
新車をローンで購入する方の比率に関しての公な統計はありませんが、ディーラーのセールスマンの感覚によれば、およそ半数(50%)の方がローン(クレジット)で購入するという事です。これに加えて、ディーラーを経由せずに銀行・信用組合等のローンを活用する方もいらっしゃいますので、半数を超える方がローン(クレジット)を活用して新車を購入するというのが現状でしょうか。
最近の傾向として、就中、残価設定ローンを活用される方が増え、ディーラーも残価設定ローンを一押ししていますので、今後、残価設定ローンを活用する方が一層増えていくものと想定されます。
さて、この残価設定ローンですが、これまで様々な見方がされていて、危険・要注意であるという意見が主流となっています。そこで、今回より数回にわたり、残価設定ローンを徹底検証してみたいと思います。
(1) 何故ディーラーは、残価設定ローンを薦めるのか?
令和元年を迎え、平成の時代を振り返ると、平成2年(1990年)に777万台だった国内の新車販売台数は、平成30年(2018年)に527万台とおよそ30年間で250万台も減少し、3分の2の規模まで市場が縮小しています。この結果、新車の販売台数で収益を獲得してきた自動車メーカー・ディーラーは経営戦略を転換せざる得ない苦境に立たされています。
所得の減少から、若者を始めとする車離れの現象も表面化し、新車の買い替えサイクルが7~8年間と長期化傾向にある状況下において、顧客の月々の支払い金額を減少し、新車の買い替えサイクルを3~5年と短期化させる残価設定ローンは、自動車メーカー・ディーラーにとっては、救世主的な存在と言えるかも知れません。生き残り策として、残価設定ローンの取扱比率を半数以上とする目標を掲げ、そのためにセールスマンに特別な教育を施しているディーラーも出現しています。
一方、定期点検・車検等のメンテナンスについては、これまではディーラーの価格が高く、独立系の整備工場等に逃げられることが多かったのですが、最近ではメンテナンス・パックと称し、メンテナンスの価格を大幅(40%前後も)に値下げし、顧客の獲得に努めています(以下、「表1」)。ディーラーは、残価設定ローンで車を購入した顧客に対して、定期的に自らがメンテを行えば、自力で車の品質を保ちかつ残価を維持できますので、下取り時の損失を最低限に抑えることも可能となります。
従って、セールスマンが(残価設定ローン+メンテナンス・パック)の勧誘に懸命になるのも理解に難しくはありません。メンテナンス・パックで契約が取れれば、顧客が半年に1度は、ディーラーを訪ねることとなり、セールスマンにとって、リコールのクレームに耐えながらも、お客様との良好な関係を維持しながら、いざ買い替える時には勧誘がしやすくなることも期待できます。
(次回に続く)
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2019/05/09 20:38:49