
先日灼熱の中、聖地大黒PAにみん友さんのZebra Queenさん、lidocaineさんにお越しいただきました^^。先月、lidocaineさんの991.2カレラに試乗させていただき、その後Zebra Queenさんから「ぜひ私の991.1もお乗りになりませんか?」と大変ありがたいオファーをいただき、今回の試乗と相なりました。まずは試乗車として愛車を提供してくださったお二人に深謝申し上げます!少々長文となってしまいますが、興味のある方のみお付き合いください♪
さて、今回の比較試乗では991.1、991.2、992.1と各世代ベースグレードの素カレラMTという仕様でした。厳密に言うと私のカレラTはベースグレードではありませんが、エンジンはベースグレードで、かつ同エンジンでMTはカレラTにしか存在しないので、実質素カレラ同士の比較と言えます。991.2については、
過去のブログでインプレを述べておりますので、そちらをご参照いただくとして、今回は991.1のインプレを中心にアップしたいと思います。まず、毎回歴代水冷911を並べる度に感じるのですが、991系の方が992系よりも
大分コンパクトに見える、という事。車幅の差は50mmに満たないのですが、フロントフェンダーの盛り上がりや、ヒップラインの位置がデザイン上大きな差を生んでいて、992の方がかなりグラマラスに見えます。
シンプルで小柄な911を好む方には991の方がしっくり来るでしょうし、一方で
スーパーカーのような立派さを求める方にとっては992の方が魅力的に映ると思います。
車内は2世代前の991.1であっても997までと比べると随分と
モダンな印象を受けます。992ほど華美ではありませんが、質感は高く、センターコンソールの物理スイッチの存在が今となっては
逆に新鮮に映ります。以前雑誌の比較記事で車内のスペースは20mmほどしか幅が変わらない(992の方が広い)とありましたが、実際の数字以上に991の方が
車内はコンパクトに感じます。より「ポルシェを着る感覚」に近いのは991の方ではないかと思います。皆さんご存知の通り、991.1は997.2の3.6Lフラットシックス直噴NAエンジンからダウンサイジングした
3.4Lフラットシックス直噴NAエンジンを搭載しています。3.4Lという排気量は、996.1以来となります。以降のカレラ系がすべて3.0Lフラットシックスターボになったため、
「最後のNAカレラ」として今でも人気があります。実際、中古車市場では991.1と991.2の市場価格に
逆転現象が起きており、991.1の方が僅かに高値で取引されています。Zebra Queenさんの個体はスポクロは無いものの、PSESを後付されている仕様となります。
さっそくステアリングカラム左側のキーを捻ると、聞きなれたNAフラットシックスエンジンが目を覚まします。PSESオフのアイドリング状態では
望外に静かなサウンドで、やや演出がかった992系よりもむしろ大人しく感じます。ドライバーズシートに収まると、明らかに992系よりも一回りコンパクトで
車両感覚が掴みやすいように感じます。ドラポジを取り、クラッチを踏むと、アレ?ストロークが長い!992のドラポジよりもシートを前に出さないとクラッチを奥まで踏めません。そういえば996~997もこんな感じだったな~、と懐かしく思い出します。991.2と992.1は基本的にドライブトレーンが同じなので、クラッチのフィーリングはほぼ一緒でした(992.1の方がやや軽い)が、991.1は旧い世代の水冷のフィーリングでした。シフトストロークはやや長く、節度感も992.1のショートシフターと比べると
やや緩い印象があります。個人的にはカレラ系のシフトは997世代のアイシンAI製の6速がもっとも好ましかったと思っていますが、PDKベースの7速MTの中では992.1に搭載されている物が
一番カチッとしていると思います。
走りだしてみると、ターボエンジン車のような低回転からガツンと来るトルク感はないものの、車体の軽さとコンパクトさが功を奏して
自然にペースアップします。PSESオフの状態でも
NAエンジンらしい澄んだサウンドは健在!997.1までのポート噴射エンジンほどではないにせよ、997.2の直噴化した直後のくぐもった感じのエンジンサウンドよりは大分良い感じです♪PSESをオンにすると、低音の唸りが加わり、より
ワイルドなサウンドに。エンジンの回転フィールもすこぶる良く、991.2以降のターボエンジンよりも
回りたがる感じがあります。一方、パワー/トルクカーブが示す通り、低い回転数から怒涛の加速・・というワケではなく、
リニアに気持ち良く回るタイプのエンジンなので、踏んだ瞬間のガツンと背中を蹴飛ばされるような911らしい特性はやや穏やかに感じました。その点991.2~992.1の方が低~中速域では分かり易く速いですし、現代風な味付けです。個人的には991.1の加速感でも十分満足ですが、最新のクルマに慣れた人からすると
やや物足りなく感じるかもしれません。
足回りはオーリンズの車高調に換えていらっしゃって、Zebra Queenさん曰く、「純正の方が硬かった」とのこと。私は足回りに関しては純正派なのですが、路面からの突き上げもなく、乗り心地は良いと感じました。一方、バンプでの収束はやや甘く、ボヨーンとした感じで、この辺はリアの減衰力調整が必要かも?とZebra Queenさんもおっしゃってました。コーナリング特性はRRらしく、リアアクスルステア(RAS)のついた992.1と違って、ある程度
セオリー通りに走らせる必要があります。即ち、コーナーではフロントに荷重をしっかり乗せてから舵角を入れて、脱出時にアクセルを入れるという走り方ですね。992.1はコーナリング特性のことなど何も意識なくてもハンドルを切っただけで速くコーナーを回れてしまうので、古典的な911の乗り味に近いのは991.1の方だと思います。一方、シャシー性能は997までと比べるとかなり良くなっているので、996~997までのどことなく
危うい感じとは無縁で、PSMの制御もかなり洗練されているように感じました。
一方、ステアフィールは
やや曖昧で煮詰めが甘いと感じました。992系の方が、ステアリングレスポンスはシャープ、ロードインフォメーションも豊富だと感じます。初めて油圧式から電動ステアリングに切り替わった際に、「煮詰めが甘い」と一部の評論家から批評されていたのを思い出します。この点に於いては、991.1<991.2<992と代を追うごとに改善されていると感じました。992がクルマの感覚としては四角いモノになっているのに対し、991まではまだ長方形のモノに乗っている感覚が色濃いのが興味深いと思いました。電子制御があっても、やはり前後方向の荷重移動を意識しながら走らせてやる必要があるのに対し、992はフロントの荷重抜けもほとんどないため、誤解を恐れずに言えばFRのような走らせ方でも全然速く走れてしまいます。どちらがより911らしいかと言われば当然991ですが、どちらがより誰でも速く走れるかと言えば992であることは間違いないでしょう。そして付け加えるなら、992カレラTのサウンドは遮音材が省かれている事や、GPFが付いていない事もあり、個人的には991.1のNAサウンドに引けを取らない、と思います。
ターボを毛嫌いしている方はぜひ一度乗ってみていただきたい、と思います(百聞は一見に如かず)。
さて、991.2の試乗からは少し間が空いての比較試乗となりましたが、水冷三世代の試乗を経て自分なりの結論が出ました。飽くまで自分の好みとしては、
991.2のMT、願わくばパワーのあるカレラSでPDCCなし、スポクロ+PSESありが「理想型」かと思います。次点で992カレラT、ただし願わくばRASなし。RASは低速で小回りが効きますし、高速では安定した旋回が可能となる一方、どうしても自分が長年培ってきた911の乗り方と
相反する部分があります。一言で言って、
ドーピングが過ぎるように感じます。ちなみに、992.1の「究極のロードゴーイングモデル」と言われる911S/TにもRASは採用されていません。もしご縁があって、992.2カレラTをオーダーする事になったらRASは付けません
(新型GTS同様、標準装備となってしまう可能性もありますが)。ちなみに私が理想と考える991.2カレラSのMT車はまったく市場に出て来ません。lidocaineさんの991.1カレラに試乗させていただいてからずっとカーセンサーを見ていますが、この1か月で一台も出て来ません!991.2GT3よりも遥かに
激レアですw。というワケで、今後は中古車市場を睨みつつ、992.2カレラTの動向を注視したいと思います。
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試乗記 | クルマ
Posted at
2024/07/09 13:19:21