
「リズと青い鳥」とは、
傘木希美と鎧塚みぞれの二人の関係を描いた「響け!」シリーズの作品です。
吹奏楽コンクール自由曲「リズと青い鳥」第3楽章で、二人のソロ掛け合いがあります。
二人の意識は噛みあっていない所から始まります。
それは”互いに素”(=disjoint)という相容れぬ関係でした。
その関係を「リズと青い鳥」はベン図をイメージして表現しています。
「ベン図」とは、複数の集合の関係を図で表したものです。
青色の領域・赤色の領域・両方に共通した領域といった事を視覚的に表しています。
「これはベン図です」ということを同作品の山田尚子監督が明言していますので、確定事項です。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
傘木希美(かさき のぞみ)
フルート担当の3年生
©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
鎧塚みぞれ(よろいづか みぞれ)
オーボエ担当の3年生

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という事で、
二人の噛み合っていない点を抽出し、ベン図に表してみる事にします。
それぞれの瞳の色が、人物を指しています。
青 ⇒ 希美(の瞳)
赤 ⇒ みぞれ(の瞳)
物語が始まり、序盤の二人はこのように噛み合っていません。
登校時、みそれは希美が来るのを待っています。
下駄箱は左右で分かれています。
上履きの履き替え方も正反対です。
「リズと青い鳥」の本を、希美は読んだことがありますが、みぞれはありません。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
二人の意識の中で共通項はありません。
disjoint=互いに素 という関係です。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
ここでタイトル。
フルートとオーボエの”不協和音”が音楽室に響き渡ります。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
話が進みますが、二人の関係は依然として噛み合いません。
希美が「本番楽しみ」と言っても、みぞれは「本番なんか来なくていい」
希美が属するフルートパートは後輩も交えて賑やかですが、みぞれのオーボエパートはみぞれ自身が後輩と親密になる事を拒んでいる節があります。
まだ二人の意識の中で共通項は発生していません。
物語の流れに変化が訪れるのは、
みぞれが新山先生から音大進学を薦められる所あたりからです。
音楽で認められたい希美には声がかかりませんでした。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
希美を”闇”が支配し、一層みぞれと素直に接する事が出来なくなります。
一方、それまで後輩の誘いを断っていたみぞれに変化が訪れ、後輩と一緒に過ごすようになります。
このあたりまで、希美⇒青い鳥、みぞれ⇒リズ でした。
新山先生に青い鳥を放すリズの気持ちのアドバイスを貰い、奏者としてのみぞれ自身の立場を理解します。
お互い、希美=リズ、みぞれ=青い鳥 という認識をします。
自分自身の進むべき道が見えておらず、進路調査票を白紙で提出していたというのも二人の共通点です。
天才みぞれの圧倒的なオーボエを聴かされ、希美は打ちのめされてしまいます。
©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
落ち込む希美に、みぞれは自分の気持ちをハッキリと伝え、
希美もそれを受ける事で、お互いが先に進めるようになります。
色々な要素が相殺され、お互いは共通項を持つようになっていきます。
この作品を通して、
希美 ⇒ 左・青・数字の3
みぞれ⇒ 右・赤・数字の5
を暗示している場面が非常に多いです。
進路について、
希美は一般大学を目指す事に決めます。(左にかじを切ります)

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
右⇒左を向く希美

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
みぞれは音楽大学を目指します。(右にかじを切ります)

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
左⇒右を向くみぞれ

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
しかし直後、二人の左右が入れ替わるカットが出てきます。


©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
二人の意識は交わります。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
最後、二人が前後・左右を頻繁に入れ替わるシーンが連続します。どちらかを一方的に依存するような歪な関係は矯正され、それぞれがぞれぞれの道を歩む事を決意し進んで行く、感動的なラストシーンとなっています。



©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
フィボナッチ数列の隣り合う数は”互いに素”という事を「リズと青い鳥」は意識しています。
この数列の隣り合う数の比は黄金比に収束する=希美とみぞれの関係は黄金比のように美しい関係になる という事を示唆しています。
これについては以前記事にしましたので、興味ある方はご覧ください。
Posted at 2020/09/01 23:11:48 | |
Sound! Euph. ~調査・考察 | 音楽/映画/テレビ