
前回の競技会から2ヶ月が経ち,再び近畿のジムカーナ戦士達が鈴鹿南コースに結集,地区戦&ミドル戦の合同の大会が開かれました。
8月の第6戦を見送り,お盆には長距離ドライブ旅行に出たりして,もう一度自分にとっての「走る」意味を問い直してきたオッサンも,2ヶ月ぶりにパドックにデミ助を並べることになりました(→
本家サイト「峠へ行こう」参照)。
気合を入れてスタートした今シーズン,第3戦で2位表彰台に乗った以外は悉く下位に低迷,特に前回の第5戦の鈴鹿南なんかは,攻めた結果とはいえ2本目でPT食らって久々のビリになってしまい,さすがにもう走るのがイヤになってきてましたが。
しかし,お盆の旅行で高速を乗り継いで北関東まで走って行って,碓氷峠とか,いろは坂とか,昔から一度行ってみたいと思っていた有名な峠を走ってみて,自分の中に出てきた答えは,
「やっぱりクルマの運転は楽しい」という当たり前のことと,
「勝てなくっても,走ってていいんだ」ということ。
いろは坂を上がって中禅寺湖畔でぼーっとしてる時に,自分に対して「勝てないことはダメなことだ」,「勝てないヤツは根性がないんだ」,「勝てないヤツは努力が足りないんだ,ヘタレなんだ」という強い思い込みがあることに気がつきました。
でも実際,仕事の環境が変わり,少しずつ年齢も重ねて行く中で,今の自分にはかつてのような戦闘力はもうないわけで,それでも「勝たねばヘタレ」「絶対に勝たねば」と思っていては辛くって走れないのも当然。
もういいんだよ。勝てなくっても。
勝てないなら勝てないなりに楽しんで走ればいい,今のシリーズ戦で楽しめないなら別のシリーズに行けばいい,別にそこまでデミオにこだわらなくってもいい,自分が楽しいと思える走り方をすればいい...そういったことがやっと自分の中で実感をもって理解できるようになりました。
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そんな結構「開き直った」というか,ある程度スッキリした心境で迎えた当日ですが,お天気の方はスッキリしません。頭上には青空が出ているのですが,東西の方角の空には「竜の巣」のような黒々した雲が聳え立っており,不穏な雰囲気をかもし出してます。
発表されたコースは,「広場での簡単なパイロンセクションを挟んで鈴鹿南コースを完全逆走」という,これまでに見たことのないパターン。ジムカーナ枠のスタート地点から最終コーナーに向けて走り出しコークスクリューに逆に突っ込んで行くところ,S字の逆走,1-2コーナーの逆送など結構シビレる設定です。しかもこれだけ逆走ならコース慣れはほとんどカンケーなし。みんなイーブンの条件で走れます。主催者さんありがとう。
朝一番はウェットでしたが,慣熟歩行の頃には路面は完全なドライに。ところがブリーフィングの途中からまたぽつりぽつり振り出し,結局1本目はパラパラ小雨の中の走行。しかしまだ路面は乾いており何とかドライセッティングで走れそう。
とにかく勝ち負けカンケーなし。せっかくのシビレるコース。初めて出会った峠道をわくわく攻めてるつもりで精一杯楽しもう。さあ,スタート!
自分なりに精一杯攻めました。案の定,右ターンは上り勾配でうまく回らず失敗ターンになりましたが,その他の突っ込み勝負の部分は思い切って飛び込むことができました。走りながら「よっしゃー!もらったー!」と思わず叫んだ会心の走り。
最後の左ターンをぐるっと決めてゴール! この時点でのトップは1分23秒台。慌てて窓を開け,アナウンスのI東さんのタイム読み上げに耳を傾けます。1分24秒? 25秒? ひょっとしてトップ?
しかしトップタイム更新のファンファーレは鳴らず,それどころかタイムは1分27秒台。
1分27秒!? 「遅っそ!」思わず自分で突っ込みましたよ。
ひょっとしてどこかで黄旗を食らったのか? ペナルティ5秒加算で27秒台になったのか? いやいや,そういうことではなく,素で1分27秒台(泣)。も全然だめ。お話になんない。
しかも深刻なのは自分で遅いという自覚がないこと。一生懸命攻めて,ターンの失敗以外は自分でほぼ理想通りの会心の走りをして,それでトップから4秒落ちってこと。要するに自分の中で速い走りのイメージを全く作れていない。自分の走りを客観的に評価することもできてない。
いかに2ヶ月ぶり,ぶっつけ本番のスポーツ走行とはいえあまりにひど過ぎ。人間っていったんダメになると本当にもうダメですね。坂道を転がり出すと止まりません。ずい分長いこと走ってきましたが,もう完全に初心者レベルまで落っこちてしまいました。
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その後,雨脚は強くなり路面は一気にウェットに。空は真っ暗になり,一瞬,こちらの気持ちも真っ暗になりかけましたが...「まあいいか,しょうがない」どこからかそういう気持ちが,雲間から陽が差込んでくるように心を照らしました。
そうだった,そうだった,忘れてた。
いいんだよ,もう,勝てなくても。
走ってるだけで十分。オッサンよくがんばってるよ。
走ってて楽しかったらいいじゃん,ワクワクしたらそれでいいじゃん。
自己満足結構。自分の楽しみのために走ろうぜ。
そう考えてるうちにすーっと気持ちがラクになりました。そうだ,苦しい気持ちは,悲しい涙は,いろは坂に置いてきたはず。楽しもう。楽しもう。自己満足で行こう!ジコマン万歳!
やっと勝ち負けを離れて,遅くても純粋に楽しめるようになってきた。周りが何秒で走ろうと,自分が今の環境の中で精一杯攻めて楽しめたらそれでよし!
いつの間にか雨も止み,実際に雲間から日が差込んできました。路面もどんどん乾いて完全ドライ。さあ,2本目いこーぜ!
とりあえず目標は突っ込むところをしっかり突っ込むこと。最後の1-2コーナー逆送をアクセルべた踏みのままで駆け抜けること。ターンの旋回半径が...とかもう言わないの。いいんだよ,気持ち良く走れりゃ。
ということですっかり元気を取り戻して2本目スタート。
コークスクリューの逆走では精一杯ブレーキを薄くして突っ込みの速度を高めます。かつスロットルを極力早めにオンして立ち上がります。ターンセクションは1本目よりも細かくサイドを引いて「楽しく」走ります。
S字の逆走はペナルティを恐れずがんがん縁石を踏んで行きます。ストレートで3速全開からフルブレーキング,2コーナーの途中からスロットルはべた踏みでそのまま1コーナーをクリア! よし行けた!
最後のターンはサイドを引かずグリップで,立ち上がってすぐにゴール。ネックガードが外れて視界の隅でペラペラしてますが気にせずに走り切りました。
ぜいぜい息が切れ,ドッと汗が吹き出てきます。窓を開けてタイムを聞きますがアナウンスのテンションは低く聞き取れません。ああやっぱ全然ダメだったな...と思ったら,そのままパドックへ直行ではなくいったん車検場に呼ばれます。
ええっ! ひょっとして3位までに入った? でも全然アナウンスされなかったけど...
いえいえよく見たらN1.5クラスの全てのクルマが車検場に入っており,いったん全員が車検場に入る段取りになってただけ,ということがすぐに判明。「なんだ,やっぱりな」と苦笑い(笑)。結局,パドックに帰ってから人に聞くと,生タイムもしょぼーん,しかもどこでやらかしたか分からないけど脱輪でペナ5秒もついていまーす,という結果だったらしい。
まあ,いいや。
タイムは遅いし,走りはダメダメだけど,いくつかのコーナーでは自分の精一杯の走りができたし何より楽しかった。自己満足だけど「やったぜ!」「これでどーだ!」っていうシビレる感覚を味わえた。それでいいんよ。それで十分。今日ここへ来た価値はある。満足満足,余は満足じゃ。
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自己満足ができるかどうかは「自分がどれくらいを求めるか」「どのくらいで『足りた』と思えるか」にかかってます。まだまだ吾唯足知の境地には至ってませんが,ちょっとだけ自己満足が上手になったかな。
相変わらず表彰式では地べたに座ってライバルに拍手を送る側でしたが,これまでのようなどこか引きつった笑いではなく満面の笑みで友人たちを祝福できる自分に拍手をしてやりたい気分になりました。自分が何かの壁を一つ越えた確かな手応えがありました。
大丈夫。もう大丈夫。
自己満足大いに結構。これからはジコマンで行こう。
まだまだ自分は走っていける。
遅いけどね(笑)。