
円安が進行していますが、これに乗じて「悪い円安」論が語られています。
コロナ禍で低迷した経済状況でエネルギー資源価格の上昇と円安の進行で物価が上がり、更に経済の足を引っ張っているということなんでしょうが、なんだかなぁ〜って思います。
なにやら既視感のある議論だなぁって思っていたのですが、思い出しました。日本経済が長期デフレで低迷していた頃、「良いデフレ」などという意味不明な論を展開していた人々がいたのですが、それと同類です。
先週、3月の消費者物価指数(CPI)が発表されました。
統計局ホームページ/消費者物価指数(CPI) 全国(最新の月次結果の概要)
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html
前年同月比で
総合指数が+1.2%
生鮮食品を除く総合指数(コアCPI)が+0.8%
生鮮食品およびエネルギーを除く総合指数(コアコアCPI)が-0.7%
という結果でした。
日銀の目標インフレ率は2%です。
実際には昨年4月からの携帯電話料金の値下げの影響で、前年同月比で見た他の製品やサービスの物価上昇率はこれらの指数+1.4ポイント程度あると言われていますが、それを加えてもコアコアでまだ+0.7%です。日本の経済状況はインフレと呼べる状況には未だなっていないのは明らかです。
個別の製品価格では値上げも伝えられていますが、それら製品やサービスの価格の加重平均である「物価」は目標インフレ率に未だ到達していません。
来月以降に発表されるCPIは前年同月比+2%を超える水準になってくるでしょうが、おそらくコアコアではまだ2%以下でしょう。それでも2013年のアベノミクス開始以降9年を経過して、ようやく目標インフレ率に到達です。
しかしウクライナ紛争などの原因でエネルギー資源価格が上昇したことによる物価上昇は短期的要因だとして、黒田総裁はすぐには緩和政策を変更する意思がないことを示唆しました。
今回の資源高が賃金・物価の持続的上昇招く可能性低い=日銀総裁 提供 Reuters
https://jp.investing.com/news/commodities-news/article-507199
原油高という要因が加わってようやくインフレ目標に到達できたとしても、それを持続できるだけの経済状況かといえばそんなことはないでしょう。ですので、日銀がこれまでの緩和政策を継続していく方針なのは当たり前の話です。
それでもCPIが前年同月比+2%を超えたのを見てインフレ・物価高を不適切に問題視し、日銀の量的緩和政策の「出口」を語りだす「有識者」や記事がメディアを賑わすことになりそうです。
既に「物価高で大変だー!」っていう報道で溢れてますね(苦笑
欧米ではインフレが進み米国では利上げなど金融引締政策が始まっています。その結果現在は日米の金利差から円が売られてドルが買われ、円安になっているだけの話です。
為替相場が円安に動くことが今の日本経済にとって良いことなのか好ましくないことなのかはともかく、「良い円安」とか「悪い円安」なんて議論はナンセンスです。
経済というとよくわからないカタカナ語が飛び交い、私のような素人には難解な物のように感じられますが、いわゆる「経済学者」や「エコノミスト」と呼ばれる人々が常に正しい事を言っているわけではありません。「経済学者」と言っても、例えばマルクス経済学の専門家が現状の世界経済を正しく分析出来るのかどうかというと別問題です。メディアで語っている「有識者」の中にはただポジショントークしてるだけの人もいます。
誰が本物で誰が偽物なのかを見抜くのは容易ではありませんが、「悪い円安」というワードは偽物を見抜くための一つの目印にはなりそうです。
Posted at 2022/04/25 10:55:40 | |
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