
(タイトルが「イラクジャパン」になっていたのを修正しました)
ロシアのプーチン大統領は6月30日、「サハリン2」の権益をすべて引き継ぐ新たな事業体を設立する大統領令に署名したと報じられました。
ロシアのサハリン2、新たな運営体に権益移管 プーチン大統領署名 | Reuters
https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-russia-oil-sakhalin2-idJPKBN2OB2AU
サハリン2には日本から三井物産が12.5%、三菱商事が10%出資し権益を保有していると伝えられています。これがプーチンの裁量一つで取り上げられてしまう可能性が出てきました。
無償で譲渡せざるを得なくなった場合、国際司法裁判所に提訴すべき案件かもしれませんが、ロシアはその場には出てこないでしょう。
この場合日本が樺太に軍事侵攻し日本の商社の権益を守るという選択肢もありますが、言うまでもなくその可能性はゼロでしょう。
海外に事業投資する場合、その国の政変などの情勢変化によりご破産になってしまうリスクは常につきまといます。
古い話ですがイランに石油化学コンビナートを建設するというイランジャパン石油化学(Iran-Japan petrochemical; IJPC)という事業がかつてありました。
1971年から計画が具体化したこの事業は、73年の第一次オイルショックで建設費用が急増したところからケチが付き始めます。
1979年にイラン革命が起こり、イランと米国は断交という事態になりましたが、IJPCの事業は継続されました。
しかし1980年に勃発したイラン・イラク戦争によりIJPCの施設も攻撃を受け、一部破壊されてしまいました。
結局1989年に事業は中止され、何の成果も得られないまま撤退という憂き目に逢いました。この事業に日本側から参加していたのも三井物産でした。
今回のサハリン2の件は、三井物産としてはIJPCの悪夢の再来と捉えられているかもしれません。
しかし前兆はありました。
当初出資比率は英蘭シェルが55%、三井物産25%、三菱商事20%で、総事業費は100億ドルと見積もられていました。
しかしその後環境対策を求められたことで開発費用が増大し、2005年に総事業費が当初の100億ドルから200億ドルに倍増すると発表されました。
翌2006年9月、ロシア政府は環境アセスメントの不備を理由にサハリン2の開発中止命令を出しました。その後の交渉で、2006年12月にロシアのガスプロム参画が決まり2007年4月に株式の50%+1株を取得して開発が再開しました。この結果出資比率は、英蘭シェルが55%から27.5%-1株、三井物産が25%から12.5%、三菱商事が20%から10%に減少して現在に至っています。
この時既にサハリン2の命運はロシア政府の手に握られていました。
ウクライナ侵攻に対して批判的な立場を取る日本に対し、これくらいのことはやってのけるのがロシアという国です。
核兵器を持つ国に対して軍事侵攻するという選択肢が封印されてしまっているという現実がある以上、同等以上の軍事力を保持した上で外交交渉で解決するしかありません。
IJPCの時と状況はまったく異なりますが、現状日本の商社は泣き寝入りするしかないでしょう。
核兵器を保有している権威主義国家3ヶ国が日本の隣国であるというのが、日本という国の不幸です。これらの国々の人々とも友好関係を維持したい気持ちは山々ですが、相手のある問題です。
参議院選を前に、日本のエネルギー政策や安全保障政策がどうあるべきなのか?もう一度考え直す良い機会と思います。
Posted at 2022/07/03 14:13:49 | |
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