兄弟

少年：「その本 買うのですか？」
男：「いや ちょっと見てるだけさ……あっ そうか キミが買おうとしてたのか」
少年：「はい」

その本は 少年が買うには 少し高すぎた

男：ん…！？買うのを迷ってるな… 高すぎて買うのを諦めたかな？

男：ん？立ち止まったぞ！ やっと決心がついたか

店員：「はい 13500円です」
少年：「！！」

男：ん…お金が足りなかったのかな

＊ ＊ ＊ ＊ ＊

少年：「えっ？」
男：「いい方法だろ？本代を半分ずつ出し合って共有するのさ 実はボクも一冊しかない その列車の本 欲しかったのさ 」

男：「もちろんキミが先に見ていいさ そして 見終わったら今度はボクに見せてくれ… 実はボクにもキミと同じくらいの弟がいてネ 10年前 交通事故で死んじゃったけど 奴も とても列車が好きだったんだ」

＊ ＊ ＊ ＊ ＊

帰り道

男：「ところでキミは野球 どこのチームのファンだい？」
少年：「セネターズです」
男：「うん 今年もNリーグでは優勝候補だ」


男：「ひとつだけ弟の自慢話をさせてもらっていいかい 弟はリトルリーグで4番を打っていたんだ」


男：「えっ？ボクの住所？」
少年：「ええ この本を見終わったら届けますので」
男：「あっ そうかそうか 住所は 山下通り……」

＊ ＊ ＊ ＊ ＊

そして 数ヶ月が経った

おっさん：「確かにここだけど こんな名前の住宅は無いよ！？ それに 第一ここは…」

～ ボクの弟はね 大きくなったら パイロッツの4番打者になるのが夢だったんだ ～

“山下通り1丁目5の8”

それは Aリーグ パイロッツ（スタジアム）の住所だった

― わたせせいぞう ハートカクテル Vol.117 兄弟 ―

素敵な話がぎっしり詰まった漫画だった。
バブル全盛期の頃の作品だけれど、個人的には 人間の さり気ない思いやりと優しさの本質に触れた 秀逸な作品だなと思う。
当時の週刊モーニングをリアルタイムで読んでいた方には 懐かしい話だったかなw

優しくて小粋で素敵な大人ってぇのは 時代を越えても いつまでも色褪せないもんだなと思う。

---

追記：動画めっけた