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2008年05月01日

河口まなぶ的GT-R論その2

河口まなぶ的GT-R論その2  もちろんこれを記している現時点で、我々は「日産GT-R」を知った後ということになるから、ここから振り返った場合には、かつて国産スポーツカーの性能をジャンプアップさせた大きな功績を持つR32スカイラインGT-Rもまた、単に速いだけの優れた機械ではなくなっている。現在の日産GT-Rを基準としてモノを語る場合、R32スカイラインGT-Rはむしろ、速いだけの優れた機械ではなくなり、そこにドライバーの介在する領域を持った味わいのある1台ということもできるだろう。

 しかし当時、R32スカイラインGT-Rは現在の日産GT-Rのように、それまでのスポーツカーの常識を覆していた。例えば同じ年にマツダからユーノス・ロードスターが登場していることを考えれば、最もベーシックな部類に入るロードスターと比べると、R32スカイラインGT-Rはモンスターのようなマシンだったともいえる。そして僕を始め多くの人が、リアのスタビリティの低いFRのロードスターを操って楽しさ気持ち良さを覚えたり、それを操ろうとドラテクを磨いていた時、R32スカイラインGT-Rは普通に走らせても圧倒的にロードスターよりも速い上に、ある程度の領域までならば特別なことをせずとも当時としては信じられないほどの速さを生んでくれたわけだ。

 僕はその部分が嫌だった。スカイラインGT-Rというのは人間の持つ能力を何十倍、何百倍にも高めてくれた上で、さらにある程度ドライバーの腕をカバーしてくれる部分もあった(もっとも今からすれば本当に速く走らせるにはそれなりの操作が求められたともいえるのだが)。僕はそうした点に違和感を覚えたのだ。つまり僕の中には、自動車というのはあくまでドライバーが主役であり、主役の操作によって速くも遅くもなるもの、という考えがあったわけだ(もっともそんなことを言うほど腕があったわけでもないのだけれど)。しかしある程度のところまでは、主役の操作に頼らずともスカイラインGT-Rは相応のパフォーマンスを提供してくれるわけで、これが当時の僕には相当の違和感だったわけだ。

 例えばその後僕はサーキット走行会などにも参加するようになり、ビートやロードスターで一生懸命ドラテクを勉強し、何とかそれなりに走れるようになっていくのだけれど、そうして自分なりに苦労して積み上げた腕や速さなどは、スカイラインGT-Rに乗り換えれば涼しい顔でそれ以上の走りがこなせてしまうのだということを嫌というほど教えられた。もちろんそこにはスカイラインGT-Rを買えないからこそのコンプレックスがあったことは間違いないし、クルマの速さと運転の上手さという本来比較することができないものを勝手に比べていたのだともいえる。つまり今思えばそれは、買えないし乗りこなせないからこそのヒガミでもあったわけだ。ただ当時の気分としては「見事だな。しかし小僧、自分の力で勝ったのではないぞ。そのモビルスーツの性能のおかげだということを忘れるな」という、知ってる人は知っているTVアニメのセリフと同じ感覚をドライビングにおいても持ちたいと思った(ってホント分かる人にしか分からない表現ですが)わけで、クルマの力に頼るでなく自身の腕で速くなりたい、という気持ちがあっただけに、余計にスカイラインGT-Rを嫌だと思っていたように思える。ま、ようは腕もなければスカイラインGT-Rを買うこともできなかった、ひとりの若者のかわいい心の叫びだったのだ。

 しかし若い頃の想いはとても純粋で、その後の自分の自動車観に長らく影響を及ぼしたことは疑いようのない事実でもある。加えて当時、自分が触れて親しむことのできたビートやロードスターといったコンパクトなオープンスポーツは現代の目から見ても、スカイラインGT-Rにはないスポーツカーとしての価値が備わっていたのも事実。それこそが、ロードスターが後に謳う「人馬一体」という感覚。つまりクルマとドライバーとの対話性ともいえるもので、これはクルマの動力性能や速さとは無関係に存在する上に、クルマを走らせた時に感じる楽しさや気持ち良さに直結する、実に価値のあるものに出会ったのだった。

 そしてこの頃から僕は仕事を本格的に始めるわけだが、この頃から自分の大好きなスポーツカー(の走り)において、最も価値があるものは人馬一体であり、クルマとの対話性であるという風に考えるようになった。そしてクルマとの対話性を究極的に味わうためには、クルマももちろんそうした要素を大切にするものが良く、それを操るドライバーのスキルも高くなければならない、と考えたのだった。

 そしてその後、仕事ではスカイラインGT-Rに触れられるようになった。もちろんまだ、このクルマを操ることはできなかった。そうした自身の腕のなさは棚に上げつつ、僕は小型軽量な後輪駆動こそがクルマとの対話性が高いものである(という考え自体は今考えてみても間違ってはいないはずだ)と同時にスポーツカーとして高い価値を持つと認識し、大きく重く4輪駆動のスカイラインGT-Rは好きになれずにいた。しかも大きく重く4輪駆動なのに恐ろしく速いという常識を覆すような事実もまた好きになれない要因だった。

 それからさらに時間が進み、スカイラインGT-RがR34にまで進化してもなお、僕は好きになれずにいた。今思うとR34スカイラインGT-Rは、4WDであるにも関わらず優れたステアリングフィールを持っていたし、ドライビングにおいても意のままに操れる感覚が相当に増した1台だったと思う。しかし当時はまだ僕に乗り切れるクルマでもなく、R32に比べればクルマとの対話性もより高まっていたにも関わらず、このクルマの主役はやはり「速さ」だったのも事実。よって僕はその部分に限りなく抵抗を示した。事実当時の僕が良く記していたのは「速さにはすぐに慣れ時間の経過とともに価値が薄れてゆくが、クルマとの対話性の高さとそこから感じる気持ち良さは永遠に価値が薄れることがない」ということ。今でもこれは間違っていない考え方だと思うが、当時はこれが、僕のスカイラインGT-Rに対するささやかな抵抗でもあったわけだ。もっともこの頃になるとスカイラインGT-Rは嫌いだったが、その性能の高さや実現する走りのレベルの高さに対してはしっかりと素晴らしいものだという風にも認識していた。といった具合で僕はスカイラインGT-Rを嫌いだと言い続けていたのだった。ようは嫌いのもとは、自分に対するコンプレックスが大きなものを占めていたのだ。
ブログ一覧 | GT-R論 | 日記
Posted at 2008/05/01 03:37:48

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この記事へのコメント

2008年5月1日 6:15
GT-R論、おもしろいです!
なんか、ブログで書いちゃうのもったいないような…。
でも、その3以降は○日発売の△○雑誌に掲載します…なんてしないでください。
そうだったら、買っちゃいますけど。楽しみにしております。
あと、IS-F論もいつかお願いします。
コメントへの返答
2008年5月1日 17:24
こくぞうさん、こんにちは。ありがとうございます。いやいやこれはブログのためだけに書いてますので、ここで最後まで記しますよ。長いですけど。IS-Fもやりたいですね~。
2008年5月1日 6:40
河口さん、はじめまして。

僕もNA6からはじまり欧州車をトッカエヒッカエ乗ってきました。
あなたがここで言っていた通りのクルマとの対話を運転しているときは常に考えています。それは営業車といえどもです。

そしてR35をひょんな事から乗るようになり、もの凄い加速とスタビリティに唖然として、つくづく凄いクルマだなと。それとポルシェやフェラーリオーナーも話題になっている国産車って初めてではないでしょうか?

「クルマとの対話性の高さとそこから感じる気持ち良さは永遠に価値は薄れることがない。」という言葉は今のところ、NA6しか感じることができていません。

R35に関しては、素人には乗りこなすことは難しいですが、所有する喜びや注目度を含めて魅力的なところを余すことなく、表現できている日本車はここのところの発表されたクルマの中では稀な存在ではないでしょうか。

コメントへの返答
2008年5月1日 17:25
ohyama3255さん、こんにちは。はじめまして。R35GT-Rは確かにおっしゃる通りのクルマだと思います。イマドキこんな存在は稀ですね。その点は同意であります。
2008年5月1日 7:19
>「速さにはすぐに慣れ時間の経過とともに価値が薄れてゆくが、クルマとの対話性の高さとそこから感じる気持ち良さは永遠に価値が薄れることがない」
非常に共感してます。

スポーツドライビングってまなぶさんが感じていた様に
「楽しさ≠速さ」ですよね。
レースでタイムを削るので無ければ、速い車を選ぶ必要も無いし
公道でスピードを出せばそれなりにリスクも高まる訳で、
低い速度でも楽しい車が良いです。
その点ロードスターは大変よく出来ている車と思います。

エンジンを掛けた瞬間、走り出した瞬間、コーナーを抜けた瞬間が気持ち良く
ドライブが終わると心地良い疲労感が残る車がスポーツカーだと思ってます。
コメントへの返答
2008年5月1日 17:26
すすむ@1424さん、こんにちは。共感いただきありがとうございます。そうなんですよね、心地よい疲労感ですね。
2008年5月1日 18:11
スポーツカーに求める物は人それぞれ好みがあるからNSX-RやS2000のようなスポーツカーがあればGT-Rやランエボ、インプレッサSTIのような車がある訳で……。

そんな日本で自分はS2000を選んだ訳で……。

色々なスポーツカーを選べる日本で良かったと思う所です。
コメントへの返答
2008年5月1日 22:55
みんがぁさん、こんばんは。そうですね、人それぞれ好みがあると思います。日本はそういう意味では珍しい国ですよね。
2008年5月1日 18:13
嫌よ嫌よも好きのうち!?
モビルスーツに乗ることで、自分がニュータイプであることに気付く場合も。。。
日産の大和!乗りこなしレポート今後も楽しみにしています!!
コメントへの返答
2008年5月1日 22:56
ポルカトさん、こんばんは。ん~、基本的に運転すること自体は嫌いじゃないですが…。ニュータイプにはなりたいと思いますけどw
2008年5月1日 19:49
そのTVアニメのセリフで捉えるなら
ガンダム=GT-R
シャアザク=ロードスター
というように当てはめることも…

峠道なんかでは腕の良さで対抗できますからね(^^)
コメントへの返答
2008年5月1日 22:56
アステローペさん、こんばんは。あはは、そういう風にも見る事ができますね。
2008年5月1日 20:42
すすむ@1424さんと同じく「速さにはすぐに慣れ時間の経過とともに価値が薄れてゆくが、クルマとの対話性の高さとそこから感じる気持ち良さは永遠に価値が薄れることがない」ってのにホント~に共感しますね。ランバラルの男気にも憧れますが…(^_^;)
コメントへの返答
2008年5月1日 22:57
万葉さん、こんばんは。共感いただきありがとうございます。ちなみに僕は今、ランバラル級な名言ができないものかと思案中です(ウソ)。
2008年5月2日 0:28
自分的な一般の庶民が言うのも何ですが・・。

自分も、R32を運転したことがあります。
それの感想は「意外に乗りやすいかった事」です。

「スーパーカー」が僕の原点なら、R32はすでに完成されたいたクルマだったと思います。それは、少し残念な意味になるのかも知れません。
コメントへの返答
2008年6月23日 23:18
★ 夜空の星の数だけ…。 ☆さん。おそレスすいません。なるほどぉ。その意味ではR35はさらに完成されたクルマということだと思います。
2008年5月2日 0:55
河口様はじめましてこんばんは。

私はこの年になってNB型ロードスターと出会い、同じような思いをしてる最中です(^^)
この話はブログだけでしか読めないのがもったいないですよほんと!!


コメントへの返答
2008年6月23日 23:18
チャリランさん、おそレスすいません。はじめまして。おおーそうですか、NBいいですね! 
2008年5月2日 1:54
こんばんは。
興味深く拝読させていただいております。

なるほど仰る意図がよく解りました。
性能の高さ故にドライバーのコントロールする余地が小さいところに違和感を覚えられたわけですね。

その気持ちは私も理解できます。
若かりし頃、友達のミラをドライブしたときに確かにワクワクしました。
その車の性能を使い切った満足感はありました。

ちょっと例えがちがうかな?(笑
コメントへの返答
2008年6月23日 23:19
terura2.0さん、おそレスすいません。そうなんですよぉ。使い切る感覚、というのはいいものですよね。

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