ロシアによるアフリカ戦略の話を…とは書いてみたものの、どこから書き始めましょうか?
いくつか写真なども集めたのですがとりあえずテキスト文書だけで投稿、後日写真や地図などを交えて加筆修正します。
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アフリカには54の国連加盟国があり、それぞれが国連決議の際の投票権を持っています。国際社会の中でイニシアチブを取っていく為にはアフリカ諸国からの支持は欠かせません。
古くからソ連・ロシアや中国のような安保理常任理事国の権威主義国家は影響力を維持すべくアフリカ諸国への支援に積極的でした。
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近年ロシアのアフリカ戦略に重要な役割を果たしてきたのは民間軍事会社ワグネルでした。
エフゲニー・プリゴジン率いるワグネルは主にロシアの退役軍人を雇ってアフリカ諸国で活発な活動を行なってきました。
2023年6月、物資の支援が不充分な中でウクライナ紛争のバフムト攻略作戦で多大な犠牲を出しながら奮闘していたプリゴジンがついにプーチンに対してブチ切れ、兵を率いてモスクワに向けて進軍を始めてしまうという事件が発生してしまいました。
この時はベラルーシのルカシェンコ大統領が仲裁して結局プリゴジンは兵を引き上げましたが、その二ヶ月後プリゴジンが乗った航空機のロシア国内での「墜落事故」によりプリゴジンは死亡、ワグネルは事実上解体され現在ではロシア国軍がワグネルの活動を引き継いでいます。
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アフリカのサハラ砂漠周辺のエリアでは近年「イスラム国(IS)」が勢力を拡大させており、そのテロ活動による治安の悪化に各国頭を悩ませております。アフリカの途上国では独裁国家であれ民主的国家であれ多かれ少なかれ汚職や腐敗が横行しており、国軍の装備や兵士への待遇という面で問題を抱えていました。
そうした中、マリ、ブルキナファソ、ニジェールといった国々でテロリスト達よりプアな装備でテロリスト達と戦わなければならなかった軍人達の不満が蓄積した結果軍事クーデターが発生するに至りました。
一方で中央アフリカ共和国において国内資源の権益と引き換えに大統領警護の任務を委託されて忠実に実行していたワグネルの活動が注目され、上記3カ国では対テロ作戦でワグネルの支援を仰いできました(ニジェールではクーデター直後にプリゴジンの「事故死」が発生したため直接ロシアに接近しています)。
一方で上記3カ国の旧宗主国であるフランスを中心とした西側諸国はエリアでの影響力が低下してしまいました。対テロ対策で駐留していたフランス軍は上記3カ国のみならず、最近ではチャドやセネガル、コートジボワール等でも撤退を余儀なくされています。
フランス軍がサハラ砂漠以南のアフリカから相次ぎ撤退…ロシアは軍事政権への協力で影響力強める
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シリアのタルトゥースから今回ロシアが海軍基地を撤退することとなったようですが、ロシアのアフリカへの兵站基地ともなっていたタルトゥースの機能の代替をリビアに求めようとしている旨の報道が一時期ありました。その後の情報をフォローしきれていないため結局どうなったのかはわかりません。
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タルトゥース海軍基地を失うということはロシアにとって大きな痛手であるとの解説がなされていますが、個人的にはそれには若干の疑問が残ります。
ウクライナ紛争勃発以来、黒海と地中海を繋ぐボスポラス海峡・マルマラ海・ダーダネルス海峡を管理しているトルコはモントルー条約に則り軍艦の通行を厳しく制限しています。
仮に通行できたとしても、黒海ではウクライナの海上ドローンの活動が活発であり航行には大きなリスクが伴います。実際に現在のウクライナ紛争においてロシアの黒海艦隊は激しく損耗し、現状殆ど機能できていません。
バルト海からアフリカに兵站物資を海上運搬する際に、東地中海沿岸部であるタルトゥースの地理的条件がどれだけの重要性を持つのかというと疑問です。
リビアに拠点が作れればロシアのアフリカ戦略はさほど大きなダメージを受けないでしょう。
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リビアの内戦は2020年に停戦が成立したものの、西部エリアを支配する暫定政権「国民合意政府(GNA)」と カダフィ派の残党ハフタル将軍率いる「リビア国民軍(LNA)」が支配する東部エリアとに分裂した状況が続いています。
ロシアが拠点を作るとすればロシアも加担しているLNA支配エリアとなるでしょう。
ただロシアとしてはウクライナに軍事リソースを大きく割かれており、米国でトランプ氏が大統領に復帰して停戦への圧力が加えられる中でロシアのアフリカ戦略がどうなるのか?
今後の動きが全く予見出来ない状況となっております。
Posted at 2025/02/01 15:02:42 | |
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