2022年05月12日
あれも、五月の話だった。
学生時代。僕はいつものように深夜までネトゲ(確かPSO)をやり、明け方から眠りについた。
寝たばかりの僕の携帯がなる。半分寝たまま発信者を見れば、級友である。
級友と言っても僕は普通に留年して下の学年なのだが。
寝ぼけまなこで着話する。「こんな時間になんとした」
「Oが死んだ。」
電話の向こうでAが言った。
「マジで?」
「マジで」
「そうか、マジか・・・・、今日のコンパは?」
「さすがに行けねえだろ。んで、さ、Nに連絡がつかないんだけど」
「あいつ城主だから、電話出ねえぞ。直接行くしかねえな」
Nはリネージュというゲームにはまっていた。ゲーム中は電話に出ない。僕はAと合流するとN宅のベランダから侵入した。
「いや、何やってんのお前ら」
「つーか、聞け。Oが死んだ」
「マジか」
「マジだ」
「えーと、今、城守ってるから待ってもらえる」
まぁ、一報聞いたところで、別にすることなんてないんだけどな。
〇 そうして。
Oは郷里を遠く離れて大学に来ていた。その場合、遺体は現地で焼かれることが多いようだ。僕らは火葬場で彼を見送った。
彼の一番の友達は魂が抜けたようになっていた。
可愛い彼女が泣いていた。
就職も決まっていた。単位も持ってる。彼女もいる。
「あいつ、なんで死んだん?」
数日後。級友と飲みつつ。
「聞いた話だとな。あいつめっちゃナルシストじゃん。自分の老いが許せなかったらしいよ」
「意味わかんねえな」
「まあな」
Oの両親は泣いていた。僕ら級友は責められているような気持ちだった。
線香の一本でもあげにいってやりたいが、彼の両親はそれを許さないだろう。
まぁ、気軽に行ける距離でもないし、実家も知らないんだけどさ。
〇 秋田にて。
僕の就職先は、秋田県だった。
秋田県と言えば、長年にわたり不動の自殺率NO1を続けた来た、めっちゃ自殺する県である。
僕の師匠は、秋田の生まれ、秋田の育ちである。
師匠が酒を飲みながら言った。
「さすがに県もなんとかしなきゃいけないってなってさ、いろいろ調べたんだよ。で、秋田の中でもD村が特に自殺率が高いことがわかった。んでさ、調べた。収入はどうだー、家族はどうだー、悩みはどうだー。ってさ。
ところが、死ぬやつは、みんな普通に仕事して、嫁さんもいて、子供もいて、死ぬ理由がねえんだ。もちろん、悩みを抱えて死んだやつもいる。だが、死ぬ理由がないやつがいっぱいいるんだ。君、これ、なんでだと思う?」
僕はそれを聞きながら、O君を思い出していた。
なお、師匠はその後に愛人と心中するんだが。つうか、師匠なにやってんの。
〇 で。
例の芸能人が自殺した。
ニュース速報を打つ。何度も打つ。センセーショナルに報道する。
死んだ方法を具体的に報道する。現地から中継する。
死んだ原因について考察する。街の人にインタビューする。
自殺報道でやってはならないことリストを役満でそろえるテレビ局に厚生省もお怒りである。
コロナがーとか、志村がー、とか、まぁいろいろ言う意味はないんじゃねえのかなぁ。
などと、思ったりもするのです。
Posted at 2022/05/12 16:13:41 | |
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