
予選セッションで最後まで必死にがんばった甲斐があり,発表された決勝のグリッドは,ライバルのコペン君が24番グリッド,そしておとーさんのグリッドが25番。タイム差はほとんどなし。
やった! 見事に狙い通りのグリッドをゲット。彼の様子をじっくりうかがいながらスタートできる最高の位置です。
彼の愛車はエアロなどで重くなってるとはいえ元が軽自動車ですから軽い。しかもチラっと見たところかなり幅のあるV700を履いてる。さらに,雨は上がったとはいえまだまだウェット路面。タイヤの面圧を考えると,おそらくスタートでトラクションはかかりにくいでしょう。
一方,パワーは同じぐらいだけどデミ助は100kg以上重い。しかもこのウェット路面にタイヤはR1R。トラクション面ではこちらの方がかなり有利。とにかくスタートダッシュをしっかり決め,1コーナーで彼の前にいること,できれば間に1-2台挟まった状態になること,これがスタートでの課題。

※スタート前のパドック風景
フォーメーションラップ中も,ウェービングしてタイヤを温めるライバルを尻目におとーさんはおとなしく走ります。そのまま静かにグリッドに。できれば目の前のEG6を外側からかわして前に出たいため,わずかに外側に角度をつけてデミ助を停めます。
前回はスタートダッシュで失敗して目の前のライバルをとらえ損ねました。今回は同じ失敗を絶対にすまい。プレッシャーで心臓がドキドキ高鳴ってきます。
サーキットのシグナル設備はまだ故障中とのことで今回もスタートはフラッグ方式。スターターが日の丸を掲げたところで回転数を上げ始め,振り下ろされたジャストのタイミングで3000rpmクラッチミート!
わずかなホイールスピンを残してデミ助はするするっとスタート。よし! スタート成功!
右側にいるコペン君の速度が乗らないのを確認しながら,目の前のEG6を外側から難なくかわして,その前のCR-Xに並ぶところまでジャンプアップ。そのままストレート外側を加速していきます。
しかしさすがに前に出ることは難しく,CR-Xがすーっと先に出たところでもう1コーナーが近づいてきます。このまま一番アウトにいるとコーナーの内側で何かあった時に間違いなく外にすっ飛ばされますので少しインにポジションを寄せます。
この時ミラーで後をチラっと確認してギョッとしました。コペン君がすぐ後にいます。しかもイン側に。
もっとインに入ろうかと一瞬迷いましたが,目の前にはCR-X,ロドスタ,EKシビックなどがダンゴ状態になっており,それぞれがどのくらいのタイミングでブレーキングを始めるか分からない。ここで無理やりインに入るのはリスクが高過ぎる。仕方なくインを1台分開けたままでブレーキング,1コーナーに入ります。
しかし,当然ながら軽いコペン君がこれを見逃すはずもない。この空いたスペースに果敢に飛び込んで来ます。うっ!やっぱり来るか!
1コーナーの途中で右後を目視で振り返るとコペン君がデミ助の右リアフェンダーあたりに食らいついてるのが見えます。一瞬のことですがどーっと冷や汗が吹き出します。
しかし彼は狭いスペースに飛び込むためにかなり減速を強いられ,またインベタの苦しいラインに乗っている。しかもこのコーナーの一番内側には放射線状の筋があり一瞬クルマが跳ねます。2コーナーに向けて十分な加速はできません。
こちらはライン的に有利な位置にいるため旋回速度を保ちながらスロットルを踏み込んで行くことができます。1-2コーナーの繋ぎの短い区間,2台絡んで旋回しながらもデミ助の方がジリジリと先に出ます。
2コーナーに入るところで何とかデミ助の車体が先に出たため,インを強力に意識しながら,コペン君の頭を押さえた形で2コーナーを立ち上がります。
緩い3コーナーを抜けてバックストレートを必死で駆け抜けますがミラーを見るとコペン君はまだまだすぐ後にいます。くうーっ! まだか。まだ振り切れんか。
車体が軽い分,ブレーキングは彼の方が有利。4コーナーへはセオリー通りインを締めたブロックラインで入ります。すると今度はコペン君,レイトブレーキングですーっとコーナーのアウトに回りデミ助の左後から攻めてきます。
複合の5コーナーのインは何とかこちらが取りましたが,明らかに彼の方が旋回速度が速く,6コーナーまでの短い立ち上り区間で一瞬先行を許します。
敵ながら天晴! 見事なレーシングスピリット!
溝の減ったV700でウェット路面でこの走り!
キミ凄いよ! おっちゃん痺れるわ!
このまま6コーナーでインを取られて終わり...かと思いきやまだ天はオッサンを見捨てていませんでした。直角の6コーナーを全く横並びで立ち上がり,S字になっている7コーナーのインを奪うべくさあ猛烈ダッシュしようとしていた2台の目の前に,前の集団から遅れてきた黒いロドスタさんが現れました。
このロドスタさんが7コーナーに向けてアウトに寄ったところでおとーさんはインに飛び込み,多少苦しいラインながら内側をすり抜けます。一方,コペン君は出口を塞がれる形になり前に出られません。
よし前に出たぞ! しかも間に1台入った。今だ! 逃げろ!
ヘアピンを立ち上がって左コーナーを一気に下り,立体交差をくぐって束の間のフルスロットル。とにかく逃げます。後を振り返る間もなく必死で逃げます。最終コーナーでは前で競り合うシビックとCR-Xに追いつきそうになりながら,それでもとにかく前へ前へ。
ホームストレートに折り返してやっとミラーを振り返るとすぐ後には誰もいません。しかしここでホッと一息入れるわけにはいきません。完全にウェットだと思っていた路面は意外にラインドライに近く,コペン君がまたジリジリと差を詰めてくる可能性は十分ある。
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何度も何度も後を振り返りながら,気を抜かず必死で走り続けます。
2-3ラップするうちにシビック軍団はどんどん前に行ってしまい,後もミラーで見る限りストレート2/3ぐらい差が開いてます。前後に誰もいない単独走行です。しかしハッと気が付いたらコペン君がすぐ後に貼り付いてる...ずっとそんな不安に背中を蹴飛ばされながら必死で前を急ぎます。
5-6周目でしょうか,前でバトルをしていたシビックの一台が4-5コーナーでスピンしているのを追い抜き順位をさらに一つ上げます。それでもまだ不安は消えません。逃げなきゃ,もっと逃げなきゃ。
しかし7周目の途中,真っ暗な空からまたポツリポツリ雨が降ってきました。徐々に雨脚は強まり,ラインドライになっていた路面がまたしっぽり濡れていきます。
そして8周目,完全にウェットになったバックストレートで,見渡す限り後に誰もいないことを確認して初めてコペン君から逃げ切れたことを確信しました。こちらがスピンでもしない限りもう追いついてこないでしょう。安全策をとって初めて少しペースを落とします。
その後,先頭のシビック2台に周回遅れにされたため9周目でチェッカーを受けます。
「勝った」
草レース2戦目にして初優勝です。「賭け」に近かったタイヤの選択,予選での奮闘,スタートダッシュを決められたこと,最初のラップの熾烈なバトルを何とかかわしたこと,その後の単独走行でも気を抜かずしっかり逃げたこと...全てが狙い通りに決まりました。
終わってみると25番グリッドからスタートして6台を抜き19位でフィニッシュ。クラス2位のコペン君に30秒近い差をつけて堂々のクラス優勝です。
ただ,スタート直後の2コーナーで若干ブロック気味になってしまったことがどうしても気になってたので,ゴール後すぐにコペン君のところに謝りに行きました。すると彼曰く,
「いや,全然大丈夫っすよ,ちゃんと前開いてましたから。それより,こういうバトルをやりたいから,僕,走ってるんですよ。」
そう言ってくれました。ええ奴っちゃ~,何ちゅうナイスガイや君は~
表彰式はもう夜になってから。
2位のコペン君とがっちり握手をして表彰台のてっぺんに立ちました。
時間が遅いためインタビューはありませんでしたが,楯以外に箱入りカップめんその他,持ち切れないほどのいろいろな賞品をいただきました。ありがとうございました。
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今回,残念だったのは,カメラのバッテリー切れで決勝レースの車載動画がフォーメーションラップ途中で終わってたこと。むあああああ,残念。せっかく最高のバトルやったのに。やっぱり「ごぷろ」買おうかな。
※仕方ないので午前のフリー走行中の車載動画を代わりに貼っておきます (;・∀・)
もう一つ残念だったのは,同じクラブのリーゼントくんのロドスタがミッショントラブルで動けなくなってしまったこと。黒兄が積車で来てくれるとのことで,そこまで一緒にいてあげたかったけど,嫁さんのご機嫌を考えるとこれ以上帰りが遅くなるのはあまりにも高リスク(汗)。冷たい缶コーヒー1本を自分の身代わりとして彼に渡し,サーキット前の駐車場を後にしました。ごめんよ,リーゼントくん。
さあ,レースは終わり,またお仕事が忙しい日常生活が戻って来ます。
次は9月のラジチャレ第3戦。8月はどこにも走りに行かずしっかりデミ助をメンテしてやる予定です。
1500cc以下のコンパクトカー乗りのみなさん,さあ,一緒にバトルしませんか?