北宇治高校の職員室入口に、書が掛かっています。

”樂毅論夏侯泰初世人多以樂毅不時拔莒”と書かれているのですが、これは「楽毅論」の冒頭部分です。

楽毅論(がっきろん)は、中国三国時代の魏(ぎ 220-264年)の武将であった夏侯 玄(かこう げん)が、中国戦国時代の燕国(えんこく)の武将・楽毅の、王道に則った戦い方について記した小論です。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   


書にある”樂毅論 夏侯泰初 世人多以樂毅不時拔莒” の後に”即墨為劣是以叙而論之” と続くのですが、

楽毅論 夏侯泰初” 
⇒ 楽毅論 夏侯玄

世人多以樂毅不時拔莒(即墨為劣 是以叙而論之)
⇒ 世人多く楽毅の時に莒(きょ)・即墨(そくぼく)を抜かざるを以て劣れりと為す。是(ここ)を以て叙(の)べて之を論ぜん。

⇒(訳)「世の人々は とかく楽毅が莒・即墨の二城を陥落させなかったことをもって 彼の非を論じている」

⇒(解説)楽毅が残り二城を力ずくで攻め落とさなかった事について、先賢の考えは大局的視点で捉えるべきで、凡人に理解できない事はやむを得ないとしても、その意図・真意を熟慮しないまま愚策であったと結論付けるのは早計である

という事を意味しています。

~~~

響け!ユーフォニアムで、以下のようなシーンがあります。
傘木希美(中央)の隣に「楽毅論」の書が見えます。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   


希美「真面目にやってる人が くだらない人のせいでイヤな思いをする部なんて いても意味がないですから」

グータラ遊んでばかりの部の雰囲気に業を煮やした1年生の希美が、楽器の練習を全くしない当時の3年生と衝突し、希美が退部を決意し顧問の先生の所へ退部届を出しに行く時、当時2年生のあすか先輩に話しかけられます。
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   

あすか「そのくだらない3年生はほっとけば卒業して 来年は私らだけになるんだけど それまで待てない?」

希美はあすか先輩の言葉を「待てません」と突っぱねて、退部してしまいます。

しかし次の年には顧問が産休。新たに滝先生が吹奏楽部顧問になり、北宇治は全国大会まで進む事になります。

周りの空気も読めて頭脳明晰なあすかは、今後起こる状況の変化を分かっていました。
このシーンでは、楽毅をあすかに置き換え、その心が理解できない世人=希美という構図と考える事ができます。

~~~

再び楽毅論に戻ります。

楽毅は、燕の昭王が国力を上げる為に人材を集めていると聞き、昭王の元へ行き仕えます。

昭王は楽毅を50万の大軍の総大将に任命しました。楽毅率いる大軍は、それまで強大だった斉国(せい)を攻め込み、莒(ろ)・即墨(そくぼく)の二城以外の70余りの城を陥落させました。

昭王は楽毅の能力を見抜いていました。楽毅は昭王との出会いが自分の運命を変え、歴史上に名を残す事になったと言えます。

優れた君主に仕えれば、優れた臣になります。能力のある人と付き合えば、自分を高める事が出来るという事を示しています。(運も同期すると思います)

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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   

高校の部活動は、顧問の先生の影響が非常に大きいと思います。優れた先生の指導を受ければ人は伸びて可能性が広がり、個々・全体ともにレベルアップします。

逆に、どんなに生徒が優れていても、率いる指導者がポンコツなら才能の芽を潰します。これは社会全体にも言えることで、例えば会社の上司や社長が不適格者のポンコツだったら部下は不憫な思いしかしませんし、業績が向上するわけありません。

10年前の北宇治高校吹奏楽部は、滝先生のお父さん(滝透)が顧問をしていて、全国大会常連の強豪校でした。しかし顧問が変わってから府大会すら突破できない弱小部になってしまいました。

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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   


希美と対立した当時の3年生も、ある意味不幸だったと思います。

前顧問の「楽しければ良い」という方針が、練習もせずにだらけた部活の雰囲気を意図していたかどうかは分かりませんが、少なくともそういう実態を放置し何ら指導もしなかった(能力が無く出来なかった?)顧問の責任は重大であると思います。悪の根源は前顧問にあると、私は思っています。

生徒は楽器を吹きたくて吹奏楽部に入ったと思うのですが、それが出来ない雰囲気を放置され、練習もせず好き勝手遊んで楽器は一向に上達しない。一生懸命やりたい人も数の力で無視され、存在しない事にされてしまう。本当にそれで”楽しかった”のでしょうか…??

あすかは、お腹が大きくなっていく前顧問を見て、来年は産休に入り別の顧問と入れ替わる事を予想していたと思います(次に来る先生が優れた顧問であるかどうかは分かりませんが)。

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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   

久美子達が入学した年になったら、運良く有能な滝先生に顧問が変わりました。

楽毅と昭王のように、滝先生に出会えた生徒たちはみるみる楽器が上達し、府大会では金賞を獲得。関西大会でも金賞、そして全国大会へ進めるレベルにまでなりました。(部員達は練習の厳しさに、滝先生の事を”粘着イケメン悪魔”と呼んでいましたが、先生を信じて必死についていきました。)

集合写真の皆の嬉しくて楽しそうな笑顔が全てを表しています。上の前年度の写真と比べてみてください。部員達の熱量が段違いです。

楽毅論 ⇒ 楽器論(?)

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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   

人との出会いは自分の今後の人生に大きく影響する事も少なくないですので、とても大切ですね。「響け!ユーフォニアム」という作品は、”人との出会い”について考えさせられる作品です。


※参考文献:国立歴史民俗博物館研究報告 第198集 2015年12月 「光明皇后筆「楽毅論」に見える重文符号」大渕貴之
※当ブログで引用している画像・その他データの権利は 武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会 に帰属します。



※2021.09.29 加筆修正
Posted at 2021/09/26 18:10:05 | コメント(0) | Sound! Euph. ~調査・考察 | 音楽/映画/テレビ
2020年05月09日 イイね!

黄前ちゃんはホント、”ユーフォっぽい”ね

黄前ちゃんはホント、”ユーフォっぽい”ね
あすか先輩が久美子に、
「黄前ちゃんはホント、”ユーフォっぽいね”」
と言います。

”ユーフォっぽい”とはどういう事なのか、考えてみたいと思います。

~~~
田中あすか(3年生)は、北宇治吹奏楽部の副部長であり、低音のパートリーダーを務めています。担当楽器はユーフォニアムです。黄前久美子(1年生)の同じパート・楽器で直属の先輩にあたります。

あすかはユーフォニアム奏者の父・進藤正和と母・田中明美の間にできた一人っ子です。しかし2歳の時、両親が離婚しました。そして母親の明美に引き取られ育てられます。

あすかが小学1年のある日、父親からノートに書かれた楽譜と手紙、そしてユーフォニアムが送られてきました。
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 あすかは近くの楽器店の店員さんにユーフォニアムの吹き方を教えてもらった所、うまく吹けて楽しくなり、それ以来ずっとユーフォを吹いていました。

しかし母の明美は楽器を吹くことに反対で、ある日あすかと大喧嘩になり、成績が悪くなったらすぐやめるという条件で今日までユーフォニアムを吹いてきました。

また母は、父親とあすかを会わせるのを拒否し続け、高校3年生になった今も、あすかは一度も父親には会えていません。

~~~

北宇治吹奏楽部の合宿中、早朝に一人ユーフォニアムを吹くあすかの姿がありました。
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朝霧の中で吹く「響け!ユーフォニアム」の音色は、甘えたい父親への想いと、それができない寂しさが出ていました。久美子はそっとその姿を見ていましたが、瞬く間にその霧が晴れるとともにあすかの内面は見えなくなります。
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きっとあすかは、ユーフォを吹き続ける事で父親にいつか繋がると信じていたと思います。
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朝霧は日の出時のわずかな時間にしか出ませんので、普段はそれを隠しているあすかの内側を久美子は偶然にも目撃したという演出と思います。

~~~

北宇治は関西大会を突破し、全国大会へ進む事になりました。
しかし母・明美は学校に乗り込み、即刻あすかを吹奏楽部から辞めさせようとします。
顧問の滝先生により退部は阻止されたものの、あすかは部活に殆ど参加する事が出来なくなってしまいました。

ある日、あすかは久美子を家に呼びます。
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大豪邸に住んでいるにも関わらず、あすかは西日が入る6畳間の一室に押し込められています。
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風水では、西側の部屋の、特に窓がある部屋は凶相で、西日が運気を下げます。カーテンや家具で窓を塞いで西日を防ぐと良いと言われます。

タイツを脱ぐあすかは、被っている仮面を外して本音で話したいという意思表示をしていると思います。

自身の身の上を久美子に話します。あすかのかなり深い所まで知っている同級の香織には、おそらくこの事だけは話をしていないでしょう。
 
久美子に話しをしたあすかは「吹きたくなっちゃった」と、自分がいつも楽器を吹いている近くの河原に久美子を連れて行きます。
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そしてあすかは久美子に言います。
「黄前ちゃんはホント、ユーフォっぽいね」
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ユーフォニアムという楽器は、普段は目立たなくあまり主張することが無い、吹いている人ですら低音なのか高音なのかよく分からない楽器です。

が、厚みを増やして「支える」ことが出来る、時には主旋律もこなせる「何でも屋」で、色々な立ち回りが出来る、目立たないけれど必要不可欠な楽器です。

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久美子という人物は、普段あまり目立たなく、主張することも無く周りに流されがちです。ところが好奇心が強く、すぐ首を突っ込む所があります。

そして時々本音をポロっと言います。しかもその言葉が胸に刺さります。

そんな姿は周囲からはミステリアスに映り、猫被っているようでなんか引っかかります。“正体は何なのか?”、“その余裕そうな、何でも受け止めてくれるような感じはどこからくるのか?”…皮をペリペリと剥がしたくなります。
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人間関係的な立ち位置や性格がユーフォニアムという楽器の立ち位置に似ていてるので、あすかは久美子の事を「ユーフォっぽい子」と表現したんだと思います。


そしてあすかは自分の事を「ユーフォっぽくない」と言います。
「ずっと好きな事を続けるために必死だった。周りの事なんかどうでもいい。一人で吹ければいい。」

誰かが困っていても決して関知せず、常に中立的立場で、誰かの為に支えるなんていう自分にとってプラスにならない、余計で無駄な事はしません。またそういう面倒な事に巻き込まれることを非常に嫌います。

そういう行いも全て、母親に縛られた生活環境に閉じ込められ、自分の身を守るために取っていた行動であると思います。

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あすかは人の心が分からないというのではなく、切り捨てていました…他人だけでなく自分さえも。

常に中立の立場をとっていたあすかですが、“中立でいる”というのは実際難しく、ある意味超越していないと多方面から批判され、そこに存在できないと思います。勉強も出来、演奏も上手い、副部長、ドラムメジャーと何でもこなせる、そういうあすかだから可能だったと思います。


あすかは、父親から贈られた曲「響け!ユーフォニアム」を久美子に聴かせます。
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一人っ子のあすかはいつも寂しく感じていて、久美子のような妹が欲しかったのではないかと思います。時に本音で語れるような相手を求めていたと思います。

“ユーフォっぽい久美子なら、自分の悩みや想いを受け止めてくれる”…もしかしたら父親の代わりみたいに捉えていたのかもしれません。久美子に甘えたかったのだろうと思います。
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~~~

ところが、あすかは全国大会出場を諦めようとします。そんなあすかを久美子は引き戻そうとします。

あすかに対し、がむしゃらに向かってくる久美子は駄々こねる子供そのもののようでした。そこには自身の想いを受け止めてくれそうな、あの姿は微塵もありませんでした。
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しかし、
「先輩だって、ただの高校生なのに!」
という、久美子渾身の言霊が、あすかの心を響かせます。
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特別な存在でいなくてもいい、子供のように駄々こねていい、父親に演奏を聴いてもらっていいと言われ、肩の荷が下りたと思います。

「後悔すると分かっている選択肢を自分から選ばないでください!」
「諦めるのは最後までいっぱい頑張ってからにしてください!」

 「あのホールで先輩と一緒に吹きたい…!」
画面からはみ出るくらい溢れる想いを、久美子はあすかにぶつけます。
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そして…
あすかは自身の力で母親を説得し、事態の解決を図ることができました。
”ユーフォっぽい久美子”に救われた と言って良いと思います。


※みん友さんに記事を書くきっかけを頂きました。ありがとうございます。

※当ブログで引用している画像・その他データの権利は 武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会 に帰属します。
Posted at 2021/12/19 02:52:00 | コメント(3) | Sound! Euph. ~調査・考察 | 音楽/映画/テレビ
2020年05月01日 イイね!

二つの「頑張るって、何ですか?」

二つの「頑張るって、何ですか?」

ステンドグラス制作中「誓いのフィナーレ」を流しながら作業をしていたのですが、ちょっと書きたい事が出たので、休憩がてら記事を書こうと思います。


「誓いのフィナーレ」での、1年生久石奏ちゃんのセリフ

「頑張るって、何ですか?」

これが中盤とラストの2回出てきます。
勿論、この2つは同じ言葉でも、意味が違います。


◎最初の「頑張るって、何ですか?」
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   

奏ちゃんが中学時の吹奏楽部での出来事です。先輩を差し置いてオーディションでコンクールメンバーに選ばれてしまいました。奏ちゃんはオーディションに落選した先輩の為にも必死で頑張って練習し、コンクールで成果を出そうと努力しました。

しかし結果は銀賞で終わってしまい、「これだったら3年生が吹いた方が良かった」と皆から言われてしまい、誰からも奏ちゃんの努力が認められることはありませんでした。その経験から、コンクールなんて頑張って良い演奏をしても意味は無い、皆が納得できればそれで良いと思うようになってしまいました。

全国大会金賞を狙う北宇治高校へ進学し吹奏楽部へ入部しましたが、再びオーディションを受ける事になります。中学の時のトラウマからわざとヘタに吹きメンバーから外れる道を選んだ奏ちゃん。事情と聞きだそうと歩み寄る久美子にこう言います。

「頑張るって、何ですか?」
 
心理学で、マズローが発表した人間の5大要求というものがあります。
5段階の欲求を満たしていく事で、人は自分らしく生きる事ができるようになるという理論です。
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この時の「頑張るって、何ですか?」は、4番目の”他人から認められるという欲求”を満たせない状態から出た言葉でした。

その直後、久美子によって初めて「奏ちゃんは頑張ってきた。だから上手に吹けるのでしょう?」と、それまでの頑張りを認められ、4番目の欲求は満たされました。

5段階のうち4番目までは”欠乏動機”と呼ばれ、それらが満たされていないと最高位の”成長動機”へ向かう事が出来ません。久美子に頑張りを認められた事で「全国を目指して金賞を取る」といった自己実現の欲求・成長したいという欲求の要素を含む目標に対しての動機付けが出来る状態になりました。

~~~

北宇治吹部は関西大会で金賞を獲得しました。
しかし、全国大会の代表には選ばれず、”ダメ金”になってしまいました。

◎2回目の「頑張るって、何ですか?」
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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会   

ラスト、奏ちゃんは帰りのバスの中でこうつぶやきます。

「頑張るって、何ですか?」

この言葉は、自己実現・成長したい欲求から出た言葉で、前回の言葉とは大きく意味合いが異なります。今回は全国大会金賞どころか、大会に進む事さえ出来ず、欲求を満たすことは出来ませんでした。しかし、もっと頑張って、来年は絶対全国大会金賞を獲得する!と誓い、さらなる成長と努力を続けるという動機付けに繋がります。

頑張れ!


※当ブログに掲載されている画像・その他データの権利は 武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会 に帰属します。


Posted at 2020/05/01 22:32:05 | コメント(3) | Sound! Euph. ~調査・考察 | 音楽/映画/テレビ

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