前回に疲れ切って途中で終わった評価試験解説の続きです。
おさらいですが、2019年度の予防安全評価ではおおきく
・衝突被害軽減制動制御装置性能試験
・車線逸脱抑制装置性能試験
・後方視界情報提供装置性能試験
・ペダル踏み間違い時加速抑制装置性能試験
の4種類の試験と
・高機能前照灯装備確認
の1種類の確認となっています。
前回は衝突被害軽減制動制御装置性能試験の説明をしましたので、残りの3試験1確認の解説をしていきます。
車線からうっかりはみだすのを防止する機能の試験です。
能力別に3種類の名前が付いていて、高性能の側から
・車線中央維持機能(LKA: Lane Keep Assist)
車線の真ん中を走り続けるようハンドル操作を補助
・車線逸脱抑止機能(LDP: Lane Departure Prevention)
車線からはみ出そうになればハンドル操作なりブレーキ操作なりで引き戻す
・車線逸脱警報装置(LDWS: Lane Departure Warning System)
車線からはみ出そうになれば警報を伝える(警報だけ)
と呼ばれる機能になります。
試験は、直線路を70km/hと60km/hで走行中に横方向に25cm/sとなるよう軽くハンドルを切ってラインを跨がせようとし、どの程度ラインからはみ出るかを測定する方法です。
その時アクセルはなるべく一定量、ハンドルは切って曲がった後はまっすぐに戻して手を放し車に任せる形になります。(片輪にブレーキをかけて引き戻すタイプの車はハンドルに手を添えたままでも良い)。
ハンドル制御タイプ(トヨタ アルファード)
ブレーキ制御タイプ(メルセデスベンツ Cクラス)
そして、ラインの内側と前輪の外側の距離を測定することで、はみ出た距離が出てくるわけです。
なお、試験時の車の速度は+3km/h以内、アクセル開度の変動は10%以内、横方向の速度±5cm/s以内の条件を外れると無効となります。一応目標物としてパイロンが置かれますが完全に手動の試験なので、テストドライバーさんの技量のすごさをまざまざと見せつけられますね。
車の後ろに子供が居ても、バックカメラなどでどの程度の範囲が見えるかを評価します。アメリカのNHTSA規格を参考にしているようですが、車近くでしゃがんた子供を試験に入れるなどより厳しい日本独自の試験となっています。駐車場などで子供に気が付かずに引いてしまったという痛ましい事故を起こす前に気付きを与えられるかということですね。
使用されるダミーは2種類の高さの円柱で、1~2歳児の平均身長を基にした高さ90cmのものと、しゃがんだ時を想定した高さ60cmのものとなります。この円柱は1~2歳児が収まるサイズとして直径30cmとなっていますが、平均肩幅にあたる20cm分の幅を黒く塗っています。
このダミーを車の後ろ側3段階の距離で置いて減点法で評価します。
近接エリア
車の後ろ側にピッタリくっついた状態での試験です。
60cmダミー(しゃがみ状態想定)を車の左端、中央、右端の3か所に置き、どこか一部だけでも見えないダミーがあれば減点します。
近傍エリア
車からちょっとだけ離れた30cm後ろ側での試験です。
6 0cmダミー(しゃがみ状態想定)を車の左右両端から30cm離れた位置2か所に置き、一定の大きさ(縦横20cm)以上見えないダミーがあれば減点します。
遠方エリア
車から離れた3.5m後ろ側での試験です。
90cmダミー(立ち状態想定)を車の左端、中央、右端の3か所に置き、全体が見えないダミーがあれば減点します。
また、画面上で一定以上の大きさに見えないダミーも別途減点されます。
近年問題となっている、いわゆるプリウスミサイルをどの程度防げるかという試験ですね。
前後それぞれにアクセルべた踏みで、ダミーなしの本来のフル加速に対してダミーありだとどれだけ減速できたかを評価します。
ダミーまでの距離は1m, 0.9m, 0.8mをメーカーが選択でき、距離が短くなると0.1点ずつ減点となる仕組みです。
これは日本独自の試験で会社ごとの考え方の差が見えますよ。
完全停止:スバル、トヨタ/レクサス、ダイハツ、日産
抑速のみ:ホンダ、メルセデスベンツ
ホンダを除く日本系メーカーは踏み間違えと判断したらとにかく止めるという思想ですね。
ホンダ、メルセデスベンツはアクセルを緩めて警告するけれど、誤検知かもしれないから止めるかどうかは運転手が決めてねという考えなのでしょう。
ただ、評価方法が〇△×の3段階で、5%でも差が出ていれば△という評価方法はいかがなものかと思います。そのせいで警報だけでノーブレーキに見えるVWポロが2点中0.6点も取ってしまっていますので、せめて減速率に応じた部分点とかもう少し改善が必要に見えます。
ポロの試験映像
唯一のカタログスペックの確認評価です。
いわゆるオートハイビームがついているかの評価で、
何km/hから作動するのか、
ハイロー切り替えだけか、ハイビームのまま先行車や対向車の部分だけロービームになるアダプティブタイプか
で点数が付きます。
ちょっと長いですが、アダプティブヘッドライトの解説映像。英文は無視して映像だけで理解できます。時間がない方は1分30秒あたりからどうぞ。
この映像ではロービームを含めて制御がかかっていますが、たいていの車はハイビーム部だけの制御です。
ということで、どのような試験や評価なのかの解説は以上です。
次回は実際に点数の計算をやってみます。
ブログ一覧 | 日記
Posted at
2020/06/11 03:00:40