コロナ禍により4月から5月まで停止していた船舶免許の更新講習が6月から徐々に再開され、更新講習の予約申込みをしたところ1か月以上先となり、先日やっと更新してきました。
私の小型船舶免許は、「1級・特殊・特定」というものですが、取得した昭和の頃は、船舶免許は国境を越える国際法に基づく海上衝突予防法によるものなので、船舶職員法により海員と位置付けられ、「海技免状」という大きなA4版の日本国政府発行の立派な免許証でした。

昭和末期のバブル期には水上オートバイの出現やプレジャーボートの台頭により、小型船舶はポケットサイズのプラスチック製の免許証となり、それは便利になりましたが、規制緩和によって発行者が国土交通大臣に変わってすっかり安っぽくなってしまいました。

「1級」とは外洋を含む航行区域の制限はなく、最大で24m 80t未満の特定漁船までの操縦が可能です。一般道路を届け出なく走れるトレーラーの長さが12mで最大積載量は 20tですから、1級免許で操縦できる船が相当な大きさであることがわかると思います。
まして長さとは、船首の喫水線部分から操舵板の根元までなので、実際には操舵板が船尾よりも前方にある船舶は全長が24mを大きく超えることがあります。 操舵板が船尾にあると尻を振って旋回しますが、前方にあるほど小回りが効くことになります。狭い場所で転回する台船や河川に係船する大型の屋形船などに多くみられます。
これが2級免許の場合の航行可能水域は陸岸から5海里(約9,260m)まで(領海は12海里22,224m)と制限され、そのほかに2級湖川限定という川や湖などの平水区域のみ航行可能な免許があります。
「特殊」とは水上オートバイのことで、航行可能水域は、陸岸から2海里(約3,760m)ですが、私の場合はわざわざ取得したものではなく、水上オートバイの特殊免許制度ができた時に既得権として付与されたものです。
「特定」とは自動車のバスやタクシーの2種免許に相当するもので、金員を得て乗客を乗船させる船舶である屋形船やはしけなどの連絡船や釣り船など営業船長の資格です。

免許更新の間隔は5年と自動車免許と同じですが、更新期間が1年あるので最長6年先まで有効、聴力視力と四肢運動機能の身体検査と法改正などの講習受講が行われます。
免許証の右上の発行番号の末尾「5」は5回目の更新であることを示します。
平成初期にバブルがはじけ、リーマンショックや東日本大震災によって、船舶免許の保有者数と船舶の登録数は年々減り続けているにも関わらず、海上では道路のように取締りが難しいという背景もあって、無茶をする水上オートバイやプレジャーボートの事故が年毎に増加しており、法の縛りはどんどん厳しくなっています。
このため昭和の頃は酒気帯び操船の概念は世界的になくビール片手に釣りや船上パーティーの光景がありましたが、我が国では15年程前から罰金制度はないものの酒気帯び操船が禁止されました。
かつては有資格者監督のもとで他の者に操縦させることもできましたが、これも日本では禁止となりました。
近年で特に変わったのは、2020東京五輪の警備の関係でしょう、通常日本領海上の取締り権者は海上保安庁ですが、東京レインボーブリッジを境にして、これより上流側は警視庁の管轄となり、従来は酒気帯び罰金制度のない船舶に対して、都条例で50万円という自動車よりも相当に高額な罰金が科せられることになりました。
最近は漁師さんもライフジャケットを着用して漁労をしている映像をTVなどで見かけるようになりましたが、これも法改正で船室外では着用が義務づけられるようになったものでした。
これらの意味では海事業界の収入減対策として免許者数を増やすための規制緩和の反面、一部の心ない有資格者の無謀な運用のおかげで国内法令は益々厳しくなっています。
海仕事をしていた祖父母の影響で幼少期から護衛艦乗りになりたかった私ですが、何故か不思議なくらい都度海から引き離される運命にあって、リタイヤしたら漁師の真似事がしたいと、これまで長いこと我慢して陸上で働いてきました。
私には海上やレーダーの無線免許とこの船舶免許は決して失効してはならない大切な免許なのです。
ブログ一覧 | 日記
Posted at
2020/07/29 08:45:17