
さて、PEC東京の最終回は
992GT3のインプレを書こうと思います。通常の試乗ですと、当たり前ですが公道でのインプレしかお伝え出来ませんが、今回は
クローズドコースでのインプレですからね!しかも、サーキットが一番GT3にとっては「映えるステージ」ですから、そこで走れたのは本当に幸運でした。乗ったその日はちょっと興奮状態で頭の中が纏まらなかったのですが、アップしたいと思います!
まず見た目から。私は992世代の911は
歴代911の中でももっともカッコいいと思っていて、これはカレラ系~タルガ/カブリオレ系~GTS系~GT3系に至るまで
全部カッコいいと思っています。で、その中でもスパルタンなGT3、ボンネットのエアインテークや大仰なリアウィングは写真で見ると
ちょっとやり過ぎでは?と思ってしまいますが、実物を見たらやっぱり超絶カッコいい♪ただ997世代までの911と比べると991~992は大きく見えますし、特にウィングやエアロパーツで武装した992GT3はとりわけ大きく見えます。実寸は、というと全長4,562 mm×全幅1,852 mm×全高 1,271 mmなので、実際にはそれほど巨大というわけではありません(参考までに296GTBは全長 4,565 mm x 全幅 1,958 mm x 全高 1,191 mm)。
用意されていた車両は右HのPDKでしたが、最近日本に入って来る車両は右Hがデフォで左Hは特注品という扱いなんでしょうか?ここでハンドルの左右についての優劣を議論するつもりは無いのですがやはりペダルオフセットの関係で私は左ハンドルの方がしっくり来るように思います。で、座ってみると乗降性は普通のカレラ系とあまり変わりません。シートはバケットタイプですが、ポルシェのバケットはかなり
大きく作られているため、フィット感はもう一つ。社外品のフルバケに慣れていると拍子抜けするかもしれません。一方、ストリートユースでの快適性もある程度担保しているため、サーキットに行かない方はこの程度のホールド性が好ましいのかもしれません。
上述の通り、試乗車はPDKでしたが、シフトレバーがカレラ系で見られるトグルスイッチと違って、ガングリップタイプのレバー(マニュアルっぽい見た目)になっています。うーん、
これはどうなんでしょう??マニュアル車っぽい演出って必要ですかね?個人的にはカレラ系同様のトグルタイプの方がスッキリしていて好感が持てます。5連メーターは例に拠ってほぼ液晶で、視認性は悪くないのですが、懐古主義的なオジサンとしてはアナログ5連の方がポルシェには合っている気がします。操作系の剛性感やタッチはさすがに素晴らしく、後程自分の996カレラ4Sに乗り換えたらより一層その素晴らしさが際立ちました。ブラボー!!
で実際に様々なシチュエーションで走らせてみて感じた992GT3の特徴は大きく4つあります。一つ目はメカニカルグリップが凄まじく、その割に乗り心地が良いこと。マニアな方はご存知かと思いますが、992型からGT3系のみついにフロントサスペンションが
ダブルウィッシュボーンに変わりました。これがどのくらいスタビリティに寄与しているのかは分かりませんが、とにかく992GT3はどっしり安定、ローフリクショントラックでなければRRであることを忘れてしまうほどです。しかし、実際にESCをオフにして低µ路で走らせてみると、限界は物凄く高いのですが、それでもRRなので限界を超えた所は
非常にピーキーです。
997世代くらいまでは、電子制御をオフにしても、腕のある人なら限界領域で車両をコントロール出来たと思いますが、992まで来るとちょっと難しいですね。グリップが高い分、限界を超えると一気に制御不能になります。インストラクターの方も、ケイマンGTSくらいが一番ドリフトサークルとかもやり易いとおっしゃっていて、その通りだろうなと思いました。定常円をやると、グリップ、グリップ、グリップ、アンダー出て来たかな・・ストーンという唐突な感じです。ただしその限界は物凄く高い。個人的にはサーキットでも公道でもESCをオフにしたいとは思いませんでしたw。
ESCの介入は非常に賢くて、ローフリクショントラックを走っている時は前後左右の荷重コントロールさえしっかりやっていれば凄く気持ち良く走れました。で、今回びっくりした2つ目のポイントが
PDKの出来の良さ。黎明期のPDKは低速域がギクシャクしたり、アップシフトは良いのですが、ダウンシフトでガクガクしたり、とにかくあまり印象が良くありませんでした。しかし現行のPDKの賢い事、賢い事。絶対に人間の変速よりも速いですし、確実ですし、サーキットでもタイムが出るでしょうね。ダウンシフト時の回転合わせが物凄く上手です。296GTBも物凄くDCTの出来栄えは良いのですが、PDKの方が更に上ですね。流石でございます。
3つ目はエンジン。この4.0LNAエンジンについては991世代で空冷ブロックでなくなったことを嘆く声も当初ありましたが、その後どんどん改良されて、
サウンド、レスポンス、回転フィールどれを取っても素晴らしい出来ですね。サーキットに於いて、RRのようなアクセルレスポンスが挙動を決定するようなレイアウトでは
このエンジンは必須かもしれません。とにかく5000回転を超えたくらいからの迫力ある咆哮はひたすら荒々しいMetzgerエンジンともまた違って、もっと緻密な
粒の揃った感じ。誤解を恐れずに言うなら、フラット6でありながらシングルプレーンV8に近いサウンド・フィーリングとなっています。これは
きンもちいい!!ずっと回していたくなりますね^^。
そして最後に・・これはちょっとネガな部分ですが、
やや一体感に乏しいということ。なんというか、センター付近の俊敏性が期待していたほどではないんですね。GT3というと、指1本分ステアリングを切っただけで強烈なゲインが立ち上がってカミソリのような切れ味を見せてくれるのが常ですが、ちょっとダルな印象を受けました。後にインストラクターに聞いたらタイヤは標準のカップタイヤではなく、ピレリを履いているとのこと
(多くの方にとってカップタイヤはピーキー過ぎるから、とのことでしたが実際にはコストの問題?)。このタイヤが影響しているのか、はたまた単純に車重がやや重いからなのか、あるいはダブルウィッシュボーンサスの弊害なのか・・。
ハンドリングトラックでは911らしく、鋭角に入ってV字でコーナーを立ち上がると
脱兎のごとく速いのですが、スパンスパンと曲がっていくような
人馬一体感にやや乏しいという印象を受けました。もちろん、RRとMRという根本的なレイアウトの違いが大きいのだと思いますが、インストラクターの方も「718ケイマンGT4の方が断然乗りやすい」とおっしゃってました。タイムはGT3の方が出るかもしれませんが、乗っていて人馬一体感があって愉しく感じるのはもしかしたら718ケイマンGT4(RS)の方かもしれません。この辺は実際にまたリベンジした際に今度は718ケイマンGT4でチャレンジしてみたいところです。あ、ちなみに
ブレーキは今まで通り宇宙一でしたw。
それにしても、これほどまでに
ドライビングに没頭できるクルマ、没頭できるシチュエーションは久しぶりでした。やはり「スポーツ」ドライビングは愉しいですね。992GT3は間違いなく最高峰のスーパーパフォーマンスカーですし、そもそも買えないという問題はありますが、本気で走るのが好きな方にはとてもお勧めの一台です。ただ、その良さを引き出すにはそれなりの腕とシチュエーションが必要なのもまた事実で、公道だけでは勿体ない気がします。というか、自分だったら回さずにいられる自信がありませんw。日常使いもこなせて、でも週末はトラックに出かけて全開走行を愉しみたい!という方には
最高のパートナーたりうる一台なのではないでしょうか。
(おわり)
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試乗記 | クルマ
Posted at
2023/03/24 14:28:14