
今回はこのニュースから
イランの最高指導者ハメネイ師が重病に、公の場に姿見せず-報道 - Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-09-16/RIBBF3DWLU6801
イランの国家体制は独特の制度を敷いていて、国家の三権の上に「監督者評議会」というイスラム法学者6名とその他の法学者6名からなる機関があり、大統領選挙候補者や国会議員選挙候補者の適性を審査したり、議会が可決した法案が憲法やイスラム法に抵触しないかどうかの合法性の保証を与えたりする権限を持っています。
そして最高指導者は最高司法権長や監督者評議会のイスラム法学者を任命したり、大統領を罷免したりする権限を持つ他、国軍とは別に直轄の軍隊「革命防衛隊」を持ち、国軍ともども最高司令官の地位にあります。
現在のイラン国軍は革命以前の王政時代から継続する組織ですが、国軍が関与する体制打倒を企てるクーデターの発生を未然に防止するために別個に革命防衛隊を組織し、国内の治安維持や海外での工作活動等の任務を担っています。
現在その「最高指導者」の地位にあるハメネイ師ですが既に83歳と高齢であり、後継者を含め体制維持のための活動は既に入念に行なわれていました。
最高指導者は、国民の直接選挙で選出された86名のイスラム法学者により構成される諮問機関である専門家会議により選出されますが、イスラム法学者でもあるライーシー現大統領が目下のところハメネイ師の後継者になるであろうと見込まれています。
ハメネイ師の病状については「腸閉塞で手術した」としか伝えられていません。
腸閉塞で手術して1週間もしないうちに退院出来るケースもありますし致死的になる場合もありますので、この情報だけではハメネイ師の病状については判断のしようがありません。
プーチンの健康問題についてこのブログで書いた通り、この手の情報の信憑性は限りなくゼロに近く、イラン当局の公式発表を待つしかありません。
仮にハメネイ師の病状が深刻であった場合、イラン国内の体制が落ち着くまで「核合意問題」が先送りされる可能性があります。
イランとしても米国による経済制裁の影響で国内経済がかなり厳しい状況ですので、核合意の再建を急ぎたいのが本音です。
ロシアによるウクライナ侵攻の影響でエネルギー資源の供給不足が続く中、イランの核合意問題の早期解決を求めているのは西欧諸国や日本、中国等も同じです。
一方で、イランと敵対している米国やサウジアラビア等の産油国はイランの足元を見てイラン側の譲歩を待つ状況となっており、イスラエルに至っては核合意そのものに反対の姿勢を崩していません。
ただイランをあまりにも追い込みすぎると、ウラン濃縮を更に進める等の核兵器開発を前進させかねません。核兵器開発やミサイル開発では北朝鮮とも連携しているとも言われているイランですので、日本の安全保障にとっても他人事ではありません。
身近なところでは生活に直結するガソリン価格などにも影響を及ぼす話ですし、遠い国の出来事というわけにはいきません。
Posted at 2022/09/18 19:40:49 | |
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