
サッカーワールドカップカタール大会が始まりました。近年の大会に比べて事前の盛り上がり方に欠ける大会のように感じてましたが、日本代表が初戦で見事な逆転勝ちを収めた事により、日本国内ではにわかに盛り上がってきました。
その試合を観戦していたのかどうかわかりませんが、同点・逆転ゴールで試合が盛り上がってきた日本時間の23日夜23時45分頃に発症した循環器系急性疾患の患者さんへの対応で、その夜私は結局眠れない夜になってしまいました。
高血圧等の持病がある方は夜ふかしし過ぎたり興奮し過ぎたりしないよう、くれぐれもご注意下さい。
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前々回の記事で、中東情勢が各国の思惑が複雑に絡み合ってややこしい状況になっている旨書きましたが、一回に全部まとめて書くのは困難ですので少しずつ書きます。
今回はこの件から…
イスタンブール中心部で爆発、負傷者複数か | 共同通信
https://nordot.app/964529667118399488
13日にトルコのイスタンブールで爆弾テロ事件がありました。
その後の捜査でクルド人の分離独立派の犯行であった線が濃厚だと言う事になりました。
クルド人とはトルコ、シリア、イラク、イランにまたがる地域に居住し、約3000万人とも5000万人とも言われる人口の「独立国家を持たない世界最大の民族」と言われています。(冒頭画像)
「意志と能力があれば独立国家を持てる」というのが、第一次世界大戦以降の世界秩序における「民族自決」ですが、クルド人は現在までそのような状況にはなっていません。
もちろんそのような意志を持って活動されている方が各国に存在するのですが、その結果としてそれぞれの国で弾圧を受けたり、それに対抗する為に武装闘争・テロ活動を行なったりという
あぶない状況になっています。
今回の事件もその一環ですが、理由は何であれ、暴力・破壊・略奪は許されません。
トルコ国内でそのような活動を行なっている組織が
クルディスタン労働者党 Partiya Karkerên Kurdistanê (PKK)です。トルコ政府はもちろん、日本政府もPKKをテロ組織認定しています。
一方で隣接するシリア国内にもPKKと連携しているクルド人組織があってクルド人民防衛隊Yekîneyên Parastina Gel (YPG)等が知られています。
また、欧米諸国の「有志連合」と共闘してシリア・イラク国内のイスラム国(ISIS)の掃討に貢献したのが、YPGが中心となって組織されているシリア民主軍 Syrian Democratic Forces (SDF)といった勢力になります。
SDFはISISの掃討に貢献しましたが、SDFの勢力拡大を嫌ったトルコがシリア内戦に介入したのが2018年から始まった「オリーブの枝作戦」「ユーフラテスの盾作戦」等と呼ばれる作戦で、この結果両国国境付近のシリア領内に干渉地帯を作ってしまいました。
Live UA map
https://syria.liveuamap.com/
というサイトが作成しているシリア内戦の勢力地図ですが、赤く塗られた地域がアサド政権の支配エリア、北東部の黄色く塗られた地域が「有志連合」に支援されたクルド人エリアです。トルコ国境付近に灰色に塗られた地域がトルコ軍が侵攻してクルド人エリアとの間に設けられた干渉地帯になります。
今回のイスタンブールでのテロ事件を受けて、トルコ軍はシリア領内のSDFの拠点等を空爆しました。
トルコ“クルド人武装組織の拠点破壊” 87人死傷爆発から1週間
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221120/k10013898051000.html
シリアのアサド政権の勢力下にある地域ではありませんが、当然シリア共和国に対する主権侵害になりますので、アサド政権やアサド政権を支援しているロシアはトルコを批難します。
折しも22日、カザフスタンの首都アスタナで第19回シリア関連の国際会議(「アスタナ19」)が開催されたタイミングです。
一方で米国防総省もトルコに自制を求める声明を出しました。シリア北東部でSDFを支援して治安維持している米軍をはじめとする「有志連合」もトルコ軍の攻撃の脅威に曝されています。
トルコのシリア空爆、ISとの戦いに影響 米が懸念 | ロイター
https://jp.reuters.com/article/syria-security-turkey-usa-military-idJPKBN2SE00D
クルド人の分離独立はトルコやイランにとっても認め難い話になりますが、イラクのISIS掃討が一段落した2017年、イラク北部のクルド人居住地域の分離独立を求める住民投票が行なわれ、90%以上の賛成票が投じられました。
2017年クルディスタン地域独立住民投票 - Wikipedia
https://onl.sc/eSe6v8z
しかしながらキルクーク等の油田地帯を含むこの地域の分離独立をイラク政府はもちろん国際社会も認めませんでした。
民主的な住民投票で結果を示したにもかかわらず分離独立が認められないなら、軍事力という実力で独立を勝ち取るしかありませんが、国際社会の支援なしでは非現実的です。
結局、クルド人を巡る問題は今後もこの地域の平和と安定を脅かす火種として残ることになりそうです。
そしてこの問題はイランにも飛び火しかねない状況になっていますが…その話は次回以降に…
Posted at 2022/11/25 19:52:09 | |
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