2020年10月19日

先日、ひさしぶりに某所で機械式
腕時計をみせてもらってきました。
ひさしぶりなのは。
機械式腕時計の趣味は最新が最良とは
全く言い切れず。
なんか気持ちが離れていたからです。
期間をあけたから少しは楽しめるかも
と思ってのチェックです。
で、某有名ブランドの複雑時計を
みせてもらいました。
普通なら数千万級の複雑機構を
ふたつ載せて、お値段は今までの
10分の1程度という。
超複雑時計を普段使いできるように
みたいなコンセプトの腕時計です。
外装の加工品質は素晴らしくいい。
鏡面ポリッシュとヤスリでつけた
ヘアライン(つや消し仕上げ)の
ふたつの面がとても美しいです。
何よりもその角の部分。
ほぼ面取りナシですが。
ケガしない程度に絶妙に角を落として
います。
数を作るならごまかせるように、
丸あるく仕上げたほうが楽ですが、
あえてそんな逃げ方はしていない。
値段考えたらたいしたもんです。
で、複雑機構が複数載っているの
ですから本当にがんばってます。
もうスイスメイドの腕時計としては、
超価格破壊なんです。
クルマ買えるほどしますが。
家買える価格からそこまで
コストダウンしたのはスゴいと
思います。
でも、これを腕時計ファンとして、
安易に喜べるかといいますと。。。
そうでもない。
コストダウンはなぜできたか。
ひとつは最新のNCマシンや
3Dプリンターなどの登場で。
億単位の年俸を出すべきスイスの
超一流時計師に頼る頻度を落とせ
たのだと思います。
でも、それは他社もやっています。
では、なんでこんなに安くできるか。
携帯電話やタイヤと同様のことが、
このジャンルでも起こっている
ようです。
確かに腕時計はスイスメイドでは
ありますが。
キーになる超高級メカをあの国の
メーカーに発注して。
パーツ全数の何十パーセントは
スイス製造。組立もスイスで。
だからスイスメイドの腕時計ですね~
みたいな手法でコストダウンしている
わけなんです。
でも、スイスという国のスゴいのは、
スイスの腕時計のブランドイメージ
を落とさないように、スイスメイドの
定義を厳格に決めて、全て外国に外注
とはならないようにしていること。
一番儲けるのは自分達という仕組み
作りがちゃんとできていることです。
これにより高級イメージをキープ
し続けているわけです。
とは言うものの。。。
あの国が同じ物が作れないか?
これはどうなのか?
はっきり言うと、ぜんぜん作れる
技術を持っています。
多くは偽物、模倣品のレベルで
突っ込みどころ満載ですが。
あれだけたくさん人がいる国です。
優秀な人もたくさんいます。
機械物はどんなに複雑でも、
目で見えます。
ゆえに同じ機構は作ろうと思えば、
作れてしまいます。
ましてや製造委託して、本物の
作業を経験してしまうと。
もっと良くする方法も見つけだす
ことでしょう。
そんな人達の中には、超高級腕時計の
作家、芸術家としてやっていける人
もたくさんいるようです。
彼らには作れんやろう。
できるわけはない。
そんな風にナメていたら。
いつの間にか何でも作れるように
なっていたりするから困ります(涙)
事実、ヨーロッパならば1000万円級
の複雑時計を10万円前後で多数発売
しています。
ちょっと前までは、動作は完璧でも
芸術的装飾はNGな物が多かったの
ですが、最新作はすでにヨーロッパや
日本もヤバいと思わせる物がありま
した。
サービス残業禁止。
休みを増やせ。
給料を上げろ。
労働者の権利が守られて、
コンプライアンスを過剰に
守り過ぎみたいな世界が
できつつあります。
結果、コスト上昇、納期がのびる、
開発期間短縮なんてとても無理。
一方。。。
「明日朝までにサンプル作って
持ってきます。」
みたいな開発速度で動く某国ライバル
メーカー。しかも安い。
そりゃあ仕事とられますよ。
コンプライアンスの遵守。
労働者の権利を守る。
これは悪いことではないけど。
開発速度とコストダウンが成功
しなかったら、会社潰れて
しまいますからね。
だから、協力する気持ちは大切
だと思うんですよ。
「みんなのために僕がんばります
ので、定時後でも休みでも気にせず
なんでも言って下さい。」
こんな気の利いたことが言える
若者がいっぱい出てこないと、
マジで日本沈没しますよ。
もちろん、僕達おっさんも
「ここは俺達にまかせとけ。
必ず高いブランドイメージを
売りに、少しでも高値、良い
条件で仕事とってくるからな。」
みたいなドラマみたいなやり取りが
ないとね。。。
政治家にしても、企業の幹部に
しても自分が任期の間だけ稼が
せてもらったら、それでいいわ。
みたいな人ばかりなのが残念です。
癒されるために腕時計をみるつもりが
かえって凹むという悲しい感じでした。
そんな中、唯一気分が良かったのが
この腕時計(ムーブメント)が
日本のメーカーから登場し。
しかも多くの人が買いやすい
ステンレスケースモデルも
発売されるという情報です。
まさに吉報です。
フリースプラングのテンプ。
巻き上げヒゲゼンマイ。
テンプ両受けのブリッジ。
美しい装飾。
本場スイスでも100万の桁の腕時計で
これと並べられたくないと思う
ブランドは少なくないはずです。
もう採算度外視でやっているとしか
思えない腕時計です。
本来はもっともっと高値で取引
されるべきスペック、装飾だと
思いますが。。。
日本人の技術者、職人も
まだまだ負けないぞ!!
そんな気分にさせてくれる
素晴らしい作品だと思います。
Posted at 2020/10/19 09:30:13 | |
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