
先日ノーベル物理学賞に、ブラックホールに関する研究に大きな貢献をした3名が選ばれました。
そもそも、ブラックホールって何でしょう?
よく「光すら出てこられない」と聞きます。
どういう事でしょう?
地球などの天体には重力が働いています。
ボールを真上に投げると、そのまま自分の所に落ちてきます。
もっと速く思いっきり投げると、空高く上がりますが、また戻ってきます。
もっと高い速度でボールを投げると、重力を振り切って宇宙へ飛び出していきます。
これを脱出速度と呼びます、
地球の場合、秒速11kmの速度があれば、地球の重力を振り切って宇宙空間に飛び出す事が出来ます。
©国立天文台
地球よりもっと大きな重力の天体、例えば脱出速度が光の速さ(秒速30万km)以上の速度が必要なものがあった場合、光や質量のある物質は光速以上の速度が出せないので、天体の脱出速度を超えて外に飛び出す事が出来ず、投げたボールのように元の天体に落ちて行きます。
こういった天体をブラックホールと呼んでいます。
天体表面の重力の大きさは、その質量に比例します。
よって、天体の質量が大きければ大きいほど、天体表面の重力は大きくなります。
また、天体の大きさの二乗に反比例します。
よって、同じ質量の場合に天体の大きさが小さければ小さいほど、天体表面の重力は大きくなります。
例えば、太陽の重力はとても大きく、脱出速度に秒速617kmものスピードを要します。
もし、太陽(直径139万km)をそのまま直径6kmまで圧縮した場合、脱出速度が光の速度である秒速30万kmを超えてしまい、ブラックホールになります。
星が誕生したら、時間が経つにつれどんどん膨らんで劣化していきます。太陽の8倍より質量のある重い星の場合は、超新星爆発を起こします。
その星を構成した物質は宇宙空間に飛び散るのですが、その際、いくつかの物質は爆発の反動で押し縮められ、芯(中性子星)が出来ます。
中性子星の質量が大きいケースでは、大きさが縮められていき、そうなると更に重力が大きくなり、脱出速度が光の速度を超えるとブラックホールになります。

©国立天文台
ブラックホールからは光が出て来られない為に直接目で見えませんが、物質が引き込まれる際に位置エネルギーが解放されてX線やガンマ線などの電磁波を出します。
去年の4月10日、地球から5500万光年離れたおとめ座の銀河M87の中にあるブラックホールを初めて電波望遠鏡で捉えた画像が公開されました。このブラックホールの質量は、なんと太陽の65億倍もあるとみられています。
Credit: EHT Collaboration
我々太陽系が所属する銀河系の中心にもブラックホールがあると考えられていました。
銀河系はアンドロメダ大星雲のような円盤状になっているとみられ、我々太陽系はその銀河の端をまわっています。
夜空に見える天の川は、我々が所属する銀河を見ている事になります。
©アストロアーツ
銀河系の中心を観測するとX線やガンマ線などの電磁波が飛んで来るのが分かります。
天文シミュ―レーションソフト・アストロナビゲータを使って、マルチバンド星図で銀河系の中心方向を見てみると、紫外線などの電磁波が集中的に存在する事がわかります。
アストロナビゲータ11
1974年、天の川銀河の中心(いて座)方向に、非常にコンパクトで強い電波源が発見されました。
それは地球から26,000光年離れている所なのですが、天の川銀河の中心核付近とほぼ同じ距離にあたります。これを「いて座A*」と呼び、世界中の天文学者がこの天体に注目しました。
Credit: NASA/CXC/Caltech/M.Muno et al.
その後観測技術が向上し、「いて座A*」の近くの天体の動きまで観測できるようになり、ガスや天体が「いて座A*」の周りを秒速1,400kmもの速度で周っていることが観測され、いて座A*が非常に重く、強い重力が周辺に影響を及ぼしている事がわかりました。
※上写真右上の丸印は、「いて座A*」が過去に放出したX線が周囲のガスに反射している様子です
今回、ノーベル賞を受賞したゲーズ氏率いる研究チームは、1990年代中頃から20年以上ずっと「いて座A*」の研究を続け、「いて座A*」の近くに存在する28個の星の軌道を精密に観測しました。その結果、「いて座A*」は太陽の400万倍もの質量を持つ巨大なブラックホールであることが明らかになりました。
この事は同時に、”超巨大ブラックホールがこの世の中に実在するという証拠”を明示したという事になります。
その功績が称えられ、今回のノーベル物理学賞受賞となりました。
Posted at 2020/10/09 16:45:18 |
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