
相変わらずウクライナ情勢は緊迫しているようですが、プーチンはなぜ今こんな「火遊び」をし始めたのでしょうか?
プーチンの言い分として、「東西ドイツ統一の際にNATOは旧東ドイツから更に東方拡大しないとソ連に約束したのに騙された」「ウクライナがNATO入りしないという確約が得られなければ軍は引かない」ということを主張されていると伝えられています。
東西ドイツ統一当時の交渉内容についての解説記事もいくつかありますが、明確な文書で合意されてはいませんので「言った」「言わない」の水掛け論になってしまっています。
ただ、その後99年にはポーランド、ハンガリー、チェコ、2004年には旧ソ連邦のリトアニア、ラトビア、エストニアのバルト三国の他にスロバキア、ブルガリア、ルーマニア、スロベニアがNATOに加入しています。
NATOの東方拡大は今に始まった話ではありません。
もちろんロシアはその都度クレームを付けていますが、自国の安全保障をどうするかはそれぞれの国が決めることです。
冷戦の「敗戦国」であるロシアは、次々と民主化していく旧ワルシャワ条約機構加盟国の安全保障に干渉できません。
2017年にモンテネグロがNATO入りした際にもプーチンは相当ショックを受けたと伝えられています。
モンテネグロといえば日露戦争の際、ロシアに喧嘩を売った大日本帝国にムカついて宣戦布告して参戦してきたほどの親露国でした。
日露戦争では日本とモンテネグロとの間では講和条約が結ばれないままでしたので、旧ユーゴスラビアが解体され、セルビアモンテネグロ(国家連合)から分離独立する際に日本政府が慌てて戦争状態の終結の確認をモンテネグロと行ったというのは有名な話です。
そのモンテネグロまでがロシアに背を向けてNATO入りしてしまいました。
いくら冷戦の「敗戦国」であるロシアとはいえ、ここで更にウクライナまでNATO入りしてしまうのは認め難いのは確かでしょう。ウクライナとベラルーシはロシアにとって西側との「緩衝地帯」として重要です。「最終ディフェンスライン」とも言えるでしょう。
だからこそ軍事力を外交ツールとして最大限に利用しながら、ウクライナのNATO入りを阻止しようと必死です。
とは言ってもウクライナの安全保障はウクライナ人が決めることです。NATOとしてもウクライナを加盟させない事を「確約」することはできません。
プーチンとしては「核戦争も辞さず」というブラフを見せながらの必死の抵抗です。
ロシアから見ればキエフ公国以降の歴史的経緯から「ウクライナはロシアの一部」という認識かもしれませんが、ウクライナ目線ではスターリン時代にウクライナ人が粛清を受けた過去があり、その結果としてウクライナ出身のフルシチョフ時代になってスターリン批判が始まったなどの因縁があります。
ウクライナ国内でもウクライナ語を母語とせずロシア語を母語とする親露派の人々もいますし、一筋縄ではありません。
NATOから見てもウクライナは中共とズブズブの親中国家です。ウクライナ側から加盟したいと言われても簡単に「はい、どうぞ」と言える国ではありません。
コロナ禍、北京五輪期間中、供給不足により資源エネルギー価格が高騰している今こそ、プーチンは強気に出るチャンスです。北京五輪の開会式に駆けつけて習近平と会談し、中共にも根回しします。
ウクライナはここでどうするでしょうか?
仮にNATO入りを断念するなら、下心満載の中共が更に接近してくるのは必至です。
いずれにせよ富国強兵に努め自主防衛出来るレベルの軍事力を持たないと、大国の都合に振り回される事になってしまいます。
現代においては軍事力は戦争の為のツールではなく、外交の為のツールだということがよくわかります。
日本も他人事ではありません。
Posted at 2022/02/09 03:43:35 | |
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