
サッカーワールドカップカタール大会の序盤に活躍を見せたアジア勢でしたが、決勝トーナメント一回戦を終えて日本代表を含めすべて姿を消しました。
ベスト8進出という目標に向かって戦ってきた日本代表でしたが、残念ながらクロアチアにPK戦の末敗退という結果になりました。
試合を見ていて「これは勝てそうにないな…」と思ったドイツとスペインには勝利し、「これなら勝てる!」って思ったコスタリカとクロアチアには勝てなかった…っていうのが、サッカーというスポーツの難しさであり面白さでもあります。
次回大会にまた期待しましょう。
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ワールドカップが開催されているカタールという国も色々問題があるという話を前に少し書きました。
カタールはアラビア半島からペルシャ湾に向かって突き出た半島国家です。
サウジアラビアと国境を接し、ペルシャ湾に浮かぶ島国バーレーンとも地理的に近い関係にあります。
石油や天然ガスに恵まれた資源輸出国である一方で、ドーハは近年金融都市として発展しており、また世界的に有名な報道メディア「アル・ジャジーラ」のある国でもあります。
住民の8割以上が外国人労働者であり、国民の多くはイスラム教スンニ派の中でも原理主義色が濃い「ワッハーブ派」を信仰しています。
サウジアラビアもワッハーブ派が国教とされていますが、バーレーンはシーア派が多数派の国家です。
バーレーンとカタールは「ハワール諸島」の帰属をめぐって揉めた経緯もあり敵対関係にあります。
一方でバーレーンとサウジアラビアは国王同士が縁戚関係にあり友好関係にあります。
かつて「アラブの春」と呼ばれた民主化運動を主導した「ムスリム同胞団」というスンナ派原理主義組織がありますが、サウジアラビアはムスリム同胞団を「テロ組織」認定しているのに対し、カタールはムスリム同胞団を支援していると言われています。
ムスリム同胞団が主体となっている組織として、パレスチナのガザ地区を実効支配している「ハマス」という組織があります。現在でもハマスは反イスラエル闘争を続けていますが、これを主に支援しているのがカタールだと言われています。
レバノンで反イスラエル闘争などの活動をしているシーア派組織のヒズボラという集団があります。アラビア語でヒズブというのは「政党」を意味し、「アラー(神)の党」を意味するアラビア語「ヒズブ・アラー」がカタカナでは「ヒズボラ」とか「ヒズブッラー」などと表記されます。
ヒズボラはシーア派国家の雄であるイランの支援を受けていますが、イスラエルと敵対する者同士ということでイランやヒズボラは現在ハマスとは良好な関係にあるようです。
一方でシリア内戦ではアサド政権を支援しているイランやヒズボラは、ムスリム同胞団主体の反政府側とは敵対関係にあります。
そして世俗主義国家であるトルコ共和国のエルドアン大統領は、実はムスリム同胞団に近いイスラム主義者だったりしますので、カタールとトルコ共和国は現在良好な友好関係にあります。
またイランとトルコは比較的友好関係にあります。
アル・ジャジーラがサウジ王室のスキャンダル等の情報、報道を面白おかしく垂れ流していたり、カタールがムスリム同胞団を支援している事にブチ切れたサウジアラビアが、2017年にバーレーンやUAE等と共に突然カタールとの断交を発表するという事件が発生しました。
2017年カタール外交危機 - Wikipedia
https://onl.sc/PBG8p47
これを受けてカタールはイランやトルコとの関係を更に深める結果になりましたが、米国がトランプ政権からバイデン政権に変わろうかという2021年初頭にこの問題は終結しました。
バイデン政権がサウジアラビアから距離を取ろうというのが明白な情勢でしたし、イランと敵対しているサウジアラビアとしては自国の安全保障上、カタールとイランがそれ以上接近するのは好ましくないという判断だったのでしょう。
そのサウジは、バーレーンやUAEなどと共にトランプ政権末期からイスラエルに接近しているというのが今の中東情勢です。
中東諸国の中で比較的大国と言えばトルコ、イスラエル、サウジ、イランですが、
イランとイスラエルは敵対
イランと米国も敵対
イランはサウジとも敵対
イランとロシアは友好関係
イスラエルと米国は友好関係
サウジがイスラエルに接近中
サウジは中国にも接近中
サウジとバイデン政権は微妙な関係に
トルコはNATO加盟国でありながら
イランとは比較的友好関係
ウクライナ紛争では比較的中立の立場
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天然資源に恵まれ経済的に豊かだとは言え、地域では比較的小国のカタールという国家が置かれた難しい立場を(自業自得の面も多々ありますが)理解できれば、このニュースが伝えている事の意味が理解しやすくなります。
アングル:「政治行動禁止」のカタールW杯、二枚舌との批判も | Reuters
https://jp.reuters.com/article/soccer-worldcup-stadium-politics-idJPKBN2SQ05O
(続く)
Posted at 2022/12/08 22:27:09 | |
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