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■こうして予選は終わった。最後に清水がみせたアタックは、知らなかっただけに感動ものだった。辰己いわく、「このクルマを最も速く走らせる男」清水はそれを実践したのだった。

■そうして総合76位、クラス８位を手に入れ明日の決勝を待つ。チームは今夜はバーベキューパーティを行うのだという。いまの季節のドイツは、とっとも気持ちよいから良い夜を過ごすことができるだろう。

■というわけで決勝は現地時間の４時半スタート。それまでこのブログもしばし休憩。読み続けていただいた皆様、おつかれさまでした。僕も少し休み…たいところですが、いま宿に戻ってこれから原稿書きが…。

■予選が終わった後、辰己監督に話を聞いた。清水の最後のアタックに関しては、既に最初のアタックの時に無線でやりとりをしていたのだという。やはり辰己も清水が9分台で走れるだろうと分かっていた。辰己は言う。
「ニュルはドライバーの能力が高いだけでは決して速く走れない。実際、清水さんよりも上手いドライバーというのは何人もいる。河口さんだって筑波でたまに清水さんに勝つことがあるでしょう？　でもここでそれはありえない。ニュルは能力の高さだけでなく、経験、つまり周回数の豊富さがなければ速く走れない。しかもここはサーキットというより道の側面もあるから、いかにこの場所を知っているかが大切。これは経験にはかなわない。清水さんは能力があってコースを知っている、そして周回数が豊富だからこそ速く走れる。例えば100km/h程度のブラインドコーナーならば能力の高さだけでカバーできるかもしれない。しかしニュルは180km／h以上、200km／h以上で入っていくブラインドがある。これは能力が高いだけでは絶対に無理なんです」

■明日の豊富について。
「レースはとにかく何が起こるか分からない。だからあきらめずに挑戦しつづけるのです。確かにシロッコと30秒程度の差がありますが、だからやめます、というものじゃないし、それでも挑戦しなければいけないと思うのです。特に私たちは。やべるべきなんです。やる必要があるんです」

■予選が終わった。予選の終わりはプレスルームにいてブログアップをしていたので、結果はどうだったのだろうか？　少なくともプレスルームのモニターに、チームSTIの名前を見つけることはできなかった。

■そうしてチームSTIのテントに行くと、実は予選の最後に清水和夫がもう一度アタックを行い、9分53秒と10分を切って、総合76位、クラス8位にまで上がっていたことが分かった。

■実は清水は辰己に、「最後にもう一度走らせてほしい」という旨を既に予選の最初のアタックを行った時に伝えていたのだと言う。

■清水は言う。
「最初の予選の時に、牽引されたクルマに引っかかって自分の仕事ができていないことは分かっていた。俺の今回の仕事は1stドライバーであり予選のタイムアタック役。それができていなかったから最後に行こうと決めていた。それに最初のアタックの時に、絶対に９分台に入れるとも思っていた。昨日の予選が始まったドライの時に、ハードタイヤでサスも決まっていない状態で10分13秒出していたから、サスが決まってソフトタイヤならば55秒は切れると分かっていたんだ。もっとも今回のアタックも森の中で２台くらいに引っかかったから、ポテンシャル的にはまだ上かな。９分50秒くらいの実力がクルマにはある。もっともそれでもシロッコとは20~30秒近い差があるけどね。ただ、３ペダルのＭＴで戦っているのもウチくらいじゃない？　またサスペンションもまだ量産車の高さだし、レースカーになりきれていないから、そこをつめればもっと速くなると思うよ」

■明日への豊富は、
「今日までは１周のことを考えれば良かったけど、明日からは長丁場。マラソンが始まる感覚。だから最初から飛ばしてへこまないように、気をつけないと。あてるのはもちろん、あてられない、ペナルティを受けない。そういうことを気をつけていかないとね。あとは自分の身体が心配かな」
とのことだった。

■最も若手の松田晃司も、今年がニュル参戦２回目となる。松田いわく、いま自分がどの程度走れているかを常に服部さんと擦り合わせしています。とのこと。松田も国内でインプレッサを走らせてきたが、やはりニュルは特別な場所のようだ。

■国内でもお馴染みの服部尚貴。意外にもニュル経験は今回で2回目だという。今年は少し余裕ありますか？　と聞くと、昨年よりはマシだけど、やっぱりまだまだ。昨年はこんなところに二度と来るか！　と思うほど、ニュルの洗礼を受けたという。今年は、とにかく地道に走る。かっこつけようとすると痛い目にあうのがニュル、と謙虚なコメント。ベテランの服部をしても謙虚な想いを抱かせる。それほど、ニュル24時間レースは過酷だという証だ。