クルマの仕様から見ても、登録台数から見ても、稀有な存在と言えるこのCX-60。
全身ブランニューではなく、脈々と自動車産業界で鍛えられ続けてきた、枯れて熟成された技術の上に、新しい制御技術やら車体技術などなどがセットになった典型のようなモデルに乗れるチャンスがこれからも続いていくのか、いよいよわからなくなってきた昨今ですが、選択肢としてその価値と希少性はなかなか高いかなと思って乗っています。
・直6ディーゼルターボエンジン: 実際に回すとシルキーさよりパワーを感じ、音が多少うるさくても(と言っても静かな部類? 静音化したのでもはや評価できません)、軽油の安さと燃費の良さは癖になって抜け出せない。 クリーンディーゼルという名目で環境負荷も高くない!と言い訳しつつ、本音は燃料コストを大きく気にしなくて良いから、遠慮なくドライブに出かけられる。 よって車が身近になって、遠くの街も心理的・身体的に身近になった。
一般道でも高速でもゆっくり流せば燃費は20km/Lを超えるし、おまけに3300ccターボだからアクセル踏めばやたらと早い。エンジンにカウンターウエイトやバランスシャフトなど要らないし、カムシャフトも少ないのでエンジン重量はV6の比ではない。 それもあってか低回転のトルクと言うより、上の方の回転が快感で振動も少ない。
欧州の3リッターディーゼル車の半額程度で買えて燃費が2倍くらいなんて。 こんな車、探しても他に見当たらない。
・トルコンレス8AT: 3速以上はショックがほぼなく変速そのものを意識しない。街乗りでの1-2-3速のギクシャクは良く話に挙がるし、たまにシフトショックを感じる時もある(くらい改善はされてる様子)。
Web上では少し古いけど、CAR and DRIVERの2023年4月3日の記事や、日刊カーセンサー 試乗レポートの2022年12月21日で、メルセデスSLのAMGトルコンレス(スピードシフトMCT)の記事を読むことができるが、CX-60初期とほぼ同じことが書かれている。 一般的にトルコンレスのコントロールは難しそうと解釈。構造上の問題が大きいかも。
けどCX-60なら今や改良版では問題ないレベルなのかな。
そもそもトルコンレスATって、毛色の少し違うクラウンを除いて、アストンマーチンDBX707、メルセデスAMG SL、そしてCX-60/80と、実質3車種程度しか量産車で存在しないのでは? これもある意味稀有な存在。
・駆動方式: 自車はFRでありモーター駆動補助なしです。SUVでFRなんてどうなの、と言うご意見もあるようです。
わからないでもないですが、ではSUVなのになぜFFなの? という質問と同質かなと。まあ個人の好き嫌いでしょうね。
小生の場合は4WDは不要でした。というかむしろFRに乗りたかったのです。
だってSUV=Sports Utility Vehicle、運動性能が高くて使い勝手も良いという事。悪路走破性には触れられてません。
ちなみにエンジンの有無にかかわらず、EV含めて後輪駆動が設定されているSUVを探すと、Tesla Model Y、BMW Xシリーズ、Mercedes GLC、VW ID.4、Audi Q4、VOLVO XC40、BYD Sealion7など電動化も含めて増加中のようです。
レイアウト上の制約もあるかと推測しますが、後輪駆動の前輪操舵車はやっぱりハンドリングが良いのです。これまでFF車に慣れてて、こんなものかと思ってましたが、いろいろな局面でFRは素直で自然で、なんだか自由。操作に縛りや詰まりを感じにくく思い通りに動くことが多いです。
恐らくFRベースの4WDも同じでしょう。
・フロントダブルウィッシュボーン&リヤマルチリンク: 現物や雑誌の写真見てるだけで一般的なSUVと訳が違うほどの凝り様。 コストをかけてそう・・・
ピロボール云々とか初期インプレでは多くの方が騒いでましたが、自車はFRだったのでゴツゴツも突き上げも元々ひどくなかった印象。
それ以上に、イキって煽ってくる小型の車(多分FF)を下りのヘアピンでも置いていける足がとにかくすごい。
そしてSUVでフロントダブルウィッシュボーン&リヤマルチリンクが選択できるモデルも稀有(というかこの価格帯ではほぼ存在しない?)。
もちろんネガな部分が無いわけでなく、シートのホールド性は動力や足回りの性能に見合ってなかったりします。形状は他のSUVとほぼ変わらないので、特殊ではないのですが。(CH-Rのシートの方がホールド性良い)
またディーゼルの振動や、固めの足回りが要因と思われる振動・異音の発生も比較的多いのかもしれません。振動や温度/湿度などの変化が継続すると、素材・部材なども膨張・収縮やたわみ、ゆがみ、ずれ、反り、ヘタり等々と相まって、次第に震える箇所が増えてしまうかも。ディーゼル車あるあるです。
とりあえず処置はしたのでこのまま増えねばありがたい・・・
一番の大きなネガといえば、エンジン・ミッション・サスペンションなどの性能が日本の交通環境の中で理解を得にくかったり、性能を味わいつくせない事でしょうかねぇ。そんなこと言ったら日本でBMWやMercedesなんかの性能を乗る意味も微妙になりますが、通勤などで街中の渋滞と高速160~200km/h程度の巡航を毎日フツーに繰り返す環境にも馴染むと思しきこの車の性能を少し持て余してるかもです。
まあその性能とセットで考えられたはずの衝突安全性能も、世界基準に照らして高く評価されているので、そこは密かに良い点だと思います。
旧コメント
------------
乗り出して1年半が経過しての振り返りです。
17年も乗って足もヘタれたミニバンから乗り換え、世間ではCX-60は足が硬いのとの評判が多く、私の場合FR車を選んだのでリヤにスタビはないため多少柔らかいのでしょうけど、どんなものかとおっかなビックリでした。
納車したすぐ後の、こなれてない足回りで感じたのは、
「もの凄く剛性の高い乗り物に乗ってる感じ。 でもこの足回りの一体どこが硬いと言うんだ?」
もうしばらく乗ってみると、
「何ならもう少し足が硬いほうが好みなんだけど」
ヘタれたミニバンから乗り換えた時の印象でした。
突き上げとか多少はあっても今に至るまで大して気になりません。
エンジン音はやや耳につきます。高回転時にスピーカーでエンジン音出すなら、エンジンそのものの音はもう少し遮音してもいいのでは? これも今となってはセルフ静音化で対応済みですが。
まあ、もとより直6はそんなに静かでないことは承知の上。かなり昔ですが、メルセデスW124のガソリン直6を借りてシュトゥットガルト近郊の山岳路とアウトバーンを走り倒しましたが、ペダル踏んで回すと直6が唸るは叫ぶはうるさいは、フル加速時のトルコンATの変速ショックも初心者の運転するマニュアルミッション並の衝撃。(でも足回りは何しても破綻しない)まあ時速0kmから200km超を4速ATでカバーしてた時代。ジャガーXJの5リッター超のV12エンジン車でも3速ATを積んでた時分の話です。
それと最新の車を比べちゃいけないですけどね。世の中にハイブリッドやEVが増えつつある昨今、8速ATを積んで低回転領域での静粛性や燃費向上を目指すならば、もうちょっとエンジンも遮音してよい時代かもと。
そのCX-60も、その他の動力系の音や、変速ショックはありますが、そんなに騒ぐほどでもないかなぁ。
最近レンタカーで他社の車などを乗りますが、ハイブリッドであっても無くてもそんなに特徴らしい特徴はなくて(多分敢えて消している)、いろんな意味でもThe 日常… その中で今のところホンダ車は、普通に乗ってても、ああ、こうしたかったんだーと体でいいなぁと感じるものがあります。
言葉で説明できませんが、車種に限らず乗ってて車側から投げかけてくる何かがあります。CX-60もその仲間です。
で、CX-60の場合、当初個人的に一番気になった事を挙げれば、FRっぽさを感じないことでした。コーナリングや加速でもこれぞFRという感覚が少ない安定志向なので、ペースを上げて確かめようとするとトラコンが介入してきて、あれ、早くね?と。(最近は介入が遅くなってる気も…)
それも後ろにロアアームバーを入れて、感覚としてはFRを取り戻した様に思いますが、それがなかったらFFとか4WDと言われても分からなかったかも。
まあ他に細かい改善してほしい点は幾つかありますが、もはや好みの領域。みんカラの多くの方にヒントをもらって手を入れる楽しさも、バイク以上にあります。
いろいろ世話を焼いて、乗って、車が身近になる、そんな車です。
無造作に足を突っ込んで歩き始める靴でなく、紐の結び方やソールを好みに調整して足と一体化する靴なのか?