ちょっと真面目なお話です。
先日、わが子の出生届がようやく受理されました。
本来、出生届は戸籍法第49条により、「出生の届出は、14日以内にこれをしなければならない」と定められておりますが、うちの子が登録されるまで16日かかり、2日ほど超過してしまいました。
これには、わが子名付けた「名前」に使われる漢字に原因がありました。
今回、無事生まれてきてくれた二男には、どうしても「龍」という漢字を名前に入れたいという願いがありました。
最大の理由は「辰年生まれ」であること。
なんだ、そんな単純な理由なの?と思われるかもしれませんが、実は長男も辰年生まれで、名前には「龍」を用いています。
ちょうど干支一回りで無事生まれてきてくれた二男には、辰年生まれだからこそ名付ける意味があり、長男と同じく「龍」を一字用いたいというのは、名前を決定する上で非常に重要な要素でした。
字の意味や字に込めた想いはもちろん、「長男と同じ字を一字使う」という事が非常に大切なことでした。
実際、生まれる前から幾つか候補はありましたが、命名までには誕生から1週間以上悩み、考え、様々な組み合わせと読み、音の良し悪しを繰り返しましたが、最終的には先の理由もあり決定して、家族の前で命名披露し、奥さんの体調を考慮して、自分の休みが取れた土曜日に家族全員で地元の役所に出生届を提出しました。
・・・・ところが、週明けに思いも寄らぬ電話が役所からかかってきました。
「すみません、龍という字は、そのままでは登録できないんですよ」
「修整をお願いしたいと思いますので、役所までもう一度来てもらえますか?」
最初は意味がわかりませんでしたが、とりあえず調べてみると、人名漢字として正式なものは「龍」の一画目、丁度漢字の「立」の一画目部分に当たる縦棒が、「ー」のような横棒になっているそうです。
当然、パソコンではそんな漢字は出てきません。
普段我々が使っている「龍」は一画目が縦棒の龍です。
龍
ですが、漢字辞書などの専門書籍やネットの情報では、正式な「龍」の字の一画目は横が正しいとされています。(ただし、常用漢字としては「龍」が正しく、両方とも同じ字として認識されています)
ここでふと疑問が。
じゃぁなぜ、長男の時には何も言われず、そのまま戸籍に「龍」の字が登録されたのか??
長男が産まれ、出生届を提出した場所は現在在住の市町村とは異なりますが、どうやら市町村の違いだけではなく、平成17年ごろから、法務省の方針で「人名漢字には正しい漢字を使用するように」という指導が全国の自治体にあり、以後、電算化されている地方自治体の戸籍には、法務省の指導に基づき正確な漢字が用いられるようになったようです。
自分が住んでいるところでも、聞いてみたら平成20年から統一して「横棒」の「龍」になったそうで、それまでに登録された方や、他の地域から転籍されてきた方については「縦棒」の「龍」でそのまま受理しているそうです。
初めに聞いたときは色々と悩みましたが、やはり長男の「龍」と字をあわせることに非常に重い意味があると思い、どうしても「縦棒の龍」のままで登録したいと思うようになりました。
そこでまずはネットで調べた結果をふまえ法務省に問い合わせしたところ「縦棒、横棒の字どちらを使うかは各自治体の判断にお任せしています」ということでした。
まずは最初に提出した地元の役所に「縦棒の龍」で登録できないか掛け合ってみましたが、システム的にどうしても無理、ということでした。
次に考えたのは、法務省が自治体の判断に任せていると言っているからには、まだ登録可能な市町村もあるはずです。要するに他の市町村に我々家族の本籍を一時的に移し、そこで出生届を提出することで、「縦棒の龍」で戸籍に登録してもらう方法です。
流石に遠方は難しいということで、近隣市町村に対応可能な自治体がないか、かたっぱしから近隣の各市町村役場の市民課に問い合わせしました。すると、幸いなことにすぐお隣の自治体で「縦でも横でもどちらでも受け付けている」という返答をいただき、その役場で手続きを行うことになりました。
手続きの流れとしては・・・・
まず、戸籍謄本を発行してもらい、転籍届を記入捺印し、本籍を以前の実家の本籍から一時的に登録予定の自治体役場の住所に本籍を移す手続きを行います。
次に子供の出生届をその移動先の役場で提出し、「縦棒の龍」を含めた名で受理してもらい、戸籍に登録します。
最後に、二男まで含めた戸籍謄本を発行してもらい、また転籍届を記入捺印して、一時的に移動した移動先の本籍から、元の本籍に再度転籍して完了、です。
結果として、二男は無事戸籍に「龍」の字で登録することが出来ました。
本来、非常に面倒なことであり、親の我侭といえばそのとおりなんですが、今回は双方の役場の職員さんが非常に親切に応対していただき、必要な書類、記入方法まで丁寧に教えていただいて、こちらの意図もしっかり承知していただいた上で手続きをおこなっていただけました。手続きにかかわっていただいた役場の方々にはとても感謝しています。
・・・・と、ここまで読んでいただいた方の中には「どうしてそこまでこだわるの?」とか「別に同じ字だっていうんだから、正しい字のほうで登録すればいいのに」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
先にも書いたように、「龍」の字を使うことには、同じ辰年に生まれてくれた長男と二男の字をそろえたい、という意図があり、戸籍も同じ字にそろえてあげたいという想いがありました。
いくら、デザインの違いがちょっとありますが同じ字ですよ、と言われても、パソコンでフォントの追加もなく出る文字と出ない文字ではやはり「違う字」として認識されていると思いますし、僕の中では「龍」と略字の「竜」の違いと同じくらい違いが有ると思っています。
その違う字を戸籍に登録されることはどうしても避けたかったのです。
もう一つ、戸籍に登録された字は、その人の正しい姓名として一生ついて回るものです。出生届けからはじまって婚姻届など人生の節目における必要な書類には、その戸籍に登録された名前で書く必要があります。
これらを、親の名付けの意図と異なる漢字で登録されることには大きな違和感を感じますし、普段は「龍」で使っているものが、その時だけ「横棒の龍」になるのでは、なぜそうなってしまうのか分からない本人がかわいそうです。
以前勤めていた仕事の関係で、結婚やその他人生の重要な節目において、苗字やお名前が「普段使っている字と違う」ために、苦慮されている方を何人もお見かけしてきました。
苦慮されている方には申し訳ありませんが、わが子にはその違いを回避できるなら「実用している字と名前の字の違い」という思いをさせたくないな、というのもありました。
ただ、これがもし、長男の時から「横棒の龍」が戸籍上使用できる人名漢字として唯一使えるものであったならば、受け入れていたと思います。2人とも同じ字で登録になりますし、それしかないと思えば諦めもつくものです。
しかし、ある一定の時から、しかもつい最近から登録の違い、しかも地自体によって異なる判断の状況の中で、地元の自治体では「横棒の龍」でしか登録できないという状況は、「だったら二人ともそろえてあげたい」と思うのが普通の親の思いだと思うんですよ。
そうでなければわざわざ戸籍を一時的に移してまで子供の名前の申請に時間と手間をかける必要はなかったと思いますし。
ちなみに、地元の役所に提出した段階ではまだ14日以前でしたが、一度出生届を受理前に取り下げ(戸籍登録前までならば取り下げが可能)て再度申請するまでに14日間を超過してしまったため、簡易家庭裁判所宛に遅延事件の事由についての答弁書を提出する必要もありました。理由は前記のとおりなんですけどね。
また、児童手当の申請も生まれた翌日から15日以内(月をまたぐ場合は翌月15日まで)に提出しないと1か月分の支給が無い為、これも生まれて16日目(丁度リミットギリギリの日)だったため、本当に色々とギリギリのタイミングでした。
いずれにしても、わが子はなんとか希望通りの名前で戸籍に登録できたので、親としてはホッとしています。
今後は「お前が生まれてきたときの出生届の提出は大変だったんだよ」と話せるときが早く来たらいいなぁと思っています。
そんな訳で、今後、お子さんが誕生されて、お子様のお名前に「龍」の字をつけたいとお考えの方は、事前に地元の自治体に問い合わせておくことと、登録可能な自治体に本籍を移しておくか、または登録可能な自治体の産婦人科でご出産されるように手配することをおススメします(汗
ちなみに・・・・・「慎」、「真」、「直」等も、人名漢字では上の縦棒の部分が、まっすぐよりちょっと斜めの縦棒になるのが正しいそうです。
う~ん、意味が分からん・・・・