
今や歌謡界の大御所のような?聖子ちゃん、その昔の歌い方を聴覚でアナトミーしてみました。
声帯の魔術師って勝手に呼んでますが特に昭和アイドル全盛期時代、80年代前半頃の歌い方、当時はその凄さを知る術もなく、そんなに興味がなかったのです。
改めて聴くとやはり魔術、アイドルの清廉なイメージと裏腹過ぎる超絶さ、そして濃さ。
ここまで細かい技を散りばめていたなんて、比類するシンガーは果たして居るでしょうか。
見事な歌マネができる人なんてほぼいない?
自分の耳の衰えも確かめるため、それからいろいろと軽〜く手を入れた自車のスピーカーの状態を確認するため、「野ばらのエチュード」のサワリ60秒、更にその中で歌ってる時間の約30秒だけで再度お試ししてみます。
音源はサブスクの普通のHD音質で拾ってます。ヘッドホンの方が確実に拾えますが、クルマでもギリ何とか。
Boseスピーカーの一部を変えたり追加もしてますけどMOPでないPioneerの方が声の機微を拾いやすいのかも…
純正Boseの場合、ツイーターは異種混合の高音部再生は厳しいですし…
一般的な歌詞をネットで探ると以下の通り。何の間違いもありません。
「トゥルリラー トゥルリラー 風に吹かれて 知らない町を 旅してみたい
トゥルリラー トゥルリラー ひとり静かに 愛をみつめて 20才のエチュード」
(作詞:松本隆 からの引用)
これでは魔術師が使うテクニックを分解して見つけるのにはわからないので、全てをひらがなとカタカナ表記にバラします。
その上で以下のようなテクと記号の組み合わせを、使われているポイントに配してみます。
(これ以外にも小生の知らないテクは沢山あると思われますが)
大文字:顕著にわかる
小文字:微細でわかりにくい
Aa アクセント(強く発声、アタック)
Bb ベント(シャクリで音程上げ ↑)
Cc カット(延ばした後で声帯を閉じる)
Dd フォール(ベントの逆 ↓)
Ee エッジボイス(一瞬の呻き)
Ff ファルセット(息漏れの様な柔らかい高音)
Gg 走り(立ち上がりが早い:赤いスイートピーの一声目 「は〜」が0.1秒くらい早い)
Hh ヒカップ(発声しながら声帯を急に締めてキュッ:ガラスの林檎のサビの「ガーッ(キュッ)」)
Jj 甘えたベタ声(声帯か口腔を横に拡げてる)
Ll レイドバック(立ち上げを遅らせる)
Mm タメたマ行
Nn タメたナ行
Pp ピアノ(アクセントの逆 弱く発声)
Rr タメたラ行
Qq 声帯開けたままのスタッカート(Sweet Memoriesの歌い出し)
Xx 声帯閉じたスタッカート(天使のウィンクのメロ部歌い出し 「お・ん・ぷ・の」 または閉じた声帯をいきなり開けて強く発声)
Tt トーンダウン(声量の引き)
Vv ビブラート
Ww ウィスパーボイス(ファルセットよりリラックスした中音)
これらを「野ばらのエチュード」の歌詞に差し挟んでみます。
トゥx ウルリラーjv
トゥルリラーV
かbf ぜにv ふかれてV
しらなーc いーまーAh ちx を
たーc びq しーac てーみq
たーc いーwv
トゥウb ルリラー
トゥルリラーjv
ひーabc とりー しずかにーv
xあいをvー みx つーAh
pめq てq
はーv たe ちーc nの
エーav チュウq ドーTWv
数えたら30秒弱を歌う中で40くらいテクってました。その殆どが目立たないながら、1秒に1つ以上は入ってる事に。
特に声帯の瞬間的な開け閉めや声の強弱のコントロールは魔術レベル?
ある時は次の発声の前のタメとして閉じたり、ある時はスタッカート的に使いわけている様にも感じます。
いきなり冒頭のトゥルリラーも「トゥ」の後で切って次の「ウ」をはっきりと立ち上げて。歌詞では切れてませんが発声では2つに切って、この間で声帯を一度閉じてます。
この様な一瞬でありながらも確実な声の操作から小気味よいキレも生まれつつ、微細なヒカップhやエッジボイスeが隠れたスパイスに。
何となく聞いてると何が起こっているのかよく分からないのです。
改めて聴くとあちこちにワザが散りばめられていて、全部が揃って集まっての表現力=隠れた魅力=無敵のアイドルの秘密だったんですかねぇ?
一聴して何の特徴も無さそうで平板な「小麦色のマーメイド」
すーc ずーc しーb
xげなx あーaB
でx えっq きー
ちぇーwv ぁx あーjBv
ひーc とーc くbx
ちーのx おー
りーんーごq しゅーp
プーc ウーc ルーにq
とx おーabc びq こーwc
むwq あーjbc なq たx あーjb
こーc ゆーc びー
でなx あーab げー
きx いq すaq
出だしのメロ部はスタッカート系でほぼ一音ずつカットされてますが、このあとのサビへ向かう部分はもっとテク盛りで圧巻です。
「ガラスの林檎」もゆっくり目の曲なのに、一音一句一声ずつに分解したら凄さを発見。
各音のカットだけでなく、ほんの微細なレイドバックがあちこち散りばめられて、更にさりげないベントとフォールが効いて、追いかける作業が大変です。
歌い方や発声の癖と言えばそうかも知れませんが、例えば電子機器の様なものに元の音符と歌詞を入力してそのまま機械に歌わせるような、マコトに味気ない歌わせ方をしたときに、生身の声との違いを比べると震えるだろうと思われます。
その昔高山で夜空を見てたら、目が慣れてきて次第に星がたくさん見えて来てビックリ、そのまま見続けてたら更に見える星が増えて、そのうち夜空が目に眩しく見えてきた事を思い出します。
80年代後半、何となくしか聴いてなかったな、勿体ない事をしたな。
数十年後にしみじみ後悔。
テレビによく出てたから都度歌い方が僅かに違ってたはず。
はて25年末の紅白のこの方の歌を後でテレビでたまたま聴く機会があったので、折角ならとまたもや密林音楽で初期の「青い珊瑚礁」のサワリ(80年代音源?)も聴いてみました。
あーaH わq たq しq のーAH
こーいはーV
みーなーみ のーDv
かぜにのっ てp はq
しぃa るわーAVh
あーa
あx おx いーc かーH ぜーV
きぃっ いh てD
はe しれq
xあ nの しg まd へーv
出だしからアタックの強い発声が目立ちますが更に盛大なヒカップが畳み掛けて炸裂…
何てパワフル
また「はe」は 、「はx」とスタッカートになりきらず、声帯を閉じる前に声がやや漏れつつ濁るのでヒカップでなくエッジボイスになってて。まあこれは意図しているのか分かりません。
紅白のテレビの歌い方と全然違いました。どちらが上手いとか言うのでなく、とにかく違うので面白過ぎる。
「風立ちぬ」を聴いたらこのような歌い方の特徴はあまり目立ちませんね。あの作曲家の歌唱指導なのでしょうか。らしさが敢えて封じられてるような気がしますが、発声のアタック感はあります。
また以前のブログでも触れた「白いパラソル」、この歌い方も全体的に盛り盛りですが、その中に約1秒で1音符1文字を歌う間にテクが3つ入ってる箇所があったり。
あゝ魔術師の技、あからさまな技に見えず目立たない、でもてんこ盛りに散りばめられて。
なおこの後だったか喉を不調にされて、治療されてから発声の圧を弱めて繊細系に変わったとか。
赤いスイートピーが転換時期でしょうか。小麦色のマーメイドや野ばらのエチュードもその後の様ですね。
ま、声を抑えていてもテク盛り過ぎて、深いわ凄いわ飽きないわ。
アレコレ和洋シンガーを聴いても、こんな人に未だに出会えません。
クルマでもハイパワーや高トルク=楽しいクルマ でないのと同じです。
ところで男性ならBruno Mars の
When I was your man
なども解剖したら面白そう。
エッジボイスからそのままハスキーな濁りを引っ張ったり、アクセントにピアノにカットにと変幻自在に歌っていて、沢山の聴きどころが入ってますね。
聴きながら「なんじゃコリャ!!」と。
どの歌手もそうかもしれませんが、声の圧が継続して高かったりテンポが早い歌はテクがあまり乗せられませんね。スローな方がワザに差が出ます。
それにしても80年代聖子ちゃん、圧倒的に時間あたりのワザの数が多く、かつ微細でわかりにくい。
これらを十把一絡げにしたかのように「キャンディボイス」とかっても言われてました。
そのキャンディな声は成分分解して分類すると、謎解きする様な醍醐味がありました。