XFを買う前、インジニウムガソリンのP250と、フォードエコブーストの25tの違い、結構気になっていた。
というのも、うちの子を手に入れた時は、2017年モデルの新古車やインジニウム切り替えによる在庫車放出などあって、両方のモデルが市場に流通しているときで、どっちのほうがええのかなぁ?と悩んで、P250は試乗に行った経緯がある。
新車しかターゲットにない方にはあまり関係ないのだけれど、安く新古車をゲットしよう!とか、高年式の中古ってどうよ?っていう層にはこの違いってどれくらい差があるの?ということが気になるじゃないかとおもって記事を書いてみる。
前提として、ひとまず、今のグレードにはP200とD180とかあるけれど、そのあたりは置いておく。
P200は、ちょっと車格から考えるとアンダーパワーというか、523i相当のエントリーモデルだと思ってもらえばいいと思う。ボクは買う当初は「必要十分」だと思っていても「馬力たんねぇな!」っておもう性質だから、候補にすら上がっていないけれど。
また、D180は、エンジンだけかけさせてもらったけれど、まあよくある2Lディーゼルのスペック+αの割に、”比較的”静かだと感じたので経済性を考えるとコレ一択なのかも。
ただ、ボクとしては、やっぱりディーゼルの振動感が優雅な見た目のセダンやワゴンには合わないなぁと感じてしまうし、これまでの経験上、普通にのっていたら明らかにディーゼルのほうがよく走るんだけれど、速度が乗ってきたときの息切れ感がもどかしいし、ドラマ性を感じないのがどうも感覚に合わないので真面目に検討はしていない。
中古市場をみてみると、なぜかディーゼルモデルはかなり急激に値段が下がっているので、ディーゼル好きの方は色々選べてよいかも。
で、新エンジンのP250の印象としては、きわめて「優等生」なエンジンであるということ。
最近のダウンサイジングターボ的…といえばその通りで、ターボラグも感じさせず、淡々と回って、すーーっと速度が伸びていく。
どこからでも過不足なくパワーが盛り上がっていくので、兎に角落ち着いて走り易く、何故か車両感覚がつかみやすいXFの特性と相まってすぐに体に馴染むグレードだなぁと感じた。
また、振動の粗さみたいなものもあまりないし、回転感が生ぬるいというかロングストローク感がある気もするが、あまりエンジンを意識させない駆動系なので、正直、プラシーボ効果のほうが大きいかもしれない。
一般的な評価基準では洗練されているともとれるし、クルマバカ的には面白味がない、とも取れるエンジンといった印象だった。
ボクはどっちかというとクルマバカのほうなので、V6以上!と言いたいところだけれど予算の関係もあって、エコブーストの方が好きだったので、そちらを探して買いました。
実は、エコブーストの2LモデルはXJや旧XFで体験済みで、その若干荒っぽい性格と活発さが動物的、旧来のエンジン的で、ジャガーブランドが持つ「荒々しさ」の側面を体感できている”気分”になれて個人的には好ましく思っている。
”旧来の”と付けたが、このエンジン…中身は色々変わっていて英語版wikipediaなんかには「マツダと一緒にするな」と書いてあるけれど、まあおおざっぱに言えば、マツダのMZRエンジンをベースとしている。
MZRエンジンは、倒産しかけたマツダが、フォードに吸収された当時に開発を任されたエンジンで、開発期間を考えると基盤技術的には1900年代末〜2000年前後のものだと推定できる。
その後マツダ発のフォードグループの中核エンジンとして2002年に初代アテンザに搭載されたのが始まり…なので20年前、個人的にはダウンサイジングターボの先駆けと思っているDISIターボ化された当時から考えて15年前、エコブーストになってから約10年前から現役のエンジンということで、エンジン自体の”背”も高いし、”旧来の”感覚があるのは当然と言えば当然かもしれない。
当時のフォードグループはなんでもかんでも吸収して肥大化しており、その中で色々な車種に使えるエンジンを造れ!ってのもかなり無茶な注文だなぁ…とおもうわけで、出来上がったエンジンは、当時は特に尖っていたVTECや、まだ排気干渉が残っていたスバルのボクスター等と比べると、凡庸な性格にはなっていたと思う。
ただ、凡庸だからこそ、使いやすく、多くの車種に長い間活用されてきたわけだし、そのあと傾いたフォードが立て直しに使った「エコブースト」の基盤になったというのも面白い話だと思う。
どんどん脇道に話がそれるけれど、国産メーカーではマツダびいきのボクの色眼鏡で見てみると、このMZRエンジンと、同時期にマツダが開発したプラットフォームは、実は自動車業界の影の立役者のように見える。
当時の初代のアクセラにも使われたプラットフォームは、魔改造されてフォードC1プラットフォームという名前でざまざまな車種に使われてきたし、今もまだ人気のボルボV40も、素材の置き換えやアッパーボディの進化はあるけれど、このマツダ由来のプラットフォームを使っているし、エンジンはジャガーランドローパーだけではなく、ケータハム、ゼノス、モーガン等にも供給されてた(ハズ)わけで…マツダはなぜかブランド的に下に見られがちだけれども、技術屋視点・クルマ好き視点では色々面白い会社だと思う。
で…おおざっぱに言ってしまえば、そんな経緯のある枯れたエンジンにフォード由来の技術とターボをつけたのがエコブースト2.0なわけだけれど、基本骨格が古いが故に、今の高効率エンジンとは違ってショートストロークエンジンで、下の方のトルクが細くてシュンシュン回っていく。
VTECみたいにビーン!と小煩くまわっていく感じではなくて、若干の粘性と振動を感じさせながらシューーンと回る感じなんだけれど伝わります?
この辺はノンターボのMZRも同じような特性で、レスポンスよくふけあがって、中域でトルクが厚くなる実用エンジンだったので、その特性を残しているともいえる。
MZRとの違いは、ココに「デカイ車でも動かせる」ターボが付いたことで中〜高回転でのトルクがさらに増えて、所謂どっかんターボっぽさがあるのがエコブーストの特色だおともう。
それに加えて、振動も大きめで4気筒らしい鼓動感があるし、回っていった音も金属質というか雑味があって上品ではないのだけれど、それらが噛み合って、有機的な乗り物に乗っている感覚がして好ましい。
インジニウムより遅いし燃費も悪いのだけれど、ドラマ性があるというか、エンジンがブン回って過給されていく感じがわくわくするし、体感的な”速さ感”ではエコーブースト方が上なのが人間って面白いなぁ…と思う。
そりゃあNA-多気筒エンジンのほうがドラマチックで良いのだけれど、趣味に合って、サラリーマンが買える多気筒NAなんて、近年なかなかないし、V6物件などは、殆どターボ化されていて、エンジンルームギチギチすぎで、熱害で長持ちしない感じがヒシヒシと伝わってくるから、新車保証付きでも選びにくいし…。
じゃあV6-スーパーチャジャ物件があるじゃない?という事にはなるんだけど…やっぱり熱害が気になるのと、確かに魅力的な選択肢ではあるんだけど…ちょっと高い。
ふつうに買えない訳じゃないし認定中古ならお買い得感が高いのだけれど、サラリーマン的にはクルマエンゲル係数が高まりすぎで、嫁さんの単車買ったりとか、普段の紅茶や珈琲にコストかけられなかったり、他の趣味に回せるお金が無くなっちゃうよなー、現金一括で買うと貯金が底をつくなーとか、住宅ローンはもう少し早期圧縮しておきたいなぁ…というみみっちい悩みの末、ボクは25tに落ち着いたわけです。
ということで、まとめると以下のようになる。
・いまどきの優等生的ダウンサイジングターボエンジン車が欲しいならP250がいいと思う
・普段乗りのドライバビリティと経済性を重視するならD180でもいいんでない?良く知らないけれど(NVH問題は除く)
・ちょっと昔っぽいショートストロークエンジンでもOK、むしろ保証付きでフォードエンジンが乗れるとか最高やん!っていう人なら25tの認定
・お金に余裕があってブイブイ言わせるならV6モデル、本当ならこっちが欲しい
・P200は良くシラネ
・VTECはあまり好みじゃない
・スペックだけじゃ良さは分からない、人間って面白いね