
PHVには回生ブレーキがついていますが、電費を最大化するには、この回生ブレーキを最大限有効活用する技を身につける必要があります。
回生能力を超えるブレーキングをすると機械ブレーキが動作してしまいます。そうなるとせっかくの運動エネルギーを捨ててしまい電費が悪化することになります。
では、一体どのくらいのブレーキングまで回生ブレーキのみで減速できるのか?
回生ブレーキを最大限活用する方法としては、ハイブリッドシステムインジケータ(HSI)上の回生ゲージ表示がCHG上限を超えないようにブレーキングを行えばよいと取説に書いてありますが、どうもこの表示は嘘をついているのでは?と思うときがあります。回生ゲージがCHG上限を超えないようにブレーキを掛けているのに、Hybrid assistantのブレーキ表示が機械ブレーキの介入を表示していることがあるからです。
Hybrid assistantでは、ログデータの中に、全ブレーキ力(マスタシリンダでのブレーキトルク=回生+機械ブレーキ力指令の合計値)と、回生ブレーキ力(実行された回生ブレーキ力)があります。
これを分析することで、謎を解明し、回生ブレーキマスターへの道筋をつけたいと思います。
■回生ブレーキ動作領域の把握
まずは、なるべくブレーキの踏み方に強弱をつけてブレーキングを実施しながら、高速を含めあちこち走りHybrid assistantでデータ採取しました。
採取したデータを分析します。横軸には速度を、縦軸には全ブレーキ力(オレンジ)と回生ブレーキ力(青)をプロットします。
ブレーキ力(ブレーキトルク)は、負に大きくなるほど、強いブレーキということになります。
プロットデータによると、運転中の全ブレーキ力は最大-400Nm程度でした。ちょっと強めの減速をした場合にこのくらいになっているようです。ちなみに停車中目一杯ブレーキペダルを踏み込むと-1024Nmでした。
回生ブレーキ力のみを抜粋します。
全体的に、-221Nmでリミッタが掛かったようになっています。回生ブレーキはここまでで、これ以上のブレーキは機械ブレーキで補足となっていることがわかりました。
低速側は、10km/hから回生ブレーキはゼロに向かって直線状に絞られています。
ここも機械ブレーキで足りない分は補足されています。
ちなみに、HSI上で回生ゲージがCHG上限未満を表示していても、回生トルクは-221Nmで制限されて機械ブレーキが動作していることがありました。
速度50km/h以上では、回生ブレーキ力は-221Nmからさらに制限されています。トルク一定だと、速度が上がるほど回生電力が大きくなるので、電池側の充電制約による電力制限が存在していると考えられます。先日判明した充電側の電力制限値が最大-40kWでしたので、-40kWとなる速度・回生トルクのカーブを描いてみました。黄色線です。
回生ブレーキ力のプロットが黄色線に沿っていることから、50km/h以上での回生制限は、電池側の-40kW制限に起因するということがわかりました。
■HSIの回生ゲージの表示について
回生電力が-40kWのとき、HSIの回生ゲージは上限一杯の表示になります。50km/h以上の速度域ではHSI上限一杯のブレーキングで、-40kW目一杯の回生ができるようです。しかし50km/h以下では、HSIの回生ゲージ一杯のブレーキングでは、機械ブレーキ併用になります。(これまでHSIの回生ゲージが振り切れない範囲なら、回生のみのブレーキと思っていましたが・・だまされてました!)
つまり、HSIの回生ゲージは、あくまでパワーメータに過ぎず、-40kWを上限にそのときの回生電力を表示しているだけと思われます。
■どうやって-221Nm以内のブレーキングを実現するか
回生ブレーキの負担領域がわかったところで、つぎの課題は、運転中にどうやって回生トルク制限値である-221Nm以下のブレーキングを実現するか、です。わかりやすい指標が必須です。
そこで、平坦路で種々のブレーキ踏力で一定減速度で減速し、そのときの速度と全ブレーキ力・回生ブレーキ力の時間変化を分析しました。
なかなか一定減速度で停止するのは難しいですが、なんとかデータがとれました。
下図は、全ブレーキ力がおおよそ-221Nmで、ほぼ全回生負担となっているときのグラフです。このときの速度変化から、減速度は-6.0km/h/sであることがわかります。別の言い方をすると、1秒で6km/h減速するレートです。Gでいうと、0.17Gです。
ブレーキ立ち上げ、停止間際のブレーキ抜きを考えると、ちょっと余裕をみて、1秒で5km/h減速するレート(50km/hからのブレーキなら10秒で停止)でのブレーキングなら、全回生が可能であるということがわかりました。
いろいろわかったところで、5km/h/sのブレーキングをやってみました。下図左は訓練前、右は訓練後です。まだ-221Nmを超えるブレーキングも散見されますが、最大回生ブレーキ力を超えるブレーキングの回数は減っています。まだ訓練が必要のようです。
■まとめ
結論としては、回生ブレーキを最大限活用し、運動エネルギーを最大限回収する方法は以下となりました。
・50km/h以下:5km/h/s以下のレートで減速する。(1秒で5km/hの減速度)
・50km/h以上:HSIのCHGゲージが振り切れないように減速する。
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Posted at
2019/09/22 18:54:31