夏の終わりかけの早朝、ガレージから静かに車を出す。
ゆっくりとエンジンを暖めながら、トンネルを抜け、山へと向う。
前後には、ほぼ車がなく、自分のペースで走ることが出来る。
そのようなとき、なぜかゆったり走りたくなる。
最初の上りのワインディング、エンジンを徐々に唄わせる。前回よりも少し踏んでみる。
いくつかのコーナーを抜ける。荒れた路面に揺すられ、もう少し、しなやかに追従する足回りが欲しいと思う気持ちにもなる。しかし、年に幾度と無いこのときのためにオリジナルを崩すことのほうが惜しいと感じる。ストレートではレブカウンターがリミットに当たり、ギアは自動的に次に送り込まれる。そのような時でもストレス無く軽々と回りきるエンジンが気持ちよい。
峠の下りで頭も車もクールダウン。Rの大きいフラットな道。開けた窓から秋を感じる爽やかな風と、ストレート6のハミングが聞こえ心地よい。
そのまま気分はゆったりと、次の峠に差し掛かる。今日はほとんど他車に遭遇しない、と思った時、ルームミラーに一つのヘッドライトが映る。
追いつかれるのを嫌い、そうならないよう、ペースを上げて行く。しかし相手は大型バイクなのか、結構な勢いで徐々に近づいてくる。
バイクの射程に自車が入った頃、追いつかれるのを嫌う私にスイッチが入る。集落を抜け、里山を縫うワインディングが本日のステージ。
ステアリングを切り、アクセルとブレーキを蹴飛ばし、左右のパドルを叩く。タイヤはスキール音を上げながらも、電子デバイスが車を前に進ませ、ミラーに映る影は遠ざかっていく。
何も競うわけではない。後ろから追いつかれるのを嫌う私は、直線路で平静を保ち巡航する。大型バイクは車間距離をしっかり保ち追従。しばらくランデブー走行を楽しんだ後、レザーウエアで固めヤマハ製バイクに乗る彼に手を振り、「ありがとう」と心の中でつぶやき、別れた。
休日の早朝ならではの心地よいひととき。秋はもう、そこまで来ている。
※この物語は事実と異なり、フィクションであることをお断わりします。
Posted at 2019/09/16 21:31:11 | |
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